まだまだまーだ、まーだまだ。
「それよりサラ、その闇の精霊は?」
(あ、そうだった。)
闇の精霊さんこと、ラケルについて話すつもりだったんだ。
脱線してしまうところだったよ。ごめんなさい、ルダ様。
アルフェ様を宥めるために始めたインリス騎士団の話がいつの間にか発展して他の三人は盛り上がっているみたいだし、私はルダ様との話に集中しよう。
(えと、今は…ちょろちょろしてるんで……どこ行ったんだろう。)
そうなんだよね…。
ラケルって、ちっともじっとしていないんだよ。
本人(?)もずっと森の中にいたから!!と語っていたけれど、街中で見るものすべてが珍しく、面白いらしい。
お上りさんか。
(そろそろ飽きて戻ってくる頃だと思うんだけど。)
「あ、近づいてくる。闇の気配。」
と、ちょうどそのタイミングでラケルも戻ってきたっぽい。良かった。
「ふー、いたいた、サラ……あー、ルダ様。」
「あら、あなたは……。」
「ふふ、『ラケル』です。」
どことなくドヤ顔でラケルがそう名乗る。
ちょっと照れ臭いじゃないのよ。
「『ラケル』ね。……サラ、貴女が付けたの?」
「あ、はい。」
「そう……いい名前ね。」
ルダ様が小さく、『懐かしい』とつぶやいたのを私は聞き逃さなかった。
かつての相棒……カナハさんのご先祖さんを思い出しているのだろうか。
(ということは、名前がある精霊さんはやっぱり珍しいんですか?)
「そりゃそうよ。少し力があるくらいならともかく、ここまで『個』のある精霊はそうそう現れないわ。」
やっぱりそうなのか。
予想していたとはいえ、こうやって精霊さん自身からそう断言されると、やっぱり私なんかが名前を付けてよかったんだろうか、という思いが浮かんでくる。
「いいと思うわよ。この子も喜んでるし。」
!!!なぜバレたんだろう。私ってそんなに表情に出やすいのだろうか。
「名付けてもらうって、嬉しい事なのよ。」
あ、またルダ様のこの表情。
以前も見たことがあるけど…カナハさんを見る時に似てるけど、ちょっと違う。
何処で見たんだろう。
それからしばらく考えていたけれど、私にはピンとくる答えを導き出すことはできなかった。
……我ながら、ポンコツである。
「あ、そうだそうだ。サラちゃんにも言っておこうと思ってたんだ。」
と、そこで唐突にアルフェ様から声をかけられ、私は振り向く。
「はい?」
「来週の訓練、俺達も参加するからよろしくね。」
「そうなんですか?あ、だから昨日……。」
「そゆこと。」
成程。だから騎士団と打ち合わせてたのか。
「第一騎士団の魔法部隊は強いからねー。俺達も気を引き締めないと。」
「ああ、あの豪快な隊長さんとこねー。」
……どうやら、ローズ隊長は有名みたいだ。豪快さで。
「あの人も、キュミラスさんと同じタイプだよな。肉弾戦もいける系。」
「あの人の隊じゃなかったっけ?昔、進軍中に敵の奇襲で側面突かれて……って場面で、前衛が来るまで肉体強化魔法と地力で持ちこたえるどころか押し返したの。」
「あら、よく知ってるねぇー。そうそう。ローズ隊長さんの隊だよ。」
すげえ!!
でも、あの隊長さんの実際の姿を見たら、なんか納得できる。
だって、いつ見ても肉体をぴっちりと無駄なく魔力が覆っているから。
あれ、普段から気を抜いていない証拠だよね。
「凄い人から指導受けられるんですね私達……がんばらないと。」
「お、やる気だね、サラちゃん。」
「そうよー。その意気だよー。」
「……無理はするなよ。」
「ふふ、カナハの言うことも一理あるけど、まあ、やる気があるのはいい事じゃない。」
皆口々に激励の言葉をかけてくれた。おお、ますます頑張らないと!!!
「うっ……。」
「し、しんどっ……。」
はい、甘かった。
「5分休んだら、次の訓練だ。魔力切れに注意しろ。魔力回復薬はあるが、それは最終手段だ。」
「「はい。」」
いくら疲れていても、返事はきっちり返す。
満足そうに微笑んだローズ隊長は、私達から離れ、次のグループに向かって行く。
合同での訓練当日。
私は、ローズ隊長を始めとした強者たちにがっつりしごかれていた。
「大丈夫?」
(まあ、何とか。)
ルダ様が心配そうに私の顔を覗き込んでいる。
ルダ様……見た目の美しさも相まって、まさに天使である。
「なっさけなーい!」
(くぉら、ラケル。)
「だってー、無駄な事ばっかりしてるんだもん。だから疲れるんだよー。」
(ぐっ……。)
ルダ様が苦笑いしてる……うーむ、魔力の制御はそりゃ、昔から比べれば上手になった……と思う。
だって、失敗すると、近くて精霊さん達がボロクソ言ってくるんだもん!!まあ、ストレートに言われる分、影口よりはいいけどさぁ…。
それでも、魔力の扱いのプロである精霊さんから見るとまだまだまーだ、らしい。
まあ、私も魔力の扱いに慣れれば慣れる程、分かってきた。キュミラスさんの魔力の使い方上手すぎ。
キャリアが違うと言えばそれまでなのかもしれないけど、こっちが慣れれば慣れる程、向こうの技術の高さに気が付いて追いつける気がしないという悪循環。
「サラ、時間だよ。」
「あ、うん。」
同じグループのマリーシャちゃんに声をかけられ、私は重い腰を上げる。




