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我々を導くもの



さて、クラスの(主に女子)団結が強まってから3日ほど経ったころ。


「サラー、キュミラスが呼んでたよー。」


キュミラスさんから呼び出しを喰らいました。





「ええええ、私、なんか…したっけ?」


最近あった出来事なんて、それこそルゥナちゃんがらみの事しか思い浮かばない。

しかもあれはクラスの皆で平和的に解決した事件だから、それこそ宮廷魔術師であるキュミラスさんには何も関係ない。

ものすっごく強いて挙げれば、ルゥナちゃんが宮廷魔術師目指してるってことくらいか?でも私、キュミラスさんにそんなこと頼んでないぞ。その気もないし。



「あのねー、すっごくサラの事心配してたよー。」

「は?なんで?」

「よくわかんなーい。」


ヤバい。なおさら思い浮かばない。


しかし、宮廷魔術師団長であり、ある意味弱みを握られているともいえるキュミラスさんの呼び出しを無視するわけにはいかない。


図書館にいるとのことらしいので、私は放課後こっそり図書室の一角に向かうのだった。ビクビクしながら。







「ふぅ、精霊どもがお前の魔力が乱れてると騒ぐから、何事かと思っていたぞ。」



会って話してみると、なんてことはなかった。

つまり、精霊さんたちが私の魔力がぐるぐるしてるよー!とキュミラスさんに伝えたため、まさか暴走!と考えたキュミラスさんが私を呼び出した、ということだ。



しかし…精霊さん達…。まーた、そういう相手が焦るような発言を。

キュミラスさんも驚くだろう。なんたって一定以上の魔力を持つ者の暴走≠魔人化だ。

しかも、自分で言うのもなんだけど、精霊さんとの距離が他の人間より近い私である。そりゃ心配もしますって。



「ご迷惑をおかけしました。」

「いや、迷惑などではないが…。一体何をそんなに悩んでいたのだ?」


と、そこで悩みがあれば聞くぞ、とご提案されてしまった。はて、どうしたものか。キュミラスさんに相談してみるべきか。


実は、あれから色々自分のやりたいこと、将来の事について考えてはみたものの、あまりに悶々と考えすぎて逆に答えがわからなくなってしまったのだ。

そのせいで、自分でも気づかないうちに魔力の乱れが生じていたのだろう。それこそ精霊さん達に心配されるレベルまで。


それにこういう時は、色々な人の話を聞いてみるのも確かにアリだ。一人でキリキリと思い詰めて考えても、浮かぶアイデアには限界があると思うから。



「ん?私が宮廷魔術師団に入った理由か?」

「はい。差し支えなければ、お伺いしてもよろしいですか?」



宮廷魔術師団長様に、私ごときの将来について相談するなんて図々しいにも程があるんだが、また悶々として魔力が乱れてしまえば、同じことの繰り返しだ。

それに、エリート中のエリートであるキュミラスさんがどうやって今の地位に上りつめたのかは普通に気になる。

あ、でも聞いてから気づいたけど、もしかしたら色々人には言えない……いやいや、キュミラスさんの性格を考えればそれはないだろう。一瞬でもそんな考えを持った自分が恥ずかしい。



「そうだな…私の場合は、家の為と言うのが一番の理由だろうか。」

「おうちの?」

「ああ。一応私の実家も貴族なのだが…。」


げ、やっぱり国のトップの方になると貴族出身なんだな。

大体そんな気はしていたけど、改めて言われると、本当に私なんかが関わっていい人なのか正直不安になる。


「そうあからさまに身構えるな。貴族は貴族でも下級貴族もいいところだぞ。私が子供のころなど、本当に貧しくてな…。近くの平民の家の方がよほどいい暮らしをしていた。」


キュミラスさん曰く貴族の家系ではあるものの、数代にわたりパっとしない家だったらしい。しかも、運も悪かったのか周辺諸国との戦で死者が相次いだりして、一言で言えば没落していたらしい。


「そのような家だったからな。私はとにかく身を立てたかったのだ。魔力の量は少なくもないが並外れて多くもない私だったが、精霊を他の者より身近に感じられたのは本当にありがたかった。」

