喜びの感情 2
鼻歌を歌いながらスキップしている女は
周りからのなんだこいつ・・・?
と言うような視線にも気づかず
夢中で歩いているようだ
そこに話しかけるのは
「ねぇ どうして?」
そう話しかけるのはこの物語の主人公の少女
答えるのは先ほどまでご機嫌で
今は進行を邪魔されて少し不機嫌になった女
「何よ?何がなの?
今 少し不機嫌になったから
質問なら答えてあげなくもないわよ?」
少しではなさそうだが
答える気があるのは普段と違って機嫌がいいからであろう
「どうしてあなたはそんなに喜んでるの?」
少女がそう言った途端
先ほどまで無表情だった女の顔に笑顔が戻る
「あら!あらあら!
何よ そんなことが聞きたかったの!?
教えてあげなくもないわ!」
少女はこの人はなんでこんなに婉曲に物事を言うんだろうと
首を傾げながら
「教えて」と言う
「ええ 詳しく教えてあげるわ!」
と言って
女は
少女をカフェの中に連れて行く
店員に案内されて席についた
瞬間にマシンガンのように
女の口から言葉が発されていく
曰く 私は大商会の娘であった
曰く 好きな男性がいた
曰く その男性にはずっとまとわりつくクソ猫がいた
曰く だから 今日そいつをさらって雇った男たちに襲わせ
父親に言って男性と婚約させてもらった
だから私は今喜んでいるのだと
馴れ初めから今日に到るまでを
まるで呪文や毎日どう説明するか考えていたかのように
するすると顔を赤らめながら言う女は
なるほど確かに商人の娘だと言うほかなかった
少女は目があっただけで相思相愛という関係になるのか?
と疑問に思ったが
今はそんなことよりも喜びの感情だと思い
さらに質問した
「なぜ それでうれしいの?」
女は唖然とし 少しの疑念を含めた顔で言った
「あら?聞いてなかったの?
私は・・・」
「そうじゃない
なぜ その男の人と婚約できて嬉しいの?」
「あら そんなの簡単よ
愛ですわ!」
「・・・愛?」
「あら?あなた恋したことないの?」
「愛ってなに?恋ってなに?」
少女は新たな感情かと思い
身構える
「そうねぇ
あなた ずっと頭の中で考えている人とかいないの?
その人に対する気持ちっていうのが恋で愛よ」
少女の心に光がさす
ずっと考えている人は一人しかいない
お兄様だ!と少女は顔を緩める
「あら いるのね!
いいじゃない!」
少女は思った
この女の人は私にわかりやすく
感情について教えてくれる!と
少女も女も互いの歪みに気づかず
話し合う
また今度会うことにして
少女は次の日が来るのを楽しみにする
1日目は
消化不良になった
喜びの感情について
2日目は
悲しみについて
3日目は
怒りについて
4日目は
・
・
・
・
数日経つと少女は
大量の感情の名前について
よく知るようになっていた
ただ よく理解ができなかった感情もあったが
愛などの感情はわかりやすかった
心の中のお兄様について考えれば良いだけなのだから
そうして少女はもういいかと思うようになっていた
女からも体のいい文句として
感情については実戦練習として
旅に出てはどうかと言われた
少女はもちろんそれが文句であると気づかなかったが
なるほどとは思った
そして 気まぐれで
この人は殺さないでおこうと決め
旅に出ることにした
「それじゃあね」
「行くのね?気をつけてね?」
と あまり感情のこもっていない送り出し文句であったが
少女にはしっかり届いたようだった
そして 少女は意を決したように喋る
「最後に質問いい?」
その言葉にギョッとしながら女は
「いいわよ」と答える
「私がお兄様を愛していたら
お兄様は嬉しい?」
女はやけくそのように答える
「当たり前じゃない!
あなたに好かれるなんて
一般人でも嬉しいわ!」
女としてはどうでもよかったので
送り出しの言葉と同じく
こちらも全く心はこもっていなかったようだが
少女は思うような返事が聞けて嬉しかったのか
満面の笑みで「じゃあね」と言ってカフェから出て言った
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