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第16章 銀の塔へ潜入

「行けるよ。銀の塔に」

 そう言ったのは、ウビークエだった。

 シュークリームのカスタードが口に付いてるわよと絢音が自分の口元に指を当てた。

 どこどこ?とウビークエは、絢音と顔を見合わせたが、結局、絢音がウビークエの顔についているカスタードを人差し指で取り除いた。

 ありがととウビークエが微笑んだ。

「ねぇ、それは本当?」

「うん」

「なぜ、知ってるの?」

「行ったから」

「なぜ、さっき言わなかったの?」

「訊かれなかったから」

「で、どうやって行ったの?」

「リサイクルセンターから行ける」

「リサイクルセンター?」

「いらなくなった物を直したり、別の物を作ったりするとこ」

「それは、どこ?」

「地下だよ」

「地下?」

「塔のゴミは、リサイクルセンターに集まるんだ。上の階にゴミ箱があって、そこに入れると地下まで落ちてくるんだ」

 それでと絢音が促す。

「この塔と銀の塔のゴミは、そのリサイクルセンターに集まるんだ。つまり、繋がってる」

 真琴たちは顔を見合わせる。

「連れてってよ」絢音がお願いする。

「わかった、ウビークエ、みんなを連れて行く」

「さすがに気付かれるだろ?」と響介。

「そのままだったらね。セイタンってのがあるんだ」

「セイタン?」何だそれはと、響介が眉間に皺を寄せる。

「銀の塔の入口には、セイタンっていう装置があるんだ。生き物が通るとビーってなるんだ。そしたら、入れない」

「キンタンの逆だ。空港の搭乗口にある金属探知機の生物版だ。危険物を持ち込ませないようにチェックする金属探知機の逆で、生体をチエックすると言うことか」

「でもね……、大丈夫、変装するから」

「銀の塔の住人は、ロボットなんだ。だから、リサイクルセンターでロボットを見つけて、中の機械を外すと鎧みたいに着れる」

「それを着るのか……。コスプレだな」

 おもしろそうと、絢音の口角が緩む。

 それを見た、響介と真琴は、コスプレ決定だなと思っていた。

「それで、バレない?」

「こうやってロボットのフリをするんだ」ウビークエは、カクカクのぎこちない動きをした。

 真琴は、笑いをこらえながら言った。

「そんなんでいいの?」

「それと・・・・・・」

 ウビークエは、ガサガサとポケットをまさぐると、掌サイズの小さな箱を取り出した。

 はいと絢音に渡した。

「スマホ?」絢音が呟く。それは、絢音たちが使っていたスマートホンとそっくりだった。

 ただ、アイコンがこの世界のものだった。

「これをどうするの?」

「銀の塔の奴らはこれをいつも見てる。他のところあまり見てない。この箱の中の人と話する。みんな箱の中の人と仲良し。近くに居る人と話すことない。近くに居る人が箱の中に居る人でも話さない。だから、これを見ているフリをすれば、気付かれない」

 ウビークエは、鼻の孔を大きくして得意そうだ。

「これも、リサイクルセンターに落ちてる」

「僕らを連れて行ってよ」

「わかった!」ウビークエはうれしそうだった。

「あっ、忘れてた。銀の塔の人たちは食べないから、飲み物とちょっとした食べ物を持ってきて」

 準備もあるので、明日、出掛けることにした。


 真琴たちは、グベルナに話して拒否されたら何も出来なくなるからと、黙って潜入準備をしたいた。

 ウビークエの言った通りに軽い飲み物と食べ物を用意し、両手が空くようにリュックに入れた。

「なんか、遠足見たいね。ワクワクする」

 絢音は嬉しそうに荷物を詰めていた。

 しかし、果たしてパイロやコックとパテシエも銀の塔に居るのだろうか?

