楽の感情
「う〜ん
そろそろ飽きたしこれからどうしようかなぁ」
そう言いながら
崩壊した町をのんきに歩く少女
誰にも見られないことをいいことに
考え事を大きな声に出しながら歩く
街を壊した張本人
街の領域から出そうになった時
何か閃いたような顔で言う
「あ そうだ!
家に帰ろう!
お兄様も成長した私を褒めてくれるよね!
先生も愛を向けたら喜ぶって言ってたし!」
そう無邪気な声で言う
少女は後ろに広がる惨状には目もくれず
先生に感情という名前を教えてもらった街
そして 生まれ故郷で少女が大好きな兄がいる街に足を向けた
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その街に帰る途中
旅の途中で少女が立ち寄り
その美しい景観を今はもう失った街々を巡りながら
歩いていく少女は忌み嫌われる者であると
人間ではない紛い物であると
見た者にそう再認識させるに十分である
そうして自分の旅の軌跡を基にして
故郷の街に戻ってきた少女は
街で一番大きな屋敷に向かっていく
玄関から入るのかと思いきや
裏手にまわり
目の前に広がる
通常の光の世界とは
閉ざされた闇の世界へと繋がると
錯覚させる階段の向こう側へと
降りていく
少女がたどり着くのは
闇に包まれた地下室であり
本来なら出ることも叶わないような
強固な鉄に囲まれた
少女のための特別な牢獄だ
少女のその入り口を閉めるのに戸惑っている
様子は普段から外に出ていないと思わせる
そして少女はいつもの位置に戻ってきた
そこでいつも思っていることを考える
「お兄様会いに来ないかなぁ・・・」
恋をする少女のように
手を胸のところに持っていき
祈るように
そして 恍惚とした表情で
いつまでもいつまでも
ずっと 少女の愛する
理想のお兄様を待っている
少女が記憶するのは
周りの大人と同じように
”化け物”と呼んで来ない
心優しい少年である
優しい笑顔で
少女の闇を振り払った
その少年は5年前ほどから
少女に会いに来なくなった
少女がこの牢獄に入れられた
少し前にその少年の最後に会いにきた時の言葉が気になった
だから感情という物に興味持った
その「裏切り者!」という
少年の悲痛な叫び声に少女は今も
首をかしげる
ずっと傾げ続ける
その少年がいつもの昔と同じ
あの優しい笑顔で会いにくるのを
待ちながら・・・・
少女は知らない
少女のこの状況も
この特別製の牢獄も
全てはその少年が
用意した物だということを
そのことを知らずに
ずっと待ち続ける
その少年が青年になり
成長しても少女に会いにくることなど・・・
・・・・・なかったはずだった
少女はその暗い空間で
しっかりとその姿を捉える
成長したその顔には
怒りの感情が
浮かんでいるようだったが
少女がお兄様とよび
尊ぶ少年の面影があった
少女はその牢獄の小さな
窓から「お兄様」と
嬉しげな声色で呼びかけた
そろそろクライマックスです
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