竜の血は恐ろしい
ブクマ、評価、心より感謝いたします!!
「はあ、はあ……サラ、大丈夫?」
「あんまり、大丈夫じゃないかも……マリーシャちゃんは?」
「私もしんどい…。」
数分後、二回目の鍛錬でも散々にしごかれ、息も絶え絶えといった様子で私たちはその場にへたり込んでいた。
そこそこ基礎体力はあると思ってたんだけど、流石は本職。レベルの差をはっきりと見せつけられた状態だ。
ちなみにこのマリーシャちゃんは、以前一回合同練習で一緒になったことがある子です。クラスは別だったけどね。
小柄だけど、その分小回りが利き、手先が器用な子である。
それで魔力も高いってんだから…、引き出しが多くてうらやましい。
「お前ら、のんびり休んでる暇があるなら、他の奴らの動きをちゃんと見ろ!!」
「「は、はい!!」」
ローズ隊長から檄が飛ぶ。まあ、でも、ごもっともですな。
壁に寄りかかっていた重い体をのろのろと起こし、私は訓練場へと目を向ける。
「うわー、雷光って、やっぱり派手だねー。」
「あ、あの人、かっこよくない?」
「うん。隣の人もイイ感じ。」
と、そこで突然一緒にいた他の女子たちが色めき立つのがわかる。
見なくてもわかります。アルフェ様を始めとした、雷光傭兵団の皆さまですね。はいはい。
他にもイケメンいたからなぁ…カナハさんだって、表情の無さを考慮しなけりゃクッソイケメンの部類に入るし。
女子はイケメンに弱い…。イケメン無罪。
そして、雷光傭兵団は、綺麗な女性団員もちらほらいる。男性にとっても目の保養になる傭兵団です。
その中でも1人、まーた目立つ人がいるなぁ。
背が高く、すらっとした赤い髪の女性。
全体的に目立つ容姿をしている彼女の一番目を惹くところは、何と言っても右の額から突き出た大きな角だ。
シカみたいに枝分かれした物ではなく、ヤギとか?のとんがってるヤツ。例えが悪いけど、悪魔の角とかによくあるアレです。
しかし、立ち振る舞いからして、一般兵じゃないな。
そしてそれはすぐに確信に変わる。動きが違うのだ。
「う、あ!」
「げ、おまえ、ちょっとそれは…。」
「アホか!!!!」
部下らしい男性が目に見えたミスをした瞬間、突如、目を見開きそう怒鳴る女性の口からは……ブレス。
勿論、単なる息っていう訳じゃない。
魔力を纏った、炎の息だ。
あれ、もしかして以前…司書のお姉さんかな?が言ってた、竜の末裔がたまに持つという、(うっかり)ブレスの持ち主!?
「イル隊長!ブレスはやめてー!」
「うるさい!魔物も敵兵も待ってくれないんだぞ!こんなことでうろたえるな!!」
「そんな無茶苦茶なぁ~~!!」
……理不尽というか、スパルタというか。
「おーおー、やってるなぁ。」
呆然とする私達のところに、突然、アルフェ様が近づいてくる。
勿論他の女子達の目つきが変わる。正直怖いです。
「興奮すると、ブレスがでるんだ、彼女。」
「もしかして竜の血ですか?」
「よく知ってるね。彼女、ルーツが自分でもわけわからないらしくってさ。どうやらいろんな血が混じってるみたいだね。」
「へえー。」
まあ、十分な実力がありながら、騎士団じゃなくて傭兵団にいるということは、いろんな事情があってもおかしくない。
「アルフェ!無駄話するな!」
「へいへーい。」
アルフェ様にも臆することなく、自分の意見をはっきり言うイル隊長さん。強い。
階級自体はどっちが上なんだろう。
と、そんなことを考えてるうちに、その彼女の視線が、すーーっ、と動く。……横にいる私に。
「ん?あんた……面白い魔力の流れしてるね。」
「え、そ、そうです……か?」
「あはは、サラちゃん、がんばれー。」
イル隊長さんに話しかけられた瞬間、乾いた笑いを浮かべたアルフェ様が私の横からすーっといなくなる。
突然のことに戸惑ってると、イル隊長さんが指先で私をちょいちょい、と手招きする。
その瞬間理解する。
……この野郎!私を売りやがった!!
「うん。ちょっとこっちこい!!打ち込み稽古だ!!」
えええっ!何の前触れもない!!
周りの団員さんがアセアセしてるけど、隊長さんはお構いなし。わが道を行くタイプだな、こりゃ。
「ほら、構えな!!ボサっとするな!!」
「サラ、左!!」
「え、うわ、」
「ほう、これくらいなら避けるね!!」
あぶねええええ!!いきなり剣を振り下ろしてきたよ!この人!!訓練用の刃の無い剣でも当たれば痛い!普通に怪我する!!!
つか、初めてラケルが役に立った気がする。まさか避ける方向を指示されるとは。私にも魔力の流れは見えるけど、精霊さんはもっとはっきり視認できるのだろう。指示が早い。
「あいつらが気にするだけあるね。私の魔力の流れ見たのか?」
「一応は…。」
「ははっ!!君も面白い魔力持ってるもんね!……ただ、気になるのがさぁ……あの、左肩のあたりかな、なんかあった?闇の魔力があるように感じるんだけど。」
左肩のあたりといえば、ラケルがしがみついてる場所だ。
うわー、ということは、見た目と違ってこの人魔力の感応性が高いのかも。
そう考えると、いろんな種族の血が混じっているのは結構なアドバンテージなのかもしれない。
「面白くなってきたな!ほら、次いくぞ!!」
「う……うっ………。はいいいいぃぃぃ!!」
畳みかけるように言われればもう拒否のしようがない。
私は涙目になりながら剣を構え、意識を集中させるのだった。
そして10分後。
「……イル、もういいだろう。」
「イル、やりすぎだ!!」
「サラちゃん、大丈夫?」
「ごめん!つい楽しくて!!」
体のあちこちに打ち身を作った私はやっと隊長さんから解放されたのだった。
私を売り渡した男…アルフェ様ともう一人の団員さんが私に手当てをしてくれる。
「悪かったね。ああなると彼女、止まらないから。」
「はは、竜族の血が強いと、戦闘狂というか……そういう性質になりやすいっていう説があってね……。まあ、おつかれ。」
「……アルフェ様、私の事見捨てましたね。」
「え!!!?あ、あはは…。」
「恨んでやる、恨んでやる…。」
ひきつった笑いを浮かべるアルフェ様を恨みのこもった目で睨みつけてしまう。
でもこのくらいは許されると思うんだ。




