9.魔王を追い出す
・今回のお話に登場する人物【魔王、賢者】
「おい魔王ー」
「む、何だ賢者」
本日はゲリラ豪雨。短期決戦サバイバル日和な昼下がり。
勇者パーティーの賢者はゴブリンゴッドの迷宮内で魔王に話し出した。
「勇者パーティーから魔王を追い出すってのはどうなんだろうか?」
「ほう」
魔王の眼光がギラリと輝く。
ついにこの時が来たかと期待しているかのようだった。
「勇者達が魔王城に乗り込み、一大決戦が始まるかと思えば賢者、お前が良い考えがあるとしゃしゃり出てきたのが始まりだったな?」
「ああ、まさか魔王を勇者パーティーの一員にできるとは思わなかった……いや、マジでごめん」
「ごめんで済んだら魔王も勇者も要らないのだぞ」
「いや本当すみません、マジすみません」
平謝りである。王様もこれマジ? と驚き、国どころか世界中を悩ます大問題。
今や、賢者は世界一愚か者のレッテルを張られる一歩前寄りの前傾姿勢である。
「追い出すも何も、抜け出せるものなら望むところだ」
「まあそう言うなって。魔王が勇者パーティーにいることで様々な恩恵がだな」
「貴様、我を追い出すのではなかったのか?」
賢者はマイペースに魔王がいることのメリットを挙げていく。
世界の問題より自分の趣味を優先する。まさにマイペース。いや、ただの自己中。
「まず戦力として申し分ないじゃん?」
「我を誰と心得る。魔王の力が弱い訳がなかろう」
「それに魔王軍が実質的に瓦解して、その残党にしても魔王がパーティーにいるだけで相手が萎縮しちゃって能力が半減するのはありがたい」
「幹部でも相手でなければ我にとっては児戯に等しい」
子供の玩具にはコレ!
勇者の木剣は各町村の大工さんへ依頼しよう。
この物語は勇者パーティーの冒険を見守る精霊達の提供でお送りしておりません。
「ただ、やはり魔王がいることでデメリットも結構ある」
「教会、か?」
魔王軍を悪しきものとして浄化することを信条としている教会各所から見たら魔王が勇者パーティーに所属している現状はいかんともし難い。
「その通り。魔王を連れて教会内部に入ることができない為に教会で回復や蘇生ができない縛りプレイ状態となっている」
「誰かさんの所為でな」
「それはともかくとして、もう一つ重大な問題が聖女様だ」
さりげなくない方向転換を行う賢者。
ただし魔王が仲間になったことで聖女の機嫌が最悪な状態なのは確かである。
「この前も回復魔法と見せ掛けた浄化魔法で我を亡き者にしようとしてきたな」
「ハハハ、流石は聖女様だな」
「笑っている場合か」
もはや笑うしかないじゃんと開き直る賢者に苛立つ魔王。
馬鹿と天才は紙一重なのかもしれない。
「敵味方に恐れられる頭のおかしい魔法使いがいると聞いていたが、まさかこれ程とはな……」
「そう褒めてくれるな」
「褒め言葉として受け取っている時点で頭がおかしい」
世界的大問題を引き起こした張本人は頬を掻きながら照れている。
魔王からしたら賢者は勇者以上に警戒すべき相手だった。
・今回のお話に登場した人物紹介
魔王……ご存知ラスボス。この話がゲームなら進行不能になる重大なバグである。
「仲間になりたそうな目をしていた訳でもないのだがな」
賢者……勇者パーティーの司令官気取り。とんでもないことをしでかす。
「やっちまった」
ひとまず完結。