「そんなにお得なんですか?精霊を見ることができるというのは。」

「当然だ。魔力の運用率が全く違うのだぞ。」


お前は一体何を言っているんだくらいの勢いで言い返された。すいません。宝の持ち腐れで…。


「まあ、その話はまた今度だな。先ほども話したが、私の家はそんな状態だったから、上級貴族と違い家庭教師を雇う余裕などない。お前達と同じように王都の魔術学校へ入学した。」


そういえば、ディアンとメイギス先輩と第三騎士団長さんの話をしてた時にそんな話が出たな。なるほど、流石に貴族といっても、みんながみんな家庭教師を雇えるほど裕福ということはないようだ。


「だが、私にとってはそれが逆に幸運だったのだ。子供の頃、精霊が他の人間には見えないというのを理解していなかった私は、周囲との認識の違いに苦しんでいた。そんな時、たまたま学校にに私達と同じように精霊の見える魔術師がやってきたのだ。」

「!」

「本当に運がよかった。彼は当時すでに一線を退く年齢だったのだが、だからこそこの国からの特別講師のお話を受けて、短期間ではあったが王都の学校に滞在してくださったのだ。」

『ガラドゥールだよー。懐かしー。』


昔を懐かしむキュミラスさんの声に、のーてんきな精霊さんの声が重なる。

と言うことは、結構な御年だったってことか。後進の育成ってやつだね。


「ガラドゥール様。キュミラスさんのお師匠さんってことですか?」

「まあ、そうなるな。王都を離れられた後も、精霊や念話を通してご指導いただいていた。それこそ精霊との付き合い方から、魔力の操作法から…多岐にわたって。」


うわ、普通にお師匠さんだ。

そして私の頭の中で勝手に髭の長いローブ着たおじいさん像でイメージされた。ベタだな。


「ガラドゥール老師は、若い頃は有名な冒険者でな。その後も特定の国に属さずに活動してこられたのだ。だからお会いできたのは本当に運がよかった。

あの出会いがなければ、私はこの地位に就けていなかったかもしれない。それほど精霊と言うのは我々と近いようで遠い。一朝一夕で理解できるようなものではないのだ。」

「あー。」


うん。なんかわかる。

確かに、私たちは精霊さん達とコミュニケーションがとれる。

だけど毎度のことながら、精霊さん達は私達と感覚が絶妙にずれてるため、肝心なところで躓くことが多いのだ。

会話はできる。けど、理解しあえるとは限らない。ということだな。


「そのガラドゥール老師もすでに25年程前にお亡くなりになった。それからお前に会うまで、私は他にこの能力を持った者が現れたと聞いたことがない。」

「25年も…。」

「それほど稀な能力なのだ。だが、気をつけろ。ガラドゥール老師もご自分の力について明かしたのは、本当に信頼できる仲間数人のみだとおっしゃっていた。私自身も陛下と、妻、そして子供たちにしか本当のところは明かしていない。」

「はい。」

「誰にも明かすなとは言わん。明かした方がいいこともあるだろう。しかし、相手は慎重に選べ。」


はっきりは言わないけれど、身の危険、厄介事、その他諸々の事を考えると、公にするとメリットより、デメリットの方が大きいということか。

きっと、そのガラドゥール様も先人から同じように言われたんだろうな。


将来の夢も目標もまだ未定な私だけど、一応昔から最終的にこうしたいっていうのはある。


穏やかに長生きしたい。

そのためには、危険はなるべく回避しないと。

ということは、周りに言うのは今の時点ではナシだな。周囲の人たちを信用していないわけじゃないけど、どこでどう漏れるかもわからないし、だいいち、自分の身も満足に守れない今の私では、万が一何か厄介事に巻き込まれてもそれを解決することもできない。

いつでもどこでもキュミラスさんを頼るわけにもいかないし。



一番安心なのはキュミラスさんの近くかもしれないけど、それだってずっとというわけにはいかないんだし、そんなに頼ってばかりもいられない。

それ以前に私の平平凡凡な成績で宮廷魔術師団に入れるのか?まあ、これから精霊さんからガチ指導受ければ、多少の道は開けるかもしれないけど。


そして安全云々を考えると、冒険者は無しかな?

でも、研究者とか…私にできるのかな?


「おい、また魔力が巻いてるぞ。」

「(巻く…。)すいません。」

「まあ、あまり考えすぎるな。」


そう肩を叩いてくるキュミラスさんに私は力ない笑顔を返すしかできなかった。




まだまだ、将来の具体的な目標は定まりそうに無い。

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