 この疑問は、部屋の天井の隅に張られた小さな蜘蛛の巣の様に真琴たちの心に引っ掛かっていた。

 休憩しようかと言う響介の提案を受け入れ、真琴たちは庭園に向かった。

 いつ来ても、美しい花々で飾られた庭園は、悩みを忘れさせてくれた。

 メトセラの助言が功を奏して、色とりどりの花が庭を埋め尽くしていた。


 西洋風あずま屋ガゼボで休んでいると、コロニクスを見つけた。

 コロニクスは、戻って来たところだった。

 相変わらず背筋をぴっと伸ばし、綺麗な姿勢だった。

 真琴たちを見つけると、カツカツと踵を鳴らしながら近づいてきた。

 三十センチ四方の箱を手にしていた。

 コロニクスは、箱をテーブルに置くと真琴たちの向かいに座った。

「何をしている?」

 真琴たちは、顔を見合わせ「何も・・・・・・。休んでいるだけ」と答えた。

「あれから、新しい情報は無いか?」と、箱の中をガチャガチャといじっている。

「……あ、ないよな」と、愛想笑いで答えた。

 コロニクスは真琴たちの顔を改めて見渡し、再び箱の中に目を移して「そうか」と呟いた。

 箱の中から、小さな半円球を取り出しテーブルの上に置いた。

「何?」と真琴たちは、半円球を見つめた。

「これは、カメラだ。何者かが街中に仕掛けられていた」

「誰が?」響介が呟く。

 コロニクスは、両手を天に向け「さあな・・・・・・」を答えた。

「何かを監視しているんだろうな。お前たちかもな」

 コロニクスは、真琴たち一人ひとりを見つめた。

「図書館で、アルクに会ったんだが、最近、銀の塔のオクルスが料理やお菓子の最新本を多量に持って行ったらしい。怪しくないか?」

 怪しいと真琴たちが頷く。

「多分、コックとパテシエは、銀の塔に居る」

 再び、真琴たちを見つめて、一呼吸すると立ち上がった。

「何か分かったら、教えてくれ」と、立ち去ろうとしたが、何か思い出した様に立ち止まり振り返った。

 コロニクスは、ポケットから小さな箱を取り出し、真琴に頬った。

「これを持って行け。銀の塔用の翻訳機だ。ボタンを適当に押して使い方を覚えろ。見たことあんだろ。それと一番のコロニクスの絵をタップすると、俺に繋がる。気をつけてな」

 コロニクスは、そのまま行ってしまった。

 真琴は、その小さな箱は、これまたスマホのようだ。

 これは、ホームで浮浪者に襲われた時に助けてくれた青年が身に着けていたスマホだ。浮浪者の言葉が、波形グラフと言葉が画面に表示されるヤツだ。

「これは!」

 真琴は、顔を上げコロニクスの方を見た。

 コロニクスは声に気付いた一瞬歩みを止め、「気をつけろよ」と言うとそのまま行ってしまった。

 真琴は、コロニクスに見抜かれていたと思った。

 この世界では、この小さな箱を何というか分からないが、真琴たちはスマホと呼ぶことにした。

「バレバレじゃん」と響介が言いながら、真琴からスマホを取り上げた。

 絢音も響介に顔を付けて、スマホを覗き込む。


 真琴は、このスマホを始めてみた時の話をした。

 へぇーと二人とも納得していた。

「浮浪者がしゃべったって」眉間にシワを寄せ響介が聞いた。

「ああ、このスマホに表示されたんだ。”見つけた”とか”捕まえろ”とか」

「なんだそれ、見つけたって、真琴の事か?」翻訳機?翻訳アプリってこと?」

「わからない。僕を襲ってきたから……結果的には僕かな」

「捕まえたかった……、真琴を?」響介が不思議がる。

 なぜ?これは、真琴たちがずーっと抱えている問題。

 自分の為に、二人を巻き込んでしまったのかと、自然と声が小さくなった。

「このスマホは、あの浮浪者の言葉を翻訳したってこと。つまり、翻訳機……翻訳アプリ?」

「翻訳機は、必要ね。浮浪者の言っていることが分かりから。コロニクスって、優しい人なのかも」


 これから、どうしたらよいのだろう?

 そう、真琴を元の世界に戻さなくては。

 その為にパイロに会って、方法を訊きださなくちゃ。

 パイロを見つけないと。

 銀の塔へ、銀の塔に探しにいかなくては。

「先ず、動きましょう。明日、銀の塔に行こう!」絢音が立ち上がった。

 そうだなっと響介と真琴も立ち上がった。


 次の日、真琴たちは、西洋風あずま屋ガゼボで、ウビークエを待っていた。

「やぁ、待ったぁ」

 その声は、ウビークエだった。その後ろにもう一人居る。

 真琴たちの視線が、後ろのもう一人に注がれていることに気付いたウビークエは、ちらっと後ろを振り返り、右手の親指を立てその親指で後ろを指した。

「こいつは、職人、オピフだ。何でも出来るよ。変装を手伝って貰うのだ」

「オピフだ、よろしく、壊すことも作ることもできるよ。壊す方が好きだけど」

 後ろのもう一人が、ウビークエを押しのけて言った。

 オピフは、昔のパイロットが付けるゴーグルを付けていた。

 背中にバカでかいスパナが組み込まれたケースを背負っていた。

「中を見るかい」

 ケースを降ろし蓋を開けるとどうだと言わんばかりに真琴たちを見た。

「取り合えず必要な物を持ってきた。何でもできるぜ」

 親指で自分の鼻を弾いた。

 先を交換出来る携帯用ラチェットドライバー、刃が太い工業用カッター、ペンチ、プライヤー、五メータースケール、

 電設用工具セットもあるで、

 腰袋ホルダー付きだ。

 何故か鉛筆を耳に挟めている。充電式インパクトドライバー

 と重そうな装備を見に着けている

 ガッチリとした身体つきだ。

 ヘッドライト

 皆にヘッドライトを配った。首から掛けてな

 響介と真琴が興味を示す。

 どうやって使うの?

