13.汚染の恐怖
13.汚染の恐怖
実際に汚染されたと感じた瞬間に私がどうなるのか説明したい。
淡々と、脳が勝手に手順を思考し始めるだけではない。
発狂するか、発狂寸前まで追い詰められるし、それは体にも影響を与える。
「汚れた」と思った瞬間は恐怖だ。
自分が汚いと感じるものに触れた場所に全身の神経が集中する。
その箇所が脳の中でクローズアップされて、その場所からサーッっと血の気が引いていく。
自分の体が、その汚れが付着した部分しかないような感覚だ。
指先が少し、汚染されたものに触れたような気がしたら、自分の体はその指先しかないといったところだ。
なんとも、文章で説明するのが難しい。
汚染されたと思った次の瞬間には脳がオートで儀式の手順を考え始める。
例えば、外出先で汚染されたと感じた場合、家に帰ってからする儀式は大変に多い。
まず、着ているものは上から下まですべて洗濯だ。
それからシャワーも浴びなければならない。
お金やカード、鍵も洗わなくてはならない。
お札も洗って紙に挟んで重しをする。
スマートフォンはエタノールでビタビタにする。
実際にあった話を書こうと思う。
私は社会復帰の為に、職業訓練校に通っていた時期がある。
高校を卒業した後で、20代前半だった。
ある時、通学途中で駅のトイレに立ち寄り、そこで流されていない他人の便をちらりと見かけてしまった。
次の瞬間には全身鳥肌が立ち、体中の血の気が引いて、まるでフワフワと宙に浮いたような、自分の体に全く力が入らないような感覚に陥っていた。
それでも、気が狂いそうになりながら、私は何とか学校まで行ったのだが、まともに授業を受けることができず、別室で大泣きするという始末だった。
20代前半の人間が、トイレで他人の便を見かけただけでこうなる。
便に触ったわけでもなければ、近くに寄って行ったわけでもない。
ただ、ちらりと見えただけだ。
人が聞いたら馬鹿みたいな話だろう。
自分でも情けなくなる。




