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断罪の時②

 すると、みるみる顔色が悪くなっていくリザード様と後ろのニーナ様。周囲の動揺も大きくなっていく。


 私はとりあえず『ご褒美』の前までで再生をストップした。


「いかがでしょう、リザード様。これでも心当たりはないとおっしゃいますか?」

「これは…その…。違うんだ!」

「何が違うのでしょう。私が犬ではないことでしょうか。それとも音声自体が偽物だと言うのでしょうか」

「くっ…。これは…これは…そう、ニーナが無理矢理俺を…」


 逃げられないことはもう分かっているはずなのに往生際がわるいですね。


「リザード様。この後の音声をここで流してもよろしいのでしょうか。せめてもの情けでここでストップしたのです。ニーナ様との逢引きの件、婚約解消を企んでいた件、どうか認めてください」

「それは…」

「これ以上、自分の首を絞めないでください」

「……」


 すると、壇上から拍手が聞こえた。その瞬間、周りが静かになる。そして、ロイド殿下がゆっくりとこちらに向かってきた。


「まさかここまで完璧な証拠を用意するとは。恐れ入ったよ」

「お褒めに預かり、恐悦至極に存じます」

「そんな堅い言葉はよしてよ、普通にして」


 楽しそうなロイド殿下をよそに、リザード様は正気を失っている。殿下はそんな彼に声をかける。


「リザード殿、もう言い逃れは出来ないだろう。早く認めたほうが自分のためではないのか」

「ですが…自分はルディのことを本当に大切に…」

「あの会話の内容を聞く限りではそうとは思えないのだが?」


 誰が聞いても殿下と同じように言うだろう。婚約者を犬扱いしているくせに、大切にしています、など通用するはずがない。


「もうよい。それではルディ嬢に続きの音声を流してもらうとしよう」

「それは!それだけはおやめください!」

「では、認めるのだな」

「…………はい」

「だそうだ、ルディ嬢」


 ロイド殿下のお力添えもあり、あの音声を流さずに済んだ。安堵で胸を撫で下ろす。


「ありがとうございます。それでは、婚約破棄を受け入れてくださるということで、後ほど我が家の者から慰謝料などについてのご連絡が行くと思いますので、お待ちくださいね」

「…わかった」


 もう覇気のないリザード様がこの場から逃げ出そうと歩き出したその時…


「ねぇ、まだ話は終わっていないよ?」


 ロイド殿下がリザード様を止めた。


「なんでしょうか…」


 振り返るリザード様にロイド殿下は悪い笑みを浮かべ、大きな声で告げた。


「リザード殿とニーナ嬢の婚約をここに認める」


 周囲だけでなく、私もサリーも目が飛び出るくらい大きく見開いて驚いた。いや、それよりも驚いていたのはニーナ様だったかもしれない。


「そ…それはどういう…?」

「いやな?婚約者を蔑ろにしてまでもお互いを思いやる2人の姿に深く感心したんだよ。だから、婚姻をまとめてあげようと思ってね」

「それは…」


 王族から認められた婚姻…すなわち、逃げる事はできない。これだけ大勢の前で婚約破棄を告げられて、逢引き時の会話を聞かれただけでも周囲からの信頼回復は難しい。


 それなのに、逢引き相手との婚姻を認められたことで、それが枷となり、貴族社会で生きていくことは絶望的になってしまった。

 本人達だけでなく、一族に影響が及ぶだろう。


「ほらニーナ嬢もそんなところに隠れていないで、こっちに来なよ。そして皆の者、2人を祝福してやれ」


 そう言うと盛大な拍手が起こり、2人は逃げることも隠れることも出来なくなった。しばらく拍手が鳴り止まず、次第に落ち着いてきた頃、ロイド殿下が口を開いた。


「これで、余興は終了だ。引き続きパーティーを楽しんでくれ」


 殿下の言葉で再び音楽が流れ始め、集まっていた人たちも散り始めた。


 私はすかさず殿下にお礼を言いに近寄ります。


「ロイド殿下、お時間をお取りくださりありがとうございます。お陰で無事に婚約破棄をすることができました」

「いいって、楽しかったよ。それにしても、あんなクズとよく婚約してたね」

「恥ずかしながら浮気現場を目にするまで、クズだということに気づかなかったのです…」


 私の言葉を聞き、殿下は楽しそうに笑った。


「あの2人の婚約は決定事項になったし、もうルディ嬢が困ることは起こらないと思うよ」

「ありがとうございます。その…あの瞬間…殿下が…悪いお顔をされていて…何を言い出すのかヒヤヒヤしておりました」

「あははは、びっくりした?」

「はい、とても」

「なら良かった」


 何が良かったのだろう…?


「ねぇ、婚約破棄したってことは、今は婚約者がいないんだよね?」

「…?そうでございますが…?」

「ならさ、私の婚約者にならないかい?」


 今度は驚きすぎて心臓が止まるかと思った。ロイド殿下の婚約者…?王太子妃?


「何かのご冗談でしょうか?」

「冗談なんかじゃないよ。ルディ嬢の行動力と、先程までの凛とした姿勢、それに君の真っ直ぐな瞳に惚れたんだ。どうかな?」


 顔が熱くなるのを感じ、同時に頭が真っ白になる。でも…後ろでサリーがニヤニヤしているのだけは見なくてもわかる。


「それは…」

「あ、すぐに応えてほしいわけじゃない。そうだな…明日からお昼でも一緒に食べないか?」

「…喜んでご一緒させていただきます」


 恥ずかしくて俯くルディを見てロイド殿下は満足そうに笑った。

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