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雷光傭兵団の人々



「あー、シャルロッテだ!ねぇ、ちょっとちょっと!」

「あ、ラディエル。」


二人の言葉に、うんうん唸りながら考えていた私だったが、突然聞こえたシャルロッテを呼ぶでっかい声で思考が中断させられる。

興奮した様子のその声の方角を振り向けば、短い黒髪の女の子が、ブンブン手を振っている。あ、なんか声のイメージ通り。元気そう。


「どーしたの?」

「あっちに雷光傭兵団が来てるって!!」


はしゃいだ様子のラディエルさん?を少しなだめた後、シャルロッテは申し訳なさそうに私たちの方に戻ってきた。


「ごめん。あっちに友達の好きな傭兵団が来てるらしくってさ。」

「雷光傭兵団って言ってたよな。あの…。」

「そ。エディウス団長だっけ?あそこ。流石にディアンは詳しいか。」

「騎士学校の連中なら皆知ってるよ。」

「へー、有名な傭兵団なんだ?」


皆詳しいな。全然知らん。というか、傭兵団という存在自体に今も昔もなじみがない。


「有名も有名。他の傭兵団とはレベルが違うし、最近はクルーヴがずっと雇ってるから、第四騎士団なんて言われたりするね。」

「へー。」

「なんだよ、サラ全然知らねえのかよ!」


ディアンに信じられない物を見る目で見られた。ほっとけ。


「解説ぷりーず。」

「まったく…信じられねぇ。普通知ってるだろ。団長はミラン公国で、最強の騎士って有名だったんだし。」

「…ミラン公国って、20年位前の戦争で滅びたとこ?」


20年程前。私たちが生まれる前の事。


この大陸だけでなく、隣の大陸や島国も巻き込んだ大きな戦争があった。

その時、リレグラ王国とインリス王国の間辺りにあった小さな国がミラン公国だ。


「そ。国境付近でリレグラと戦って、勝って、帰ろうと思ったら、国自体が無くなってたっていう。」

「せ、切ねぇ。」


ガッカリ感で現わせる範囲超えてるよ!!

戦って勝って戻ってきたら国の方がありませんでした♪なんて…。


「そのまま追撃するリレグラを蹴散らして、隣の大陸…クルーヴ領まで逃げてきたらしい。そこで連れていた兵やミラン公国の敗残兵を集めて傭兵団を結成した、と。

噂だと、クルーヴの援助もあったんだと。だから傭兵とは言えど、うちとの関係が深いらしいぞ。」

「へー。」

「……正直、雷光傭兵団だったら、俺も見たいな。」

「あ、ディアン君。だよねー。見たいよねー。」


ラディエルさんがこちらに気づいたようで、そう声をかけてくる。

しかし、シャルロッテのお友達なら魔術学校の方だろうに…そんな騎士団寄りの傭兵団、よく知ってたな。


困惑気味の私の表情に気づいたのか、シャルロッテが苦笑いで教えてくれる。


「この子が興味あるのは傭兵団そのものっていうか。」

「…アレか。」


あ、ディアンも何か気づいた様子。流石双子。

そして、ラディエルさんが目を輝かせながら教えてくれた。


「団員の人に超イケメンがいるの!」



…。



「おおう…。」


変な声しか出なかったよ。

まさかのイケメン団員さん目当てか。


まあ、イケメンで強いとかだったら確かに人目を引くよなぁ。


1人で納得していると、周りの人達からわっと歓声が上がる。


「あ、来た来た!」


通りの方に駆け寄っていくラディエルさん。周囲の人たちも珍しそうに通りの向こうを眺めている。

なんか、前もこんな光景観たな。


「ほぉ。」

「おっさんみたい。サラ。」


シャルロッテからツッコミが入るがしょうがないじゃん。ていうか、おっさんみたいって言われることが多い気がする。


でもさ、なんか私の思ってる傭兵団と印象違ったんだもん。

傭兵団って、荒くれものの集まりのようなイメージを勝手に持ってたんだけど、全然違った。

確かに騎士団みたいって言われるはずだわ。



先頭を馬に乗って進むのが団長さんだろう。


渋い。

この人も渋い。年齢は50歳前後かな。

で、強そうなのもわかる。

魔力を体に均一に纏わせてるところを見ると、こんな風に進んでいる間でも気を抜いていないということなんだろう。


そして団員さんも目を引く感じだ。

ゴッツゴツのいかにも強そうな人から、そこら辺の冒険者のあんちゃん風の人まで。そして。


「あああ、あの人ぉ!」


ラディエルさんの声がワントーン上がる。女子だな。


「あの、金髪の巻き毛の人…いいえ、お方!」


声はでかいが、周囲もざわついてるから、たぶん相手には聞こえていないのが幸いだ。ていくか、他にも女の子がきゃーきゃー言ってるから、ここで多少騒いだところで別に目立たないんじゃないかと思う。

