西の子供たち
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強化された体は重そうな車を簡単そうに引っ張っていく。
しかし、いくら引く人が上手でも町から離れるほど道路の状態は悪くなっていく。ガタガタまで行かなくても衝撃はそれなりにあるのだ。
「お尻痛い……。」
「ソーンはなんでそんな平然としてるの?」
皆がブチブチ言う中、一人涼しい顔をするソーン少年。
疑問に思ったマルガレーテちゃんが訪ねれば、彼は表情を変えぬまま、あっさりと答えを教えてくれる。
「お尻に強化魔法掛けた。」
「!おまえ、強化魔法を尻に!?」
「お、いい判断だな!」
「道路の状態を見て強度を変えるといい。揺れの激しいところとあまり揺れないところとで同じ強度の魔法をかけていては魔力の無駄だ。」
ちらり、と振り返りながら車夫さんがアドバイスをしてくれる。私たちは驚いたが、判断としては合っているらしい。
ちなみに、彼らは筋力増強、体力増加の魔法の他に、足の裏に保護魔法をかけているとのこと。ああ、そういえば裸足っすね。
ちなみにソーンは私と同じく魔術学校に行く子だ。
黒目黒髪の東洋人っぽい男の子だけど、イマイチ何考えてるかわからない。
無表情っていうか、天然ぽいっていうか。同じクラスになったこともあったけど、走り回って遊ぶより謎の本を教室の隅で黙々と読んでいるようなタイプだ。
さて、そろそろ日が傾きかけてきたころ、先生が宿はもうすぐだと声をかけてくれる。
今日はそこで一泊して明日の早朝に出発すれば、昼過ぎには王都へ着くはず…とのこと。はずってなんだ、はずって。
「お、西の連中もいるな。」
そう言って先生が眺める方向には、私達と同じくらいの子供が20人くらいわちゃわちゃしている。
時期的にも年齢的にも同じく王都の学校に向かう子達だろう。
もしかしたら同じ学校、同じクラスになる子もいるかもしれないな。さて、どんな子達だろう。
私がソワソワ様子をうかがっている間に、先生はあちらの引率の先生に挨拶をしに向かって行った。
「どうも。」
「あら、東も今日の出発だったんですね。」
向こうの引率の先生は、長身で細身の女性の先生だった。30歳くらいかな?
ストレートの水色の髪は腰まで伸びている。しかし、先生の特徴的な部分は他にあった。
ゴーグルと仮面の中間みたいな魔道具が顔の上半分を覆っているのだ。
視力を補うのか、はたまた強化するのか。私たちの町では見たことない魔道具だ。
初めて見る魔道具に、私だけでなく、他の子も興味津々のようだ。じーっと見ている。
ある意味不躾な私たちの視線に気づいたのか、先生たちはお互いの生徒を集めると、自己紹介をしてくれた。
「東ラクラエンの教師をしている、グイン・ハーレイアだ。剣術を教えている。」
「西ラクラエンのミリア・ティンプルトンです。魔法と剣の融合術を教えています。」
そこでミリア先生は言葉を切ると、私達東ラクラエンの生徒たちににっこりと笑いかける。あ、今更ですが、私たちの学校があった地方をラクラエン地方と呼ぶのですよ。私たちの町は東側にあるので東ラクラエンです。そのまんまですね。
「ふふ、この魔道具は視力を補ってくれるものです。これがあれば自分の目以上によくものが見えるんですよ。」
曰く、ミリア先生はかつて冒険者をやっていたが、ある戦闘で視力を失った。運悪く治癒魔法や薬が底をついていたため、目を治すことができず仕方なく魔道具を装着したところ、思った以上に便利だったため、もう目治さなくてもイイや♪となったらしい。
(そーいうもんなの!?)
「怪我した後、時間が経っちゃうと治すのに人間の力だとすっごく大変だってキュミラスが言ってたよー。」
「何日もお祈りするんだって!」
びっくりする私に精霊補足が入る。
まあ、何日もお祈りするとしたら、コストも手間も物凄いわな。あんな高そうな魔道具より値が張るってことだよね。
逆に言えば、怪我した直後ならそれなりにどうにかなるってことか。前世でも切断した後、時間が経ってない方が接合しやすいって聞いたことがある…気がする。
「魔術学校も騎士学校も、教会以外で回復魔法を教えてくれる数少ない教育機関です。しっかり学ぶんですよ。」
話を聞いてからだと、ミリア先生が言う言葉には余計に説得力がある。
向こうの生徒は知っていたのかもしれないけど、それでも真剣な顔でうなづいている。
「お待たせしました、どうぞ!!」
と、その時ちょうど宿のおじさんが声をかけてきたため、その辺で話はおしまいになり私たちはぞろぞろと歩き出した。
「いやー、もうこんな時期になりましたか。一年なんてあっていう間ですねぇ。」
「ほんと、早いものです。」
先生たちはおじさんと世間話をしながら、宿の内部へ向かっていく。
口ぶりからすると、この宿を使うのは毎年のことのようだ。
「東ラクラエンが13名、西ラクラエンが18人ですか……今年は少し少なめですかな?」
「そうですね。子供たちの人数自体は例年とそう変わらないのですがね…確かにいつもより若干少なめでしょうか。」
ほう、どうやら今年は王都に行く子は少ないようだ。
でも、そう気にしている様子はないから、たまたま不作だったとうだけなのだろう。
その後、つつがなく夕食を終え、私たちは指示された部屋にそれぞれ向かうこととなる。
私の部屋はマルガレーテちゃんと、ティナちゃんというエルフっぽい子だ。
一応魔術学校組は魔術学校組で固めるらしい。まあ、一緒に授業することも多いとはいえ、一応基本はそれぞれの学校毎に学ぶわけだしね。
「思ったよりきれいな部屋だね。」
「うん。よかった。」
ベッドの寝心地はまあまあだ。
ふかふかで気持ちいいとは言わないが、正直思ったよりマシである。まあ、冒険者の人たちも使うらしいから、それなりの品質じゃないといろいろ大変なのかもね。ご飯も普通に美味しかった。
「でも、王都って遠いんだね。私、行ったことないからちょっと心配。」
「あー、私もないわー。ティナちゃんは?」
「…二回くらい行った。」
「そうなの!?どうだった?」
「…別に、人が多いな、と思った。」
ティナちゃんは名前と顔は知っていたけど、クラスはずっと違ったため話すのは今回が初めてだ。耳のとがったエルフ!!ていう感じの女の子。クールビューティーって感じかな?
そんなにおしゃべりな方じゃないみたいだけど、話しかければちゃんと答えてくれるから安心した。
さて、明日の午後にはついに王都だ。
地元から出るのは嫌だ嫌だと思ってはいても、少し違う町に興味があるのもまた事実である。
まあ、王都で学んだとしても、別に卒業後王都に拘束されるわけじゃないんだ。それから地元に戻ればいいだけの話である。
そう前向きに考えながら、私はお布団をぐいっと引っ張り、眠りについた。




