<相互理解>
「変な生き物を見つけたにゃ!」
そう言ってミアが騒いでいる。
一体何を見つけたのか目をキラキラさせてここからでも相当興奮しているのが分かる。
しかし、さっきまで死にそうな顔でへばっていたのにもうあんなに元気になるとは。恐るべしネコ人間。
ジャントと一緒にやれやれと思いながら近づいてみると、その生き物は野原の端っこにぐったりして横たわっていた。
「おー。はじめてみるね。こんな生き物」
「(同意)」
ミアが見つけた生き物は、なんだか起伏の無い顔をしたほとんど毛が生えてないつるっとした肌の妙な生き物だった。
生き物の周りには折れた木の枝と、多分一度地面に勢いよく落ちたと思われる跡(野原の草がそこだけつぶれていた)がある。
すぐそばの木の上のほうの枝が沢山折れてぽっかり穴が空いてそこから空が見えるので、多分この木の天辺まで登ったか何かしてそこから落っこちたんじゃないかな?
「たぶん、その木の上から落っこちたんじゃない?」
と思いついたことを言ってみた。
「そうかもしれないにゃ」
腕を組んで何か考えてる「振り」をしながらうんうんと相槌を打つミア。
いつものパターンだとこういう時って何も考えて無いんだよねー。
「ジャントはどう思う?」
「(高いところ)(落ちた)(同意)」
「「おお!ジャントが珍しく沢山しゃべった!」にゃー!?」
久々にジャントが沢山しゃべって驚いたので2人ではもってしまった。
何時以来だろう?3節もジャントがしゃべるなんて。ジャントもこの奇妙な生き物を前に少し興奮しているのかもしれない。
この奇妙な生き物をもう少しくわしく観察してみよう。
「見た感じなんとなく動物よりも人間ぽいよね?」
「服?も着てるし多分そうだにゃ」
「(同意)」
2本足で立って歩けそうな体つきと、毛が無いかわりなのか全身を布で覆っている。
もしかすると、海に住んでいるというイルカ人間達みたいに毛が無い所為で皮膚が弱い生き物なのかな?
「何処から来たんだろうね?」
「うーん、私はこんな人間がいるなんて聞いたこと無いにゃ」
適当に話しながら、落ちてた枝で生き物をつついてみた。
「ところでこの生き物は生きてるの?それとも死んじゃってる?」
「ん?一寸確認してみるにゃ」
怖いもの知らずのミアがいきなりぺたぺた触って息をしてるかどうか確かめ始めた。
皮膚に毒がある生き物だったらどうするんだよもう…
ミアが触りまくった所為か、しばらくしたらその奇妙な生き物が変な鳴き声を上げた。
『うう、いてて・・・アリスの奴、着陸寸前に俺のこと落っことしやがって、なに考えてるんだ?』
「にゃ?気がついたみたいだけど、私達の事分かるかにゃ?」
なんだろう?話しかけるミアを見ていて何か違和感を感じるけど、それをうまく説明できない。
「生きててよかったにゃ。お前は何て名前かにゃ?」
『はじめまして、だな。ってアリスが居ないから通訳が…あいつ何処行きやがった?』
ミアは相変わらず変な鳴き声を上げるその奇妙な生き物に話しかけている。
ジャントも今この生き物に安心するようイメージを送っている気配がする。
「えっ!うそ!?」
『あー。こまったな何言ってるかわかんないや』
さっきから感じる違和感の正体に気付いてしまった。
この生き物は…生きてない?何もイメージが伝わってこない。
そこにいるのに居ないとしか思えない。
岩や木や水と一緒でそこにあるだけでイメージを受け取らないし返してこない!
「なに…何なのこれ…」
「(混乱)」
『そっちには俺の言ってることはわかってるのかな?まあ無理か…』
ミアはまだそのことに気付いてないようでしきりに話しかけている。
見た目が変わっているとかそういう次元の話ではない。この生き物(?)は根本的に何かおかしい。
本来人間同士なら、言葉を持たないもの同士でもイメージで最低限の意思疎通は可能なはずだ。
たとえ相手が動物でもはっきりしないまでも漠然としたイメージは送ってくる。
ジャントと子供の頃から遊んでる私はそのことをよく知っている。
仮にグレースの使いすぎでうまくイメージを送れない状態ならそもそももっと切羽詰った雰囲気をまとっているはずだ。
それに、そういう状態でもまったくイメージのやり取りが出来なくなるなんて事はない。
本当に、イメージのやり取りが出来なくなるのは死んでしまったときくらいだ。
でも、今目の前に居るこの生き物はその常識に当てはまらない。
これは「変」だ。
怖くなってしまいミアを連れてこの場を離れようと一歩踏み出した瞬間、足元を突き上げるような激しい揺れが私達を襲った。
『うおぅ。なんだこりゃ!?地震か?』
「なに?なんなの!?」
「にゃー!?」
ジャントも驚いたようでパニックを起こしてわけのわからないイメージを送ってきた。
踏ん張ってもうまく立っていられなくて思わず四つん這いになってしまう。
次の瞬間さらに強い衝撃が足元から…「地下」から突き上げてきた!