先ほどより傭兵団が近づいてるから、はっきり見えてきた。


ああ、あの人か。

確かに目を引くイケメンだ。


長めの金髪の巻き毛を、ゆるく結わえていて、服装もおしゃれ。体はさすがに鍛えているんだろうけど、ガチムチにはならずにスマートな印象だ。


色っぽい感じの緑色の目は、クッソ長い(うらやましい…。)まつ毛に縁どられ、口元には余裕そうな笑みを浮かべている。


一言でいうと、うん、チャラい。

自分が超イケメンなことを自覚している。確実に。

そうか、ラディエルさんは、ああいうタイプが好みなんですね。少女漫画の王子様系。



だけど、私は正直その人じゃなくて、その人の少し後ろにいる人に最初に目が言った。



背はそのチャラいイケメンさん(失礼だ)より高い。そしてゴツい。鎧もごつい。

顔はイケメン……なんだろうけど、表情がない。金色の目で、目つきも鋭い。そのためちょっと怖そうに見える。

若いんだろうけど、硬そうなオレンジ色の髪をオールバック風に流していてるから、落ち着いた雰囲気も相まって若者感が薄い。


あ、言っておきますが、イケメンだから目が行ったわけじゃないですよ。違うのですよ。


なんか、その人から感じる気配が不思議だったんです。

とはいえ、不快な感じではなくて、なんか、なじみのあるような。


知り合いに似てるかな?と両親、地元の人、更に今では遠くなってしまった前世の人たちを思い出してみるけれど、誰もピンとこない。


なんでだろう?

前、先生もキュミラスさんも直感は大事!と言っていたから何かしらありそうなんだけど。

だめだ、わからん。

いくら直感が働いても、その正体がわからなければただの違和感だ。これ。


「サラ、どーしたの?」

「ん、君も気になる人がいたのかな?はっ、まさか私のアルフェ様を…!」

「??」

「ラディエル、落ち着きなさい。」


シャルロッテにたしなめられて、ラディエルさんが若干落ち着きを取り戻す。


「え、アルフェ様じゃなかったら……誰?」

「ん、サラ、お前…。」

「いや、そういうんじゃないってば。ただ、あのオレンジ色の髪の人から不思議な気配がするだけ。」

「オレンジ色の?ああ、カナハ隊長か。」

「有名人?」

「ああ。アルフェ隊長とともに、雷光傭兵団の中でもエース級の活躍をしてるって人だ。」


マジか。


「まだ若いよね?」

「だろ?流石に年は知らないけど、まだ二十歳ちょいくらいだろ?エルフとかだったらわかんねえけど。」


エルフは代表的な長命種だ。

流石に永遠の命とまではいかないようだけど、純血のエルフだと1000歳とかいくらしい。あとは獣人の一部にも長命種族がいるらしいけどそっちは稀だ。

それ以前に、混血が進みすぎて、寿命と言う概念が非常にあいまいなのだ。この世界では。


「カナハ隊長さんもかっこいいよね。でも私はやっぱりアルフェ様派!」

「まったく、ラディエルは。あんたセクヤ団長はどうしたの。」

「セクヤ団長もかっこいいけど、また別なの!」


あ、ちなみにセクヤ団長というのは、我が国の第一騎士団の団長さんです。まだ生で見たことはないけど、噂によると派手なイケメンらしいです。


「ああ、行っちゃった。」

「城の方に行ったってことは、騎士団と合同でなんかやるのかな?」

「かもねー。」

「…戦争かな?」

「うーん。」


休戦中とはいえ、リレグラとはまだ決着はついていない。いつ本格的な戦が始まるかはわからないのだ。


「気になるぅ!ねえ、シャルロッテ、ちょっと付き合って?」

「えー。」

「お願い!後でなんかおごるからぁ!」

「じゃあ、クレリア屋のブラックベリーケーキ。」

「おっけー。ごめん、シャルロッテ借りてくねー!じゃあ行こう。」


そう言って、ラディエルさんはシャルロッテを連れて傭兵団の後を追いかけて行ってしまった。嵐のようだったな。


「凄いねー。うわ、他にも追っかけてる女の子がいる…。」

「女って…。」


ディアンが若干引いている。まあ、アイドルの追っかけみたいなもんかな。


「まあ、買うものは決まってるから、お店行こうか。」

「…そうだな。」


気を取り直して、私たちは目的のお店に向かうことにしたのだった。


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