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僕の職業適性には人権が無かったらしい  作者: 井上みつる/乳酸菌/赤池宗


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74/75

村の異常さ 74

「村には戦士が四十人、弓使いが二十五人います。その中で一番強い戦士がアーベルさんで、一番強い弓使いがミケルさんとロルフさんですから」


 村の簡単な戦力を伝えると、マルクスが自分の顎を指でつまみつつ、口を開く。


「ふむ……それで、その者達はどれくらいの強さだと思っておる?」


 そのアバウトな質問に、なんと答えたものか悩む。


「そうですね。まぁ、五十人いれば、どうにかドラゴンを撃退できるくらいでしょうか。大角蜥蜴ホーンドレイク巨鬼トロール鉄鱗蛇アイアンバイパーくらいなら四人一組で討伐してますが、魔の森でも大型魔獣は月に一度くらいなので、毎日中型魔獣を狩って訓練していますね」


 あまり期待されないように、少しだけ控えめに戦力を伝えてみた。しかし、その感覚が間違っていたようだった。


 絶句するマルクスとデール。一瞬の沈黙の後、レオンが困ったように口を開く。


「……恐らくだけど、ラーシュ君の村の戦力は騎士団千人に匹敵すると思うよ。それも、我が国で最高戦力である王都近衛騎士団の精鋭千人と同等だね」


 そう言って乾いた笑い声をあげるレオンに、リネアがグラスを片手に首を傾げる。


「でも、ラーシュがドラゴンを撃退した時って……」


 リネアがそう口にすると、マルクスが真剣な顔でこちらを見た。


「……報告は受けていたが、とても信じられなかった。今の話を聞いてもそうだ。我が近衛騎士団は最高の装備を揃え、騎士として過酷な訓練を何十年と続けてきている。それが、小さな村一つの戦力と同等とは……」


 そう口にしてから、マルクスは目を鋭く細める。


「……ラーシュよ。お主の職業適性はなんだ? そして、どんなスキル、もしくは魔術を覚えておるのだ」


 この問いかけに、すぐには答えられずに口を噤む。


「ふむ、希少な職業適性故、答えられぬか。まだ、我がテオドーラ王国にそれほど信頼を寄せてはくれぬか」


 マルクスが厳しい目つきでそう告げる。それに、デールが眉根を寄せた。リネアとレオンは困ったような顔をしているが、どうやら勘違いされたようだ。


「いえ、そういうわけではありません」


 そう口にすると、マルクスは鋭い目つきをそのままに、顔を上げた。


「……では、どういうわけだ?」


 マルクスに再度尋ねられ、仕方なく顔を上げて目を見る。怒らせても仕方がない。答えろというのだから、答えるとしようか。


 そう思い、考えていることをそのまま伝えることにした。


「そもそも、僕の職業適性は商人とされていました」


 そう言うと、皆が驚きの声を上げる。だが、驚くのはそこではない。


「何故かというとですね。商人で強くなった者が過去にいなかったか、極端に少なかった為です。だから、僕が魔導技師という職業適性であることが分からなかった。戦士や弓使い、魔術師みたいに戦闘に特化した職業適性だと、その上級職である騎士や魔剣士、ハンター、レンジャー、大魔導士、召喚士にいたる人も現れます。しかし、聖職者はともかく、盗賊や商人のような職業適性の人は簡単には上級職になることができません。上級職になる為には、多くの強敵を倒し、職業適性の熟練度を上げる必要があるからです。また、強くなる為にはスキルや魔術をしっかりと選び、それを活かせる構成にすることが重要です。例えば、戦士。これはステータスの伸びを考えても十分強いですが、素早さを選ぶか、体力と防御力を選ぶか。それとも攻撃力と範囲攻撃に特化させるか。もちろん、弓使いも同様ですね。攻撃力と速度に特化させて継続火力を出すか。それとも、遠距離での一撃必殺を狙うか……」


 語り出したら止まらない。なにせ、人生を捧げたと言っても過言ではないロード・オブ・グランドールの基本である。我が村、グランドールの仲間達にも同様の話はしているが、どの職業適性でも強くなることはできるし、仲間達にとって物凄く有用なスキルを得ることもできる。


 その為には、何よりもスキルとステータスの構成が重要である。本来であれば、それぞれの職業適性に最も適した装備まで語る必要があるが、これに関しては制作困難であり、最終目標にすべきと考えていた。


 そんなことを考えながら話していると、マルクスが片手を挙げて口を開く。


「ちょ、ちょっと待て。内容が入ってこないぞ。あまりにも突飛な話ばかりで、誰も理解できておらんではないか」


 困惑した様子でマルクスがそう言った。ふと見ると、レオンやデールも固まっているし、モニカもキョトンとした表情である。勿論、リネアはそれほど困惑した様子は見せていないが、周りで世話をしているメイドたちは呆気に取られていた。


「……え? ラーシュの知識って、貴族なら皆持ってるものじゃないの?」


 静まり返った食堂内で、そんなミケルの一言が良く響いた。その言葉を聞き、リネアが苦笑する。


「そんなわけないでしょう? そもそも、魔剣士なんて歴史上に何人か名前が挙がった程度の伝説的存在よ。大魔導士やハンターも同じね。それ以外の希少な職業適性なんて、名前すら殆ど聞くことがないものよ」


 リネアがそう告げると、やっとレオンやデールも再起動した。


「……とても、嘘を言っている様子ではなかったね」


 レオンがそう口にすると、デールが溜め息交じりに首を左右に振る。


「確かに、嘘を言っているようではなかったな。とはいえ、内容があまりにも常識を超えたものだ。嘘を言っていないなら、自分自身が信じる妄想を語っているのかも……」


 デールはとても 信じられないといった様子でそう告げた。


 確かに、信じられないだろう。職業適性やスキルについては、どの国も研究をしている。しかし、それは一国の国力を左右するものの為、どの国でも秘匿扱いだ。それを、こんな十歳の子供が知っているわけがない。


 まぁ、信じてもらう必要もないとは思っている。なにせ、テオドーラ王国は十分過ぎるほどの大国だ。これ以上強くなる必要もないだろう。


「まぁ、信じられないのは仕方ないですし、大丈夫ですよ。それに、僕みたいな子供がテオドーラ王国の為に何ができるというわけでもありませんし」


 笑いながらそう言って、果実酒の入ったグラスに手を伸ばす。しかし、待ったが掛かってしまった。


「いや、ラーシュよ」


「はい?」


 名を呼ばれて振り返ると、マルクスが真剣な目でこちらを見ていた。手を止めて、マルクスに体の正面を向ける。


「……リネアからも事前にある程度の報告は受けていた。今言われたほど衝撃的なことではなかったがな」


 そう言って、マルクスは表情を緩めた。口の端を上げ、笑みを浮かべている。ようやく自然な微笑みを浮かべたマルクスを見たが、それもすぐに引っ込む。


「……その知識の出どころは問わん。二つ、頼みがあるのだ」


「頼みですか?」


 聞き返すと、マルクスは重々しく頷く。


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― 新着の感想 ―
訓練をして欲しいとかだったら論外だよなぁ 村は小規模かつ、恩義を感じている第1世代だから、欲に負けて外部へ流出しないだけで、一つの国が圧倒的な力を露骨に付け始めたら、あっという間に各国へ流出して、人が…
まずは報酬から言い給え、話はそれからだ
>「……その知識の出どころは問わん。二つ、頼みがあるのだ」 あっ(察し)
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