<倒木が枕>
朝になったらおなかの上で秀吉が寝ていた。
鼻をすぴすぴ言わせて寝ている。
起こすのもかわいそうだったのでそのまま考え事をしてみる。
あの黒い奴のギザギザの口や、後から現れたテディベアもどきの長い爪は凶悪に見えた。
そのどちらを相手にしても勝てる自信がない。
そもそも格闘なんてしたことすらないのだ。
この世界には最初に初心者が倒して経験値を稼ぐスライム的な敵はいないのか! と言いたい。
昨日の様なアクシデントが再び発生する可能性は今後必ずあるだろう。
これが違法ゲームの世界だった場合、場合によっては内部で死ぬとそのまま病院のベッドで寝ているはずの本体も死ぬ可能性がある。
強制的なログオフが可能ならとっくに行われているだろうし、それが行われていない現状、なんらかの理由でログオフ自体を制限されているのではないか?
無理やりログオフすると死ぬとか、な。
それを考えると安易にこの世界で死んで見るのは得策ではないだろう。
どちらにせよ最悪のケースではこの世界で死ぬこともあるだろうが積極的に痛い思いをして試すような話でもない。
それと、以前見かけた湖の中央に見える巨大な岩の天辺にある人工物が気になる。
何らかのアイテムがそこで手に入らないか行ってみる価値はあるだろう。
そこまで考えたら秀吉がもぞもぞと動き出して起きたようだ。
「おはよう秀吉」
やさしく頭をなででやりながらあいさつしてみる。
話す相手がいない現在、犬相手でもつい話しかけてしまう。
アニマルセラピーという言葉を思い出したが、確かに効果はあるようだ。
よし、今日はなんとかして湖の岩に登ってみるか……。
そう考えながら、まずは食べるものが無いかなるべく森に入らない場所で探す俺だった。
森が怖いんだよ! ほっとけ!
どうにか何個かの果物を手に入れて空腹を満たした。
秀吉はいつのまにかカエルを捕まえてボリボリ食べていた。
ワイルドだ……。
さて、次に問題になるのがどうやって湖を渡るかだ。
ぱっと見でも何百メートルかは岩までありそうだ。
運動不足の俺は自慢じゃないがそこまで泳げる自信はない。
特にここは湖だから海と違って浮力自体が低いので泳いでわたろうと思うと相当な体力が必要だろう。
浮き袋かそれに近いものでもあれば話は変わってくるのだろうが、何かそういったものはあるだろうか?
木を利用してそれに捕まってバタ足していけば良いんじゃ無いか? と思いついた。
それにはまず、都合の良い大きさの倒れた木、出来れば乾燥している物を探さないと…。
昼までかかってどうにか丁度よさそうな倒木を手に入れた。
それを引きずって湖まで来るのに一苦労。
今日はもうここまでにして明日にしようかと思い始めている自分が居た。
よく考えてみたら、午後から泳いだとして、仮に夜までに岩を登れたとしても何もなかったらそこで夜をすごすことになる。
それどころか、暗くなってもまだ岩を登りきれてなかったら一体何処で寝るんだ?
その辺全然考えてなかったぞ。
思い付いて良かった。
やっぱり明日の朝ミッション開始だな……。
そう思いながら持ってきた倒木を枕がわりに今日はもう寝ることにした。




