(初稿版)第六章・第八節:OIA/戦略情報庁(Office of Intelligence Adjustment)
挿入ドキュメント風描写:未放映映像 “PROJECT ORPHEUS” より抜粋】
> (画面はモノクロ。フィルムの走査線と共に、タイプ音が響く)
ナレーション音声(男性・抑揚抑えめ)
「アメリカ合衆国航空宇宙局、通称NASAは、1960年代、世界最大の科学プロジェクトとして宇宙開発を牽引した」
「しかし、実際の開発拠点は、その裏で密かに存在していた別の組織が担っていた」
「その名は――OIA/戦略情報庁(Office of Intelligence Adjustment)」
「OIAは、宇宙開発の**“実行”ではなく、“演出”を専門とする情報機関**として、1950年代末に極秘に設立された」
> (映像:巨大な倉庫内、模造されたロケットの機体と、月面のように塗装されたセット)
「フロリダ州の某軍施設地下、通称“スタジオ・ゼロ”では、
月面着陸時の“光の反射角”や“重力下の歩行シミュレーション”が繰り返し検証されていた」
「OIAが開発したのはロケットではない。“観測される宇宙”のシナリオだった。」
> (映像:映写機で流される訓練映像。「3秒後に着地ポーズ。ライトを強く」「月の砂埃は出すな、空気がないんだから」)
「この施設では、NASAのエンジニアも数名参加していたが、全員が“表の顔”しか知らされていなかった。
彼らは、本当に月に向かうと思っていた」
「しかし、OIAの目的は“真実の探査”ではない。“敵に信じさせる物語の構築”だった」
> (映像:1959年の日付の文書。「心理兵器(PSYWEP)としての宇宙演出戦略」)
「アポロ計画の本質は、ロケット技術ではなかった。
実際に人類を送る必要はなかった。“送ったと思わせること”の方が、遥かに効率的で、制御可能だった。」
> 「それがOIAの考え方だった。」
(フェードアウト)
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a.n.hは、地下第4記録庫でこの映像のテープを見つける。
“未放送資料”として保存されていたが、閲覧記録はゼロ。
クレアが冷ややかに言う。
> 「これが真実かどうかは問題じゃないのよ。
信じる人が一定数いれば、それが“観測された宇宙”になる」
「真実の座標じゃなく、“真実だと受け取られた座標”が、国家を動かすの」
a.n.hは呟く。
> 「…じゃあ、俺たちはずっと“作られた宇宙”に向かって拍手してたってことか」
こうして「宇宙開発=信仰」であり、“観測された物語”の世界で国家が動いていたことが示唆される。




