<降下作戦>
ナノマシンで構成された分解用ナノマシンは生物と同じようにある程度の自己修復機能を持っているが、大幅に欠損した場合全体の制御を維持できずに崩壊する。
これは突然変異を起こした現在のナノマシンでも変わらないはずだ。
もともとナノマシンは自然現象の模倣で作られた技術なのでそれぞれの構成素材が電場と力場を発生させ相互の結合力と情報ネットワークを構成して動作しているからだ。
このバランスが崩れるほどの欠損が出ると全体を維持することが出来なくなる。
具体的には30%程度を切り離すことに成功すれば切り取られた30%も残りの70%もそれぞれが自己を維持できなくなりただの素材に戻ってしまう。
ただし、時間をかけて少量ずつ切り離した場合は、相互の結合力と情報ネットワークを再構成してしまうのでこの限りではない。
つまり、どんな方法でもよいので短時間に30%以上を削り取ることが出来れば分解用ナノマシンを崩壊させることが出来るということだ。
船の人工知能は以下の決定を下した。
1.当初の予定通り惑星の地球化を継続する。ただし、その障害になると予測される分解用ナノマシンの排除を優先する。
2.自己複製機能を持ったナノマシンの使用は「この惑星に対しては」以降使用しない。
3.地球化に際してたりなくなるナノマシンに関しては星間物質を集めて作成後静止軌道から直接惑星表面に送り届ける。
4.現時点で残存する地表上の分解用ナノマシンに関しては、本船から投下する複製機能を持たないナノマシンによって排除を行う。
※ただし、投下するナノマシンの外見は地球種の生物を模倣し分解用ナノマシンとの識別を容易にする。
5.平行して降下艇を用い、地表で地球種の生物を生成しその生物としての繁殖力を利用しナノマシンの排除を行う。
6.全ての複製機能を持ったナノマシンの排除が確認された段階でその他の地表のナノマシンも自己崩壊させる。
これ以外の方法としては静止軌道上からの質量攻撃やパルスレーザの照射、反射鏡の収束率を調整しての熱量攻撃等が可能であるがそのどれもが惑星の地球化を妨げるので除外。
もっと局地的で周囲に被害の出ない方法があればそれを選択しても良かったのだが、静止軌道上からそこまで精密な攻撃は不可能と判断した。
プランの変更に伴い当初試算した地球化にかかる期間より大幅に遅れることになると思われるが、もともと期限設定はないので問題ない。
地表に降下させる降下艇にも周囲の分解用ナノマシンを排除出来るだけの武装を施した。
これにより、降下艇の半径1kmで遮蔽物の無い場所ならば分解用ナノマシンを排除出来るだろう。
降下艇の着陸地点はもともとの予定通りクレーター(現在は降雨により湖となっている)に存在する最大サイズの衛星の破片を選んだ。
ナノマシン用に地表の材料が利用できないので時間はかかるが再度小惑星や隕石を取り込み資材化した上で地球化を進める。
投下用の特殊な外装処理を施したナノマシンのシミュレーションを進めながら、降下艇の艤装と発進準備を開始する。
それに平行して監視衛星群のフェイズドアレイレーダーを利用し近傍空間で材料に出来そうな小惑星を探すことにした。