 腰ベルト、付けてみるか?

 重てぃと直ぐに弱音を吐く。

 俺もと言う真琴に腰悪くするから、やめとけと響介。

 大丈夫と腰ベルトをすると、やばいやばいと響介に助けを求め助けて貰っていた。

「若いくせにだらしないの」彼女に笑われてると真琴と響介を横目に見て、腰ベルトを軽々と腰に付けた。

「もう済んだの、行くよ。ウビークエ、案内をお願い」

 絢音がお前たちは子どもかと急かせた。

「了解、こっち、こっち」とウビークエが先に進んだ。


 いつの間にか一階に来ていた。

「ここだよ」

 何やら、床に直径一メートル程の丸い鉄板が敷いてあった。

 淵がアンカーボルトで止められている。

 何処からか、カラーコーンと白黒の縞の棒を持って来た。

 工事現場で見かけるアレだ。

 鉄板の周りを囲み、「立ち入り禁止」のプラカードを設置した。

「これで良し」オピフが顔を上げた。

 腰から、インパクトドライバーを取り出し、アンカーボルトを外していく。

 蓋をずらす。オピフの表情で蓋の重さがわかる。

 鉄板の下には、階段があった。

 オピフが先に入り、穴がうす暗い明りが点灯する。

 オピフが、ヒョコよ顔を出し、来いよよ手招きした。

 みんな、それに従った。

 何回か折れ曲がった階段を下ると、直径五メートル程のトンネルに行き当たった。

 直径三十センチ程の菅が、トンネルに沿って設置されている。

 所々の壁から水が滴っていて、トンネルの片隅の側孔に流れ込んでいる。

 じめっとした湿気と何日もほおっておいた雑巾のような匂いが身体を包んだ。

 しばらく、息をひそめトンネルの先を見つめる。

 聞こえるのは、遠くから聞こえるモーターのような音や水が垂れる音だけだった。

「何か居る?」と、絢音が誰に訊いてる訳でもなく呟く。

「行こう、離れちゃだめだよ」ウビークエが先頭を歩いた。

 暫く、ウビークエに付いて歩いた。

 虫嫌いな絢音は特に落ち着かない。壁や床や天井に目をやる。何か見つけるたびに驚き、びくっと肩をすぼめた。

「ここだ」

 ウビークエは、皆を止めた。そして、壁を指さした。

 壁には、厚い鉄板が張られていた。その鉄板には、へたくそな字で”銀の入口”と書かれていた。

 また、オピフの出番だ。

 鉄板は、淵を等間隔でボルトで固定されていた。

「こういうのは、下から外さないとな」と独り言をいいながら、オピフがボルトを外していく。 

 鉄板の上端のボルト一本を残し、全てのボルトを外した。

 オピフは、鉄板を横へずらし、反対側からも開けれるように細工をした。

 穴が現れた。

 半径一メートルの穴だ。

 穴の周りは、荒い断面を見せていた。

 ただ、予定されていたものではない緊急に開けられた穴だ。

「この穴をくぐるんだ。あっちが、銀の塔だ」

 先頭は、やはり、ウビークエだ。

 次々と穴から、銀の塔へと入っていった。

 ウビークエが、両手を上から下へを繰り返し、頭を低くするように指示を出す。

 ゆっくりと中に進む。

「ここまで来れば大丈夫だ」

 ウビークエが立ち上がる。みんな、腰に手をあて、いたたたと背を伸ばす。

 周りを見渡す。

 そこには、色々なロボットが積まれていた、自動車のスクラップ工場の様に。

「オピフ、頼んだよ」

 わかったとオピフがロボットの廃材の中からボディだけを選んで、持ってくると、あっと言う間に人数分の変装用ボディを造った。

 各自、来てみて微調整をしていく。

「なんか、懐かしくない?」

 絢音が真琴と響介を見る。

「幼稚園の時、こんなの着たよ」

 真琴と響介は、思い出していた。そう、幼稚園の劇をやったんだ。

 真琴は案山子で、響介はブリキ男だった。

 真琴たちは大笑いしたが、ウビークエとオピフはポカンとして、真琴たちを見ていた。 

「こんなので、大丈夫なのか?」

 響介は、腕をを上げながら呟いた。動く度に金属の擦れる音がする。

「大丈夫、怯えるから見つかるのさ。堂々と胸を張って歩くんだ」

 そう言うとウビークエは、胸を張った。

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