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第十二話 スキルは駄目だ、魔法で行こう

本日三話目の更新となります。

第十二話です。

 分不相応なランクになってしまった俺と、望まない高さのランクになってしまったナナ。

 正直、ナナに関しては本人が絶望しているだけで問題はないけれど、ランク3という上から三番目の立場になってしまった分不相応さは半端ない。


「よっ、期待の新星!!」

「頑張ってね!」

「いやぁ、これで上位の任務も解消されていくなー」


 初日で非常識なランクに繰り上げさせられた俺に対してギルドの冒険者共の反応は控えめに言っておかしかった。

 普通、こういうのってやっかみとかそういうのが来るはずだろ!?

 でも、ここにいるやつらの全員が、嫉妬もせずに俺という存在を無条件で受け入れてやがる……!?


「異常すぎる……!! なんでここの連中は普通に俺の存在を受け入れているんだ……!!」

「だって、ユーマは強く見えているからね……。滞った依頼も解消されるし、ギルドの人たちから見ても万々歳なんだろうね……」

「だから、それがおかしいんだろ……!!」


 冒険者になった翌日の早朝。

 朝食の後に、昨日のことを思い出した俺は、やさぐれているナナにそう訴えかける。


「俺の世界ならさ! 『おいおい、新人の癖に生意気じゃねーかよ』って感じに嫌がらせとかしてくる奴が出てくるし『本当に強いのかお前、信じられねーなぁ』的な感じに疑ってくるもんなんだよ……!! もう、人の悪意とか嫉妬とか、ドロドロしたもんに溢れているはずなんだよ!?」

「怖い世界だね……」

「この世界は優しい世界でよかったよ畜生!!」


 いや、本当なら喜ぶべきだろうけど!!

 こっちの世界にはそんな悪意とかがないと考えるべきなんだろうけど!!


「ユーマの世界ではおかしなことでも、私達の世界ではおかしくないんだよ、ははっ……」


 駄目だ、ナナは落ち込んでいるを超えて諦めている。

 お前、弱々しいアピールしたいだけで、それほどピンチに陥ってないだろ!!


「だが、幸い依頼の受注基準はランクの上限による制限だけだ……!! すなわち、俺はランク12推奨の依頼だって受けることが可能だ……!!」

「え、そうなの!?」

「いや、手帳にはしっかりと目を通しておけよ……」


 途端に元気になる彼女に呆れる。

 っと、まだ話は終わっていない。


「だが、依頼を受ける前に俺は自衛手段を見つけなければならない……!!」

「でも、そのためのスキルでしょ?」

「即死無効が自衛のなんの役に立つと……?」


 即死級の一撃を受けて死んだふりでもしておけと?

 そんな無様なことを毎度するのは絶対に嫌だ。


「ならば今度は魔法だ……!! ナナ、魔法はどうやって覚えればいい!!」

「言葉を呟くだけだよ」

「……うん?」


 意気揚々とナナに聞いてみたけれど、こう……なんか、もっと込み入った説明をしてくれると思ったら予想外の簡素な答えが返ってきたんだが。


「魔法ってどうやって覚えればいい!!」

「だから、魔法の名前を呟くだけだよ」

「……」

「ユーマ?」


 なんか、ちがう。

 俺の想像してた魔法と全然ちがう。


「お、俺はな、魔法って本とか読み漁ったりして覚えるものだと思ってたんだけどさ……初級呪文から始めてさ、いずれは最大呪文とか使いたいなぁって」

「ごめん。初級とか最大とかそんな区別はないの。そもそも人間って種族的に五つの呪文しか使えないんだ」

「……なんなんだよぉ! この世界はよぉ!!」


 いい加減にしろ異世界!!

 もっと込み入った複雑な設定にしてくれよ!!

 本当に単純な強さだけが中心な世界だなオイ!!



 気を取り直して俺は家の裏庭で魔法の練習をすることになった。

 魔法は名前を呟けば簡単に扱えるという現実を受け入れ、ポジティブにとらえることにした。

 人間が扱える魔法についても、教えてもらった。


 火の魔法 フレム


 水の魔法 アクラ


 風の魔法 フーガ


 雷の魔法 サンザ


 光の魔法 ライヤ


 随分と単純な名称とも思えるが、まあそれはどうでもいいだろう。

 ナナ曰く、誰でも扱えるという衝撃の事実を教えてもらったが、俺でも普通に扱えるかどうか不安だ。

 そもそも俺って魔力とかあるの?


