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雲の上の存在たち



「ふいーっ、意外と小細工得意だったりする?」




がっつり魔法を防がれたことを悟った。

にやり、と笑うその表情は余裕そのもの。

まあ、正直私もあれでどうにかできるとは思ってなかったけどね。負け惜しみじゃないよ!!!




「……イル、もういいだろう。」

「イル、やりすぎだ!!」




ここで流石に、止めが入ったのだ。

まあ、そこからは簡単な治療をして貰い、アルフェ様に恨み言を言い、訓練は終了。疲れた。


しかし、最後は随分あっさりと引き下がったなー。

そんな私の疑問に、アルフェ様は苦笑いしながらその疑問に答えてくれる。




「ブレスか、本来の戦い方を引き出せた時点で、ある程度満足したんだろ?」

「本来の戦い方?」

「あいつは二刀流の使い手だ。」

「……二刀流。」



二刀流!ロマンですな。

聞いただけでちょっとテンション上がっちゃったじゃないか。



「しかも、今持ってるあのサイズの長剣二本だぞ。流石竜人の血が濃いだけはある。」

「うわー…。」




イル隊長さんの剣は一応片手剣ではあるものの、一般的片手剣より若干肉厚で、長い。たぶん本来は片手剣としても、場合によっては両手剣としても扱えるものじゃないかな。グリップの長さからしても。

それを二刀流用として使うのか……腕力凄まじいな。見た目は別にムッキムキじゃないのに。筋肉の構造や密度自体が普通の人間とは違うのだろう。


それにいくら強化魔法があるとしても、そんな常に強化魔法を発動していないと扱えない武器は普通得物として使わない。

つまり、地力が凄まじいってことか。




「あー、楽しかった!それじゃあね!えと、」

「あ、私、サラ・ゴールデンロッドっていいます。」

「サラ…サラ・ゴールデンロッドね。よし!覚えた!!!」



まったねー!と元気よく手を振って、イル隊長さんは他の団員さんの方へ去っている。あの人たちが次のターゲットだろうか。頑張ってほしい。

くたくたの私とは対照的に汗一つかいていない。凄まじい。



「あーああ。こりゃ、イルに気に入られたな。」

「……そうだな。」

「え。」

「ご愁傷様。しっかし、珍しいな。普段は騎士学校の子ばっかり見てるのに。あいつ。」

「……よっぽどラケルが珍しかったんですかねー。」

「ラケル?」

「あれ、聞いてないですか?」



なんだ、それ、と目を見開くアルフェ様。

どうやら聞いてないらしい。

……まあ、ルダ様と直接話せる訳じゃないからなぁ。

カナハさんは積極的にそういう話しなそうだし。



周りの目もあるから、かくかくしかじかと簡単にラケルについて話したところアルフェ様は少し驚いていたけど、やがてふーっとため息を吐き、私の頭を撫でる。この人頭撫でるの地味にクセだよね。



「…こりゃ、余計に…うん。」

「……まあ、そうかもな。」



ちょ、カナハさんと顔を見合わせてなんかお互い納得してる。おい、ちゃんと説明しろ。


しかしそこで、ローズ隊長さんから私達に指示が入ったので、それ以上の話をすることができなかった。

まあ、また今度聞いてみよう。




まあ、そんなことを考えていたんだけど、そのまま彼らとは会うことも無く数日が経ったというわけだ。

どのくらい雷光傭兵団が王都にいるかわからないから、流石にもう一回くらいは会っておきたいんだけど。



そんなことを考えながら、私は数冊目となった本に視線を戻す。



(あ、エクス級魔術師の記録だ。読みたい。)



と、そこで目に入った文字に私は一瞬で興味を惹かれる。


エクス級魔術師とは、その時代でも突出した力や功績を持った魔術師に与えられた称号である。

しかも、ただのトップの称号じゃない。

その中でも更にヤバいレベルの魔術師に与えられる称号。


まあ、基本ウィチードの制度だから、今はないけどね。




(シャウル・エクス・ティトゥーン。ほう。)



1100年ごろだから、ウィチードも末期に近い頃か。



詳しく記録を見てみると、彼の前半生については不明なため、少なくとも貴族や名門の出身というわけではなかったようだ。

並外れた魔法力で、魔道王国ウィチードの宮廷魔術師団長にまで上り詰めた……てすごくないか?

王国末期だから、多少の混乱はあっただろうけど、それにしても凄い。


しかもこの人、90歳くらいまで元気だったとのこと。

肉体を魔力で活性化させてたのかな?いや、でも老いとかを遅らせる強化魔法なんてあるのか?うーん、分からん。

でも、そんな晩年も晩年の時期にも戦場で大暴れしてたらしいし……でも、記録では人間だったと。



……いやー、国のトップ魔術師になる人は理解不能だわ。




私はそう結論付けて、本をそっと閉じた。

まだまだ、世の中には知らないことがいっぱいあるなぁ。



白々しく、そんな風につぶやくのだった。



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