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超合理科学主義への背徳者《イマロジー》  作者: 中学の物理
第1章 吉良一族《月の一族》
2/5

1.1 過去の罪と今の日常

「なんでだよ……」

 

俺は立ち尽くすことしかできなかった。


無慈悲なことに、無数の人がベッドに寝かされていた。そして、その中の一人である横倒れになっている自分の親友の顔に白い布が覆いかぶさっていた。ひとりとして例外はない。


 「第793回実験は終了になりました」


科学者(コントローラー)の無機質なボイスが静かな空間にこだまする。彼らは尊い科学発展の犠牲になったという。


許せなかった。でも、無力な俺には何もできなかった。ただ黙ってやつらの言いなりになることしかできなかった。


やがて、俺は親友の顔に覆いかぶさっている布を取った。そこに隠れているのは、自分の置かれた環境への哀しみに満ちた顔なのか、それとも助けに行けなかった俺や科学者へ憎悪している顔なのか。いずれにせよ臆病者の俺が親友の最期の痛みを刻み込む為に必要だった。


覗き込んだ時、俺は...



ピピピピ ピピピピ ピピピピ ピピピピ



目覚ましの音が部屋に鳴り響く。長針は5、短針は6を指していた。あんまり俺は寝起きの悪いほうじゃない。


ふぁーと一呼吸(ひとこきゅう)して立ち上がった。部屋にはくしゃくしゃに丸めた紙と筆や鉛筆が乱雑されていた。


階段を下りながら、あの日の出来事を反芻する。あの日から自分は何にも変わってないんじゃないか?能力(ジェネム)が強くなったわけでもなく、これといった行動を起こしたわけでもない。


台所につき、冷蔵庫から適当に具材を取り出し、慣れた手つきで4つ卵を割る。割り箸で卵を溶いてフライパンに流し込む。その間に適当にパンを焼いておけばあっという間に朝飯の完成だ。


サーと朝食を済ませて学校に行く。昼飯は学食だから問題ない。


もう一度自室に戻り、制服に着替えてリュックを背負い家を出る。


平和な日常だ。親友(あいつ)に顔向けできないほど。だが、それで許して欲しい。あいつへの(ひみつ)を背負う代償として。


ところで、俺は学校から遠くに住んでいるわけではなかった。むしろ近い方だ。


それなのになぜ早く行くかというと、俺には趣味というよりも日課が一つあった。


教室に着くと窓を開け空気を入れ換える。まだ朝のHRまでは1時間程度ある。


窓の前に立つと、鉛筆とスケッチブックを取り出す。そして描こうと思った矢先に不意に声が入った。


「おはよう。今日も風景画を描いているの松永君?」




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