表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
僕の職業適性には人権が無かったらしい  作者: 井上みつる/乳酸菌/赤池宗


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

57/58

見違えたように 57

 城大工のグスタフが来て三ヶ月。皆の協力もあり、村は本当に見違えるように変わっていった。平屋ではあるが、綺麗で機能的な家が建ち並んでいる。前は築350年のログハウスみたいだったが、今は新築の木造建築である。なんと、玄関と部屋一つという間取りだったのが、玄関と台所、寝室が二つという具合にバージョンアップした。


 単純に広くなった上に、これまでは存在しなかった台所という概念だ。英語で言うとキッチンである。ふふふ。


「ちょうど水路を作ってくれたのは有難かったのう。これで各家に水道を置けるぞい」


 そう言って、グスタフが出来上がった家を眺めながら呟く。それに、思わず待ったをかけた。


「いやいや、それこそ上水道なんて僕たちだけじゃ作れなかったからね。それに、下水道もそうだけどさ」


 グスタフの言葉に苦笑しながらそう答える。


 なにせ、今では村の周囲を幅の広い塀が囲っており、その上を川の水が流れているのだ。皆で作った水路には水車が設置され、そこでくみ上げた水が塀の上を流れているのである。その上には屋根が取り付けられていて、異物があまり入らないようになっていた。


 少し違うが、古代ローマ帝国で使われていた上水道のような仕組みだ。塀の上から流れる水は各家庭に流れ、すぐに水を使うことができるようになった。それだけでなく、家の外には壁で囲んだトイレが設置されており、地下にも水が流れて下水道として機能していた。


 もう、信じられないような進化である。生活のレヴォリューションが起きたと言っても過言ではあるまい。


 防衛に関しても同様だ。塀の高さは二メートル程度だが、厚みがあるので安心感も凄い。そして、南北に両開きの扉を設置している。今は木製だが、いずれは鋼鉄の扉にしたいところだ。


「後は、家が全て完成したら物見櫓を作るくらいじゃのう。そうしたら、わしらの仕事も終わりじゃ」


 そう言って笑うグスタフに、両手を合わせて拝むようなポーズをとる。


「本当にありがとう! こんなに早く村が良くなっていくとは思わなかったよ! 城大工ってすごいんだね!」


 深く頭を下げてからそう言って笑うと、グスタフは愉快そうに笑った。


「ほっほっほ! それは勿論じゃが、これほど早く工事が進んでおるのは、この村の皆の協力があってこそじゃよ。なにせ、誰も彼も職業適性を使いこなしておる! 本当に信じられないくらいじゃ! これだけの実力を持つのは、我がテオドーラ王国でも騎士団長や魔術師長くらいじゃろう。それに、何よりもラーシュ、お主じゃ」


「ん? 僕?」


 聞き返すと、グスタフは呆れたような顔で村を囲う塀を指差した。


「あの塀を作った石や岩を運んだのも、地下に下水道を通したのも、お主のゴーレムとやらの力が大きいんじゃぞ? あんなもの、見たこともなかったわい。恐らく、各国の要人がそれを知れば、研究の為に連れていかれる可能性もあるじゃろう。できるだけ隠すようにした方が良いと思うぞい」


「ええ!? せっかく暗殺者がいなくなったと思ったら、今度は誘拐魔が来るの!? 勘弁してよー!」


 グスタフの恐ろしい言葉を聞き、思わず頭を抱えて叫ぶ。いくら美少年だからって、皆ラーシュ君を狙い過ぎ。銅貨一枚くれたら握手くらいならしてあげるから、お行儀よく順番に並んでもらいたいものである。


「ど、どうかされましたか?」


 僕の嘆きを聞きつけて、イリーニャが慌てた様子で走ってきた。耳が揺れていて今日も可愛い。


「僕、誘拐されるかもしれない」


 走ってくるイリーニャに、言われた言葉をそのまま伝えてみる。すると、イリーニャの顔面は血の気が引いて白くなった。


「ゆ、誘拐……!? 伯爵家の御子息という理由でしょうか!?」


 驚愕するイリーニャ。


「いや、美少年という理由で」


「な、なんてこと……ラーシュ様が美しいから……!?」


 素直に驚いてくれるイリーニャ。わなわなと尻尾が震えて可愛い。


「あまりからかうのも良くないと思うんじゃが」


 イリーニャのリアクションを確認していると、グスタフに窘められてしまった。確かに、イリーニャは本気で心配している。少し可哀想かもしれない。


「うん、冗談」


「あ、冗談でしたか……」


 ホッとした様子で微笑むイリーニャ。それに頷き、正確な内容を伝える。


「そうそう。僕が珍しいスキルを使うから、それが多くの人にバレたら、もしかしたら誘拐されるかもって話」


「ゆ、誘拐されるんじゃないですか!?」


 あれ? ちゃんと伝えたのに、何故かイリーニャの顔がまた白くなった。


「まぁ、バレなければ大丈夫だよ。多分」


 そう告げると、イリーニャは周囲を素早く見回した。


「……ひ、人の記憶を消すスキルはないのでしょうか」


 小さな声でイリーニャがそんなことを口にする。それに苦笑して首を左右に振った。


「ないね」


「……こ、困りました」


 記憶を消すスキルがないことを知り、イリーニャは挙動不審な様子で周りの様子を窺うのだった。



読んでくださる皆様のおかげで!

『僕の職業適性には人権が無かったらしい』1巻が発売されます‼️

やったー‼️・:*+.\(( °ω° ))/.:+

書籍版のみ、イリーニャの過去が明らかに‼️

頑張って書いたので、是非読んでみてください‼️・:*+.\(( °ω° ))/.:+


https://lnovel.jp/lightnovel/labels/grast_novels/

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
商人のレベル上げがキツめみたいなので、商人が拐われる事態まではいかないかな〜 ゴーレムの形状だって本人次第⋯ってとこも萎えると思うし。
どっかの機動戦士みたいなイカすゴーレム作って、国とケンカできるぐらいの戦力保有すれば問題ない
書籍化おめでとうございます! 執筆頑張ってください。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