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1974年  作者: yoten
13/40

(初稿版)第三章・第三節:報道という劇場

「人類が何を信じるかは、神が決めるのではない。

 新聞が決めるのだ。」

 ――アラン・ドロス(非公開ブリーフィングより)





---


1947年7月7日・午後4時

ニューメキシコ州・ロズウェル・デイリー・レコード社内


「…これ、ホントかい? “空飛ぶ円盤の残骸を、空軍が回収”だって?」


編集長が顔をしかめ、煙草をくわえたままタイプ原稿を読んでいる。

紙面は明日の朝刊の一面を飾る予定――だが、誰も信じていなかった。

“面白半分”。“夏の冗談”。

しかしその記事は、**意図的に舞台へ押し上げられた“第一幕”**だった。



---


ワシントンD.C.・仮設OIAオフィス


アラン・ドロスは、フィルター越しにロズウェルの地方紙を見つめていた。

記事の原文、写真、記者名、すべてOIAが手引きしたものだ。


「目撃情報だけでは、大衆は揺れない。政府が認めたことが重要なんだ」


助手が尋ねる。「でも、その“認めた情報”は明日、否定されるんですよね?」


「だから良い。“否定された情報”こそ、人間の信仰を加速させる。

 政府が隠したがる内容こそ、もっとも面白く、もっとも予算がつきやすい」



---


7月8日 午前10時・陸軍航空隊記者会見


「昨日報道された“円盤”は、誤認でした。

 実際には、気象観測用の高高度風船の破片です」


そう読み上げる報道官の背後では、

ドロスが用意した“銀色のゴミ”が丁寧に記者たちに展示されていた。


そして数時間後、CBSの速報がこう告げた:


> 「米軍、空飛ぶ円盤の存在を否定。だが疑問の声は高まる一方だ」





---


同日・OIA仮設会議室


ドロスの机に届いたのは、国家安全保障会議からの回答だった。


> 【戦略提案:OIA設立案・審査結果】


・本年度中の仮設組織として「戦略未知事象調査班(仮)」を認可

・活動予算:初期分として2,000万ドル(用途限定)

・継続予算および拡張は、追加脅威の存在証明を条件とする




ドロスは微かに笑い、助手に言った。


「つまりこれは、“種銭”ということだ」


「発足…おめでとうございます」


「いや、これは飼い慣らされた一歩目に過ぎん。

 本当の諜報機関には“自由な財布”が必要なんだ」



---


その夜――

ドロスはひとり、仮設事務所の奥の資料室に入った。


鍵のかかった引き出しを開けると、そこには一冊の報告書があった。


> 【D-1:演出されなかった真実】

ダンフォード報告書・原本




分厚い革表紙。軍人の無邪気な驚きと、恐怖と、探究心が混じった調査記録。

誰の手にも渡らず、誰にも渡す気のない、唯一の“本物”。


ドロスはその表紙を撫でながら、ウィスキーのグラスを傾けた。


> 「この国は、真実で動かない。

 …だが、“信じたがる嘘”には、いくらでも金を出す」





---


机の下には、もう一つの資料がある。


> 【非合法資金調達案・覚書】

・文化支援名目の国際財団設立

・軍需産業の開発費“外部試験”流用

・ラスベガス経由の“余剰資本回収”ルート

・教会系組織との協定草案(暗号名:クロスパス)




ドロスは静かに笑った。


> 「OIAは、まだ“国の機関”だ。

 だが――俺が作りたいのは、“国家の上にある意思決定機関”だ」





---


> 報道という劇場は、観客に疑いを植えつけ、

予算という舞台の幕を開けた。


だが、ドロスは知っていた――

この舞台の“照明”を握るのは、国家ではなく、闇の資金だと。

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