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第4話 真面目に闘うかバーカ!


巨大な鉈と棍棒がぶつかり合う

途轍もない衝撃波と爆音と建物が軒並み倒壊していく

木々は吹き飛び地面は粉々に砕かれ巨大なクレーターが幾つも生成される。

ユーはドラコマニンやバンプのように手を抜いていない。

いや、厳密には()()()()()()が正解だ。

それ程までにラザインの振るう鉈から繰り出されるパワーは凄まじいものだった。

Sランク盗賊団に指定され自身もSランク賞金首として名を馳せていたドラコマニンの斬撃は建物を切り裂くと言っても切裂けたのは()()の建造物のみだ。


だが、ラザインの放つ斬撃は余りの速度に真空波が発生し鉄筋コンクリートで出来た建物ですらバターのように容易に切り刻んでいく。

だからこそユーは建物内に隠れることができず壁伝いに多方向からの高速攻撃を仕掛けることしか出来なかった。

だが、ラザインの無差別攻撃は足場となる建物を全て倒壊させていた。


「【鮮花繚乱】」


桜の花弁を象った魔力が咲き乱れ桜吹雪のようにユーの動きとともに暴れ狂う

ユーはクレイモアが教えてくれた【鮮花剣術】を行使するが


「花びらの剣術は俺には通用しないのだ!」


咄嗟に状態を仰け反らせ大振りな一閃を回避するがユーのキュイラスが鰹節のように削がれる。


『最後に手合わせしたときよりもパワーと魔力操作が上がってる。一応、これフォースキュイラスで昨日、クレイモアが返してくれた勇者パーティーにいたときに使ってたやつなんだけどなぁ』


ユーはキュイラスを外し投げ捨てるがその隙きを待っていたと言わんばかりにラザインはユーに向かって全力で鉈を振り抜く。


「きゃあ!」


完全に油断していたユーは咄嗟に混紡に全力で魔力を通しガードするが棍棒はラザインのパワーに耐えきれず崩壊すしユーはそのままの勢いで瓦礫の山に背中から思いっきり叩きつけられる。


「ユー・・・・ガッカリしたのだ。勇者パーティーにいた頃はあんなわかりやすい隙を作りそれを突かれるほど弱くは無かったはずなのだ!明らかにユーは弱くなっているのだ」


砂埃の向こうからはユーの返事は聞こえない。

ラザインは大きなため息をついてその目には軽蔑の色を宿して地面に転がっていた槍を拾い上げユーの居るはずの場所に照準を定め


「弱者は死ねなのだ」


投擲した。


             ✖ 


完全にラザインのことをナメていた

頭の足りない脳筋プレーしか出来ない大馬鹿野郎だと思っていた

だが、それは間違いだったようだ。

あいつはさっきのおっさんとバンプさんも強いほうだと思うが奴は生物としての()()()()()

そういえば思い出した【憤怒】の魔王討伐のために魔王城の正面からアイツだけを単騎で突っ込ませ私達は王座の間に直行する作戦を予定通り実行し

王座の間に着いた一分後に王座の間にあいつは顔を血で真っ赤にして笑いながら現れたことを・・・・


「ユー・・・・ガッカリしたのだ。勇者パーティーにいた頃はあんなわかりやすい隙を作りそれを突かれるほど弱くは無かったはずなのだ!明らかにユーは弱くなっているのだ」


まあ、確かにラザインの言う通りだ。

私は全盛期より弱体化している


「弱者は死ねなのだ」


え!?さっき死ねとか言った?

私、死ぬの!?

ウイスキー飲んでないのに!?


「ふっざけんなああああああああああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁあ!」


私は瞬時に【空間収納】ハエたたきを取り出し音速レベルで飛んできた槍を全力で叩き落としあのバカにお返ししてやる!


「テメェが死ねよ!脳筋野郎ッ」


ガキィンッ!


私は無理矢理瓦礫から抜け出す。


             ✖


投げた槍が瞬時に返ってきた事にラザインは驚かされた。

そして、あのケル譲りの覇気のある口の悪さが戻ってきたことにラザインは口角が激しく釣り上がった。

気付くとラザインの鼻先にユーが肉薄していた

ラザインは瞬時に鉈を振り上げ対処するがそれはユーには当たらなかった


「残像」


「其処なのだ!」


再び背後に更に早い速度で振り抜くがそれも当たらずラザインの背中にはユーの体重が掛けられる。


「真面目に正面から闘ってやるかバーカ!だから、お前は私にいつも勝てないんだよ」


「ナメるなぁ!」


「それも残像」


何度もラザインは鉈を振るうがその全てはユーには当たらず


「残像」

 

「残像」


「残像」


「残像」


「残像」


「残像」


「残像」


「残像」


「残像」


「残像」


「残像」


「残像」


と言われ続けるだけだった。


             ✖


残像祭りはまだ続いてるんだなこれが


「はぁ、はぁ、こ、こ!こ、コレで」


肩を激しく上下させ体から湯気を蒸気機関車のように吐き出し体中から滝のような汗を流し赤く発光していた目は今は光を失い虚ろな目にはなっている。

ラザインは最後の力を酒瓶の底に残った酒をコップに無理やり出す様に振り絞り鉈を振るおうとするが流石に約1t近くある鉈は持ち上げることができずに逆に鉈に足を絡めてしまいその場に力なく倒れ込む。