「じゃあ、試してみるよ」

「ああ、やってみてくれ」


 まずはナナに手本を見せてもらう。


「火の魔法、フレム」


 彼女がそう呟くと、その手の平にソフトボール大の火球が出現する。

 本当に魔法が発動し驚いていると、彼女は手に軽く力を籠めて火球を大きくさせる。


「魔法は魔力を継ぎこめばいくらでも威力が高くなるから、ユーマが言ったみたいな最大とかないんだ」

「最初からそんな強くできるとか、RPG泣かせだな……」

「とりあえず、ユーマもやってみてよ」


 火球を握りつぶすようにかき消したナナに、ちょっと引きながら俺も掌を前に掲げる。

 ……。

 ちょ、ちょっとワクワクするな。

 ものすっごいデカい炎とか出たらどうしよう。


「火の魔法! フレム!!!!」


 最大の気合と共に魔法を唱える。

 身体からなにかが減り——ボッ、という音と共に人差し指の先に小さな火が灯される。

 まるでマッチ棒のような温かい火を前にして、痛いほどの沈黙がその場を支配する。


「……」

「……」

「ナナ、なにか、言ってくれ……」

「ほ、他のも試してみようよ!!」

「そ、そうだな! 他の魔法ならうまく使えるかもしれない!」


 人って得手不得手とかあるしな!!

 声を震わせながら俺は次々と魔法を使っていく。


 水の魔法、アクラは手汗みたいに掌が湿る。


 風の魔法、フーガは掌から涼やかな風が吹く。


 雷の魔法、サンザは指先から静電気染みた電気が走る。


 光の魔法、ライマはきらーん、と指先が蛍のように光る。


 全ての魔法を試し、その全てが全く大したことのないカスのような威力に、俺は失意のまま俯く。

 そのままとぼとぼと庭の角に寝っ転がり、そのままうずくまる。


「もう、俺駄目だわ……死のう」

「うわああああ!? 諦めないで!?」


 ナナが慌てて声をかけてくるが、もう駄目なんだ。


「もういいよ。こんな俺に構わなくて。どうせ、俺はスキルも弱くて、魔法もクズ以下のダメダメのダメ人間だ」

「お願いだから、元気出して……」

「俺って生きてていいのかな……もう、生きてる価値ないんじゃないかな、こんな俺なんて……」


 力もスキルも魔法も駄目。

 全てに打ちのめされてしまい、もうどうにもならねぇ。

 今の俺を神様が見ていたらきっと大爆笑していることだろう。

 俺が神様の立場だったら、大爆笑しているだろうから間違いない。


「生きてる価値がないとか、そんなこと言わないでよ!」

「……」

「私は、ユーマに生きてほしいと思ってるよ! だから、君を助けたいと思っているんだからっ!」

「ナナ……」


 ……そう、だよな。

 どう足掻いても俺はこの世界で生きていかなくちゃならねぇんだ……!!

 どれだけ現実に打ちのめされても、元の世界に帰るためにも歩みを止めちゃいけない。


「わ、私が養ってあげるから!」

「え、マジ? って、ふんッ!!」


 自分で自分を殴り、正気に戻る。

 頬の痛みに涙目になりながらも、俺はあたふたとする彼女に向き直る。


「は、はは、危ねぇ! 危うく駄目な方向に行くところだったぜ……!! ナナ、気持ちだけは受け取っておく、ありがとう……!!」

「あ、う、うん……」


 なぜに残念そうな顔をされたのだろうか。

 まあ、それはともかくとしてだ。


「よしッ、ナナ!」

「は、はい!?」

「依頼に行くぞォ!!」

「はい! って、え、今から!?」


 できるだけ危険がなく、安全な依頼を受けにいく!

 俺は最弱だ。

 恐らく、この世界でぶっちぎりの弱さを誇る。

 何度も心を折られても立ち上がってやる……!!



「香草収集依頼完了いたしました! 初依頼達成ですね!」

「「……」」


 覚悟していった割にはあっさりと最初の依頼をクリアしてしまった。

 だって、依頼内容が街はずれの草原で調理用の香草を集めてくるだけだったから、普通に現地に向かって摘んで帰ってくるだけだった……。


「……案外、なんとかなるもんだな……」

「うん……ドラゴン殴り倒すより楽かも……」


 俺とナナの手の中には、報酬の入ったお金。

 特になんの苦も無くできてしまった事実に、俺とナナは肩透かしを食らってしまうのであった。

 あれ? なんで俺、あんな覚悟決めてギルドに向かったんだっけ……?

 てか、魔法もスキルもいらなくね……?


魔力量も赤ちゃん以下なのである意味当然の結果でした。

かつてここまで弱い主人公がいただろうか……。


本日の更新は以上となります。

ここまで読んでくださりありがとうございました。

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― 新着の感想 ―
[一言] ごめんなさい フーガを オーガと 読み間違えました。 素でオーガと・・ 何故だろ(泣
[良い点] 赤ちゃんに遊ばれたり子供になぶり殺しされないとしなない即死無効ならなんでも即死になるようにナナがユーマを投げつければいくらでも即死無効発動して人間砲丸できるねw [一言] 面白いです がん…
[一言] 弱い魔法でもなんか良い感じの使い方をすれば・・・
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