第15章 行けるよ。銀の塔へ
真琴たちは、白い塔の庭園の西洋風あずま屋ガゼボで、ウビークエが持ってきたスイーツをごちそうになっていた。
そこで、パイロとコックやパテシエまでもが、行方不明になっている事を知った。
真琴たちは、頭の中が混乱していて、何かしっくりこないかった。
何かが足りない。
情報が足りない。
そう銀の塔のことだ。
「銀の塔のことだろ、君たちが知りたいのは」と、樹の王メトセラが言うと、そうだと真琴たちが頷いた。
グベルナは、コロニクスと目くばせした後に話始めた。
「私から説明しよう。白い塔、つまりここのことだが、人間に関した物は、何でもある。それと何といったらいいか……魂とでも呼ぼうか、魂を君たちのいた世界に送りまた受け取っている。真琴にはDNAラボを見せたが、進化にも我々が関与している」
グベルナは、わかるかなと、一呼吸置いた。
「我々が関与しない者が、銀の塔を作っている。
我々が関与しない者たちの力で、次世代のモノをつくろうとしているようだ」
「次世代のモノ?」真琴たちは、理解できたか?とお互いの顔を見た。
「次世代のモノと言うのは、人間ではないかもしれない。
我々が関与した人間、つまり、君たちは、生物が基本となって出来ているが、次世代のモノは、どういうモノか分からない」
銀の塔は、機械の塔だ。機械の中には、コンピュータも含まれる。
人間が戦争を始めた時に現れ急速に成長したモノだ。
ちょっとした道具を使い、火を使い、金属を使い、爆弾を作り、戦争をし、爆弾を遠くの目標に命中させるために弾道計算が必要になり、コンピュータが生まれ、更に技術を加速させ、高性能で小さく軽量の機械をつくった。
遺伝子操作や永遠の命を持った機械人間まで手を伸ばそうとしている。人間は、自然界で弱かったゆえに集団脳を維持していたが、もう必要なくなり、個人主体で生き抜くように進化するのかもしれない」
「人間がそれらを創った目的はわからない。もしかすると、わからないで作っているのかもしれない。だが、我々はそれを黙って見ている訳にもいかない。共倒れはしたくないからな。その行為が、他の世界を侵食し破壊されるのなら、我々は黙っていない」メトセラは、我慢できずに付け加えた。その声に力が入る。
「責めないで、この子たちのせいじゃなくてよ」
コロニクスがメトセラをなだめる。
真琴たちの頭の中に”視聴覚の間”で、観た戦争の映像が蘇った。
戦争。
多くの物を破壊した戦争。
誰のものでもないモノに価値を与え、取り合ってきた戦争。
多くの人間が死んでいった戦争。
多くの人間が苦しんだ戦争。
知的探求心によって得られた知識や技術は、人間の格差を広げ、一部の人間の営利のために利用された歴史。
決して、真実がわからない争い。
頭に蘇る映像。
他の世界にも大きな影響を与える行為とは……。
きっと、あの爆弾のことだろう。
たった全長三メートルの五トンで、爆心から十キロ圏内を壊滅させ、四万人近くを死に追いやったあの爆弾。
真琴たちは、思わず下を向いてしまう。
「人間は、好奇心や知的探求心が強く、信じて行動する能力にたけている。その力で夢や欲望を叶えてきた。使い方でどちらのも転ぶ。後始末をするのは、いつも私たちだが。君たちが、ここに呼ばれた理由かも知れないね」
グベルナは、暗くなってしまった真琴たちに言った。
「人間にその能力を与えてのは、爺さんだし、考えそうなことね」コロニクスが賛同した。
真琴は、グベルナが言った”後始末”が、心に引っかかっていた。
「行方不明が、銀の塔が絡んでいるとすると、何のためでしょう?」
絢音が、話を行方不明者に戻した。
「まだ、銀の塔とは断定していない。カラスの報告を待とう」と、グベルナ。
「銀の塔には行けないのですか?オクルスが、こちらに来ているので」
「こちらと繋がっているのだが、銀の塔の門兵が居る。通して貰えない。と言うか言葉が通じないピーヒョロヒョロとか言ってる。何か分かったら連絡し合おう」
