<柴犬秀吉>
風が吹いて肌寒さで目が覚めた。
寝るときそばに干した服が渇いているか確かめようと服を干してあったところを見たらなんだか余分なものが服と一緒にあった。
茶色い毛玉……
これは……子犬?
何処から来たのか小さな柴犬の子供が干してあった服の上で寝ていた。
まあ、仮想空間の中でペットを飼うやつもいるし、そういう需要に答える為のものなんだろう。
気持ちよさそうに寝ている姿を見たらなんだか和んでしまいついなでてしまった。
何回かなでていると子犬も目を覚ましたようで大あくびをかました。
てっきり目を覚ましたら逃げ出すのかと思っていたが、そんな気配も無く思いのほか大物のようだ。
眠気を覚ましているのか、ぷるぷる頭を振っている姿が和む。
「おー。わんこ寝てたところ悪いな」
いつまでも素っ裸で居る訳にもいかないので、そっとどかして服を返してもらった。
着てみると子犬が寝ていた辺りが微妙に暖かい。
秀吉と草履のエピソードを思い出してしまった。
「ふむ、お前は秀吉だな」
犬の名前も決まったことだし、さて、このあとどうしようかと思ったら自分の腹がなった。
腹の音が気になったのか秀吉がこっちを見ている。
あー。そういえばしばらく食べてなかった。
とりあえずリンゴを食べてから考えよう。
ここ最近お世話になっているリンゴの木のところへ秀吉と一緒に歩いていった。
しかし、着いてみるとリンゴはもう残っていなかった。
考えてみれば、最近ネガティブモード全開であまり周囲に注意を払っていなかったが、リンゴの木の枝で腕を怪我した時に手に入れたのが最後の一個だったような気もする。
こまったなこりゃ。
グーグー鳴る腹を押さえていたら秀吉が少し先へ走っていって振り返る。
なんだか付いて来いと言っているように感じたので、どうせあてがあるわけでもなかったし付いていってみることにした。




