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平穏を望む俺は変態でもMでもないはずなのに、今日から変態たちに振り回される!?  作者: 犬好茶々
第一話 かわいいかわいい××ストーカー事件

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9/25

4-1

 有栖川伊織による『かわいいかわい弟ストーカー事件』の概要は、次のとおりだった。


 一、有栖川のかわいいかわいい弟(翔琉くん)が憔悴した様子で帰宅した日があった。

 二、そのときに着用していた衣服には汚れや乱れが散見された。

 三、その日を境に、私(有栖川)に甘えてくることが減ってきたように感じられる。

 四、お姉ちゃん(有栖川)の同年代の女の子はなにをプレゼントされると喜ぶのか訊かれる。

 五、いままでは行えていたスキンシップの一切合切を拒否されるようになった。

 六、私に隠し事をするようになった。例としてエロ本の類の隠し場所が変わった。


 話を聞く前からなんとなく感じていたことが確信に変わったんだが、こいつはいわゆるブラコンなのだろう。弟の恋路――かどうかはまだ判然としないが、そこに介入しようとしているのは正直なところわりと引くぞ。エロ本に関しては、マジで引く。翔琉くんがかわいそうだ。

 おまけに説明の最中にいかに自分の弟がかわいいのかをエピソード仕立てで力説してくるものだから、要点だけを抜粋して列挙するのには苦労させられた。



「とりあえず、おまえのいまの話を聞いて俺が言ってやりたいことはひとつだな」

「なにかしら?」



 こいつなりに本気で弟のことを心配しているのだろう。いくぶん身を乗り出してくる。



「……弟のエロ本を把握してやるな」

「ど、どうしてよ!?」

「いや、まさかそこを指摘されるなんて思ってもみなかったって新鮮な反応をされてもだな。姉弟間の関係性は知らんが、少なくとも隠されているってことは見られたくないものってことだろ? それを家族に把握されてるって知ったら、余計に距離を取られることになるぞ?」

「で、でもッ! 姉として誤った道に行かないよう正してあげないといけないじゃない!?」



 誤った道の判断基準と、正しい道へと是正する方法を知りたいところである。



「だとしても部屋に隠されたやつは、母親に任せとけ。母親ってやつは部屋の掃除をしたときに隠し場所から追加された新しいラインナップまでも把握してるもんなんだ。なんなら置き場所を間違えたのかと思ってそっと普通の本棚に入れてくれてるんだ。……まったく、なんだよその優しさ! 部屋でひとり悶絶するのを知らないのかねえ!?」



 同じ男として翔琉くんの心情を慮った結果、言わなくてもいい情報を吐き出した気がした。



「……悶絶だなんて。いきなりあなたのひとり遊びのことを説明されても気持ちが悪いだけよ」

「そ、そういう意味じゃねーよ!?」

「え……あなた、してないの?」

「お、お、おまえはほんとド変態だな!? 俺をからかえれば恥も外聞もねーのか!?」



 俺は追い打ちや詮索が来る前に「とりあえずだな」と機先を制するように言ってやる。



「もう翔琉くんの部屋には勝手に入ってやるな。俺だって夜明の部屋には勝手に入らんぞ」

「まあ、夜明は入ってるけどね。隠し場所も知ってるし?」

「…………は?」

「夜明判断で許容できる範囲の内容だから、廃棄処分は許してるし?」



 この妹はナニを言っているのだろうか。許容できる範囲ってなに? 不在のときに入ってんの? 有栖川じゃなくて夜明から追い打ちが来るなんて展開は、まるで想像していなかった。



「あ、あああ、あなたまさか、自分の性癖を妹に見せびらかしているの!?」

「どんな鬼畜の所業だ!? おまえいまの話の流れを聞いてただろ? 勝手に入って隠されたのを見てるんだぞ? 俺に落ち度はないだろが!」

「そんなもの、あえて目に入る場所に置いてあっただけなのかもしれないでしょう?」

「あのなあ、隠してあったって言ってるだろ?」

「どうだか。あなたのことだから妹に発見されることを想像して興奮していたんじゃないの?」

「おまえのなかで俺の認識はどうなってんだよ! ……いや、言わなくていいわ。なんかショックを受けそうだ。とにかく、俺は本棚の最下段に隠しているんだが、背表紙をすべて取り替えて、且つ、その前には辞書とかを横置きにして裏の本にはずっと触れてない雰囲気を出してんだよ! よほど探し出そうと思っていない限り……っておまえ誘導尋問はヤメロ!!」

「……勝手に饒舌に語りだしたんじゃない。私だってべつに知りたくないわよ」



 図らずも自傷行為というか、負わなくてもいい深手をした気がする。



「あなたもそういう本を持っているのね。……シンプルに軽蔑するわ」

「ちょっと待て。どうしてお前の弟はよくて、俺はダメなんだよ」

「現実とフィクションの区別もつかずに手を出しそうだからあなたには危険なのよ。この世にはサキュバスなんて存在しないし触手もない。催眠だって時間停止だってできないのよ?」

「おまえ、やけに詳しいな!? おまえこそ愛読してんじゃねーのか!?」

「し、失礼なこと言わないでくれるかしら!? そ、そう……翔琉のよ! 翔琉の持ってる本がそういう内容だったのよ! 確認する過程で知っただけで、決して能動的なものではないわ!」



 こ、こいつ、まるで『目に入れても痛くない』くらいの感覚で溺愛している弟を売りやがった。翔琉くん、理由は知らないが、有栖川と距離を置きはじめたのは正解だと思うぞ。



「言わせてもらうが、必死になればなるほど怪しいんだわ。べつに俺はおまえみたいにエロ本を持ってるってだけで嫌悪感を抱かないし否定もしない。正直、むしろ好感度上がるわ」

「あなたの好感度を得てしまうほうが屈辱で気持ち悪くて排他的で吐き気を催すわね」

「…………」



 言いすぎじゃね? ほんとうだとしても言いすぎじゃね? もう少しオブラートに包めよ。



読了ありがとうございました。

感想や反応をいただけると、とても励みになります。


次回更新は本日中を予定しています。

更新予定に変更がある場合は、X(Twitter)にてお知らせいたします。

@Inuyoshi_Chacha

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