グベルナ、コロニクス、メトセラが席を外した。
庭園のガゼボに残ったのは、真琴たち三人とウビークエの四人だった。
そして、ウビークエは、シュークリームに夢中だった。
真琴たちは、黙ったままだった。グベルナの言った事を頭の中で整理していた。
最初に口を開いたのは、真琴だった。
DNAラボの話を始めた。
もちろん、DNAラボ出会ったコッレークとスクルタの事も話した。
そんなマンガみたいな博士たちに、私も会ってみたいと言うのが二人の反応だった。
「そのDNAラボって所で、僕ら人間を造ったって言うのか。そんなことのは習わんかった」と、響介。
「習うはずないだろ。でもさ、受粉の為に異性の虫の姿に似せた花を咲かせるとか、種を遠くに運ぶための種の形だとか、偶然生まれてくるとしたら、膨大な時間が必要だし、化石とか発見されるはずさ」
「そうだな、待ってるより考えて作った方が、早いな」
「グベルナは、僕らにとって神みたいなもの?」絢音も確認する。
「そうかもしれない。その神様たちが気にしていたのは、新型ウイルスだった」
「ウイルス?」
「そのウイルスは、グベルナたちが関与したものでない人工的なウイルスだという事と感染を恐れた人々の急な孤立化をもたらしたって事」
「SNSがあるから、あっと言う間に広がるわ。情報操作したってこと?誰が?孤立化させる目的で?コックとパテシエやパイロが居なくなったのも関係あるの?」
「あるのかな・・・・・・」と、真琴があいまいに答えた。
「全部、銀の塔が絡んでいるの?」
「今のところ、銀の塔だ。ウイルスを造れる事とパイロ誘拐については、黒に近いグレーってヤツ」
「じゃ、コックとパテシエが居なくなったのは?」
「僕は、それも銀の塔だと思っているんだ。どちらも、共通しているのは食べることで、それも一流の料理人だ。美味しいものを食べるとどうなる?」
真琴は、考えを口にした。
「幸せになるわ」
「その後、眠くなる」そうねと絢音は響介を見て笑った。
あっそうだ、安心するってこと?と、響介が付け加える。
「そうだな、人間は食べなくては生きていけない。食べ物があると言うことは、安心するよね」
「それと、美味しいものに出会ったら、友だちに教えたくなるよね。一緒に食べてみんなで幸せになれるように」
絢音の意見は、女性ならではの発想だなと真琴は感じていた。
生きる為の情報のやり取りは、男性より女性の方か優れていると日ごろから思っていたことだ。彼女たちの会話は、スイーツ事や安売り情報だとか、情報は盛りだくさんで、驚かされる。それに比べて、男の情報はあまり生きるために役立たない情報ばかりだ。
「そう、そこにコミュニケーションが生まれる。つまり、孤立化に逆行する」
「そうね。誰かが、孤立させようとしているなら」
「何の為に?」響介が呟く。
うーん、真琴と絢音は唸ってしまった。わからない。
「銀の塔が、問題ね」
「進化した人間が居るって言っていた。作ったのは僕たち人間だって」
「ああ、そうらしいな」
「機械って言ってたよね。AIを搭載した機械?ロボットってこと」
「それって、人間じゃないよ。人間は生物だからさ」
「新しい何かってことだな」
「どうもよくわからないな」
「銀の塔に行ってみる?」
絢音の提案に顔を見合わせる。
「いや、行けないって言ってたよね。言葉も違うって」
「でも、パイロを見つけないと、私たちには時間が・・・・・・」
それ以上話すなと響介が絢音の手を引いた。
「……パイロを見つけて、真琴を元の世界に返さないと」
「ありがと、僕の事だね」
「僕らの事は、気にしないで。また、どこかで会えるさ」
そうだなと真琴と響介が握手をした。
「行けるよ。銀の塔に」
真琴たちは声をする方に顔を向けた。
それは、シュークリームを食べ終わったウビークエだった。