まさか!?
『うわっととと』
「ミア!ジャント!ここから離れよう!」
「(同意)」
「にゃ、わ、わかったにゃ、でもこの生き物どうするにゃ?」
まだ変な生き物に興味があるのかミアがぐずる。
私の予想通りならそんな暇ないのに!
「急いで!早く逃げないと多分これ蟹!」
そこまで言った瞬間、野原の真ん中を突き破るみたいに大きな何かが地下から顔を出した。
蟹は私たちを食べることを諦めきれずに大暴れして、洞窟を突き崩してここまで追いかけてきたみたいだ。
『うひょぉぉぉ、地上にはこんなヤバイ生き物までいるのかよ!?これ、モンスターじゃなくて普通に生き物だよな?』
せっかく地上に出られたんだから、私達にこだわらないでもいいでしょ!?っと思ったが、もう蟹は私達を食べる気満々で他のものが目に入ってない。
激しい飢えのイメージをぶつけてくる蟹はまだ半分以上地面に埋まった状態で重すぎる身体を上手に持ち上げられないようだ。
今のうちに逃げないと!
『置いていかないでくれーーー!というか、アリスどこいった!お前こういうときのために付いてきたんじゃなかったのかよ!?』
慌てて逃げようと動き出した私達だったが、なぜか一緒にさっきの変な生き物まで付いてくる。
怖いので出来れば別行動して欲しかった。
『はぁはぁ、ひぃはぁ。は、走るのは苦手、というか、なんだこの状況はーー!?』
ジャント、ミア、私、変な生き物の順で必死になって野原から木の生えているほうへ逃げる。
変な生き物はあまり足が速くないようで一番最後をよたよたと付いてくる。
木が少しでも蟹の足を止めてくれればいいけど、暗いところで見たときは分からなかったが、あれは…5mではきかない位大きい。
あんなサイズの蟹だともしかすると木や岩でも障害物にはならないかも。
『アリス、助けてくれー!!』
『仕方ないですね。せっかく古典を紐解いて出会いの演出を行ったのですが…』
奇妙な鳴き声に答えるようにもうひとつの鳴き声が聞こえた。
次の瞬間、蟹がいるほうで「ずぅん」という腹に響く何か重いもの同士がぶつかったような音がしたと思ったら、直後「ぐぉりぼりっ!べりっばりっ!」というような気味の悪い音を立てて何かが砕けるような剥がれる様なあまり聞きたくない音が聞こえてきた。
何が起こったか確認するのも怖かったのでただひたすら逃げた。
いつの間にか後ろについてきていたはずのあの気味の悪い変な生き物はいなくなっていた。
もしかすると、逃げ遅れて蟹に食べられてしまったのかもしれない。
どうにか逃げることに成功した私たち3人は何度も繰り返された緊張状態の所為で落ち着いて野宿するきにもなれず、夜通し歩いて最寄の集落まで逃げた。
◇ ◆ ◇
その後、あの野原には行っていない。
あそこに行けば何があったのか分かる手がかりが残されているかもしれないが、それよりも近づくこと自体が恐ろしくてとてもじゃないが行く気がしない。
でも、良い事もあった。
大変な経験をした私達はどんな冒険をしても冷静に対処出来るようになり、今では自他共に認める一流の冒険者となった。
◇ ◆ ◇
「アーリースー…」
ずいぶん酷い目にあったと思いながら、われながら恨みがましい声がでる。
「はい、なんでしょう?」
叩き潰した「蟹」をとどめとばかりに踏みつけた姿勢の外部ユニット追加パーツを切り離し、身軽になったアリスが地上に降りてこちらを振り向く。
「地上にこんな危険な生物が居るなんて聞いてないぞ…」
「危険な生物が居るかどうかは今回の目的とは関係ありませんので」
しれっと、そんな風に答えやがった。
「そりゃまあ確かにそうなんだが、さすがにいきなり死にそうな目に遭うとは思わなかったぞ」
「それと、ひとつ気になることを言っていた様だが?」
諦めを含んだ調子で質問してみた。
「はい、なんでしょう?」
「出会いの演出がどうとかってなに?」
これだけは聞いておかねばなるまい…
「言葉の通じない異星人同士が共通の危機を乗り越えて友情を育む名作が…」
「そういう演出はいらないから!!!」
自分が望んでいたのはそういうのじゃないから!!
ほんとにこの宇宙船の人工知能はどっかおかしいよ!助けてえらい人!!
そんなことを思いながら、疲労の中意識がブラックアウトした。
◇ ◆ ◇
最後の地球人類は、まずアリスとの相互理解を深めるところからはじめたほうがよさそうでした。
@おしまい@
<相互理解後書き>
これで、余禄も完了です。
初めて書く小説もどきでしたが最後までお付き合いいただきありがとうございました。
しかし、思いのほかロボは活躍しませんでした(´・ω・`)
そして、いつもどおり盛り上がらず低空飛行で安全に着陸。完璧だ!
⊂(゜Д゜⊂⌒`つ≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡
では、又機会があればどこかでお会いしましょう。
(数日前から新作も始めてますのでよければそちらもどうぞ)