「よっと」


ラザインの体を両手で受け止めゆっくりと地面に置く。

そして最後の仕上げに


「ユーちゃんデコピン。今回も私の勝ち」


「・・・・・うぅ」


ラザインの目が不服そうな目をしているので取り敢えず旋毛にデコピンしグリグリと旋毛を押す。


「ハゲろ」


「やめるのだぁ」


完全に動けなくなったラザインを背負い私はその場をあとにする。


王都に戻ってきた私は取り敢えずギルドにドラコマニンの頭を届けたあとはケル達に動けないラザインを引き渡したかったが

ケルに『ごめんユーちゃん。今から大会議する予定だから2時間ほど預かってくんない?』

此処までは良かった一時間金貨2枚はラザインのお守りをするだけで高収入は確実なので快く引き受けたが何故か私の自宅兼店舗の自宅の方でラザインは昼飯をたかっていた。

マスターがホテルだと可哀想だから連れてこいと言ったからだ

因みにラザインだけで食費が凄いことになって勇者パーティーの活動資金がキツくなった時期もあったので多分、ケルは食費を少しでも浮かせたいのだろう。


「はん!あーん!モグモグ、はん!シャキシャキ」


「ユーこの子が言ってた子か」


「そうだよ~この子はラザインっていって勇者パーティーにいた頃の仲間」


「まるで食べ盛りの子供みたいだなぁ」


「まぁ一応、この子まだ14だからね」


「なるほどねぇだから」


「ますた!おかわりなのだ!」


ラザインは丼をマスターに渡すとマスターは嬉しそうに微笑みながら一度に20升を炊くことのできる業務用炊飯器から米をよそってラザインに渡すとすぐに食事を始める。


「懐かしいな~お前達が駆け出しの頃はよく家に集まって飯を食わせてやってたか」


「本当にありがとうねあの時は」


「仕方ないだろ。装備品を揃えるだけでも金が掛かってクエストをいくらクリアしても金が消えてくんだ。せめて飯くらいは支援してやるのが親であり国民の勤めってもんだ」


私達はパーティーを組んで駆け出しの頃は装備が整ってなくて私、ケル、ランスの3人で貯金を切り崩しながら国からの援助金でやり繰りしていたが武器の保険や生命保険の支払いなどで金は増えるどころかマイナスになり食べるものにも困っていたときに朝昼晩3食と寝床を用意してくれたのはマスターだった。

その時のマスターも今のように笑顔だった。

本人曰く食べてる人達の笑顔を見るのが好きで料理人になったと言っていた。


             ✖


「ごちそうさまなのだ!」


「まじかよ・・・・唐揚げ、トンカツ、ヒレカツ、白身魚のフライの盛り合わせ10人前、鮭の塩焼き丸々一匹、米20升、味噌汁1リットル、ラーメン5人前、焼きそば5キロを平らげただと!?」


「これが勇者パーティー1の大食漢。通称【暴食】のラザインだよマスター・・・・これで体重が増えないとか羨ましすぎる」


私とマスターは私の戦利品であるワインを飲みながらブルーチーズをクラッカーにトッピングしたつまみを摘む。

因みにラザインは酒はまだ飲めないのでぶどうジュースで我慢させてる。


『ユーちゃん、ユーちゃん聴こえる?』


『何どうしたん?ケル』


ケルからの【思念波】を私はキャッチしケルと会話を始める。


『単刀直入に言うね会議が長引くから一日預かってお願い!明日、フィールド君に迎えに行かさせるから』


『分かったよ確認取るから。ちょいまち』


私は【分割思考】を使用しマスターに会議が長引くのでラザインを一泊させてほしいと言うケルの旨を伝える。

ついでにラザインにも伝えとく


「いいけど?」


「ラザイン今日、泊まりだって」


「沢山、ご飯食べれるのか?」


「おうッ沢山食っていいぞ!」


「泊まるのだあ!」


「私、少し外にいるね」


私はそう伝え外に出る。

夏を感じさせる温く湿気を含んだ気持ち悪い風が吹き抜け再び【思念波】を繋ぐ


『お待たせ』


『どうだった?』


『オッケーだってさ本人もラザインも喜んでるよ』


『ごめん・・・・本当にありがとう』


『別にいいよ私達の仲じゃん』


『ユーちゃん・・・・貴方が幼馴染であり親友で良かった』


『私はケルが親友であるお陰で振り回されてるけどね』


『満更でもないくせに♪ケホッケホッ』


『風邪には気を付けなよケルは体が弱くて()()がいるんだから』


『フフ、肝に据えとく。ごめん、もう時間みたいだからおやすみ』


『ん、おやすみ』


私が【思念波】を切る直前にケルが一つの言葉を私に投げかけた。

その後はブツンッ!という音を最後に【思念波】は途切れた。

私は手摺に体を預け天を仰ぎ右手を顔面にベチンッと勢いよく置き


「ハァァァァァァァァァァァ・・・・・」 


大きなため息をついた


その後、部屋に戻り飲んだワインの味は不思議とウイスキーやスピリタスよりも美味くいつもより3割増し位にアルコールを強く感じた。


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