こんな暑い日は、アイスコーヒーでも飲みながら、夢のような話をするのが、丁度いい。
九月も半ばだというのに、外は三十度を超えていた。おそらく、今年も秋は短いのだろう。夏の日差しに追いやられ、春と秋は年々その肩身を狭くしていく。それにしても、暑い。僕は日陰に入った。すると、スマホが鳴った。高木からだった。
「久しぶりだな」
「久しぶりでもないだろ。二週間振りぐらいだ」
「結局、地元に就職するわけか」
「まぁね。と言っても、今から就職できるとこを探さないとな」
「公務員とかはどうだ?」
「今年は諦めてってことか。ありだな」
「勉強しろよ」
「いい薬ないか?」
「あるぞ」
「まじか。なんだ?」
「寝ることだよ」
流石に専門家は言うことが違う。僕は苦笑した。
「夢に振り回されるのは、もう勘弁してほしい」
「最近は見ないんだな」
「まぁね。それで、要件はなんだ?」
「ただ声を聞きたかったから、はだめか」
「カップルみたいなこと言うな。それに、高木の行動には裏があるのは経験済みだ」
「いや、単純な相談なんだが」
「なに?」
「お前の話、酒の席でしていいか?」
予想外の相談に、僕は一瞬声が詰まる。わざと咳払いして、息をついた。
「好きにしろよ」
「どこまで、もっていい?」
「人工呼吸したことにするぐらいまでなら」
「本当に言うぞ」
「やめろ。お前はいいのかよ」
「コウイチくん!」
離れたところから僕を呼ぶ声が聞こえる。外から仕事を終えた彼女が歩いてくる。高木は声を上げて笑った。
「なるほど、だから地元に戻るわけか」
「いつか、紹介してやるよ」
「帰ってきたら聞かせてもらうぞ」
「いつか、な」
僕はスマホを切った。
「ねぇ、誰と話してたの?」
由香は僕のスマホを覗き込もうとする。別に見られて困ることはない。自分から画面を見せた。
「親友だよ」
由香はキョトンとした顔をして、にっこり笑った。
「いいなー。親友なんて呼べる友達いないや」
「僕も一人しかいないけどね」
「親友は一人ぐらいがちょうど良いの」
彼女は「いつか、紹介してね」と、言って続けた。
「ねぇ、最後に教えてくれるって言っていたよね? コウイチくんがこんなにも頑張った理由」
「途中、投げ出したけどね」
「そこも含めて、ね」
彼女がイラズラっぽく笑って言う。僕はその笑顔を見ながら言った。
「じゃあ、喫茶店でも行こうか」
僕らは図書館から歩き出す。
そうさ。
こんな暑い日は、アイスコーヒーでも飲みながら、夢のような話をするのが、丁度いいのだ。
隣を歩く彼女に向かって僕は言った。
「僕はね、六年前の夢を見たんだ――
【完】
ここまで読んで下さった皆様、ありがとうございます。
誤字や脱字、改行等、至らぬ点も多かったかもしれませんが、一行でも面白いと思ってもらえる部分があれば、書いてよかったと思えます。
感想等お待ちしております。
ありがとうございました。




