約束の日
お久しぶりです。
こっそり、ひっそり再開しようと思います。
「あの…殿下…お食事が進んでいないようですが、お口に合いませんでしょうか…?」
先程から手が止まっている殿下の方を恐る恐るみると、ばっちり目が合ってしまいました。
「いや、やっとだなって」
「?」
「なんでもない、さあ食べようか」
今日は殿下との約束の日。昨日サリーから手紙を貰うまでは、あの日お昼に誘われてのは夢かなってどこか他人事のように考えてました…。
殿下はサーベスト大国の第一王子。本来なら手の届かない存在です。色々と聞きたいこと、疑問は尽きませんが、せっかくの料理が冷めてしまうのも困ります。とりあえず食べてから考えましょう。
「ねえ、困ってることない?」
「え?」
質問の意図が分からず思わず聞き返してしまいました。
「殿下のおかげで無事に婚約破棄できましたし、今はこれと言って…。あっ!その節は大変お世話になりました」
「いやいや、ルディ嬢の証拠のおかげさ。私はなにもしていないよ」
「お褒めいただき光栄にございます」
今だったら、なぜお昼に誘ったのか、そもそもなぜ私に好意を持ってくださっているのかお聞きしたら
…答えてくださるかしら。
「あの、殿下。なぜお昼にお誘いくださったのでしょう?」
「ん?好きだって言わなかったか?」
んんっ!!思わず口に運んだものを吹き出してしまうところでした。頭の片隅の片隅の片隅に覚えていましたが…冗談ですよね…?
「真面目に聞いております」
「私だって大真面目さ」
あの日言われたことを思い出すと今でも顔が赤くなってしまいます。
「殿下、そもそも私たちは同じ学年ということで数回程度言葉を交わしただけでございます。それどころか、我が侯爵家は王家とはほとんど接点がなく、学園に入るまでご尊顔すら知りませんでした。なので…こ…恋を育む時間なんてなかったかと」
喋りながら、だんだんと陛下の顔を見ることができなくなり、完全に俯いてしまいました。今殿下はどんな顔をされているのでしょうか?私の言葉に憤りを感じているのか、悲しまれているのか、それとも私の反応を見て楽しんでいらっしゃるのでしょうか…?
数秒無言の時間が続き、この後どうしようかと頭を悩ませていると「うん、そうか」というボソッとした独り言が聞こえてきます。
「ルディ嬢、顔をあげてくれないか?困らせたいわけじゃないんだ。たしかにお互いを知る時間は必要だよな。そうだな…」
言葉が途切れました。何を言われるのかとハラハラしていると、
「今度城下町で花まつりがあるのは知っているか?」
「…はい」
「では、それに一緒に行くのはどうだろう?」
びっくりして顔を上げると楽しそうに笑う殿下がいます。
「…花まつりですか?」
「嫌だろうか…?」
「いえ、そんなことは…」
「では楽しみにしているからな!約束だぞ」
呆気に取られるわたしを置いて、殿下は満足そうに再び食事に手をつけました。花まつりは年に一度の豊作を願うお祭りです。色々な屋台が出るので毎年楽しみにしているのですが…まさか、今年は殿下と行くとこになるなんて。昨年の私が知ったら驚くことでしょうね。
・・・
バタバタと忙しない足音が聞こえると思ったら、勢いよく扉が開かれた。
「おい、殿下がパーティーで求婚されたという話はきいたか?」
「ああ、今大至急動いてところだ。まったく、予定にないことしやがって。これじゃ計画を練り直さないといけないではないか」
「お前の娘を王太子妃にするってやつだろ?」
「ああ」
王城の一室で、不穏な空気が流れる。走ってきた男はソファーに腰をかけ、部屋の主に話しかける。
「でもよ、財務担当大臣どの。これからどうやって動くつもりだ?」
「それは、まだ教えられないが…。いづれはお前にも手伝ってくださいもらうさ」
「えぇ…」
「なんのために側に置いていると思っている、今だって私が相応な立場を用意してやってるから好きに動けているのではないか」
「はいはい、わかりましたよ」
「ならいい、もうさがれ」
パタンとドアが閉まり、1人になるとこの国の財務大臣であるルベルト公爵は手元の報告書を握りつぶした。
「何が婚約者にならないか、だ。そう上手くいくと思うなよ。今まで婚約者候補たちを断り続けているからと油断していたが、これからは本腰を入れて動かないとな。そうだな、まずは…」
くしゃくしゃになった報告書に添付されていた王太子とルディの写真を片目にルベルト公爵は静かに腰を上げた。
高頻度での更新はできませんがのんびり完結まで頑張ります。
最後までお付き合いくだされば幸いです。
よろしくお願い致します!




