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32、ココア

「くしゅんっ」


 ベティはくしゃみをした。

「おや、寒いですか? もうお屋敷の中に入られた方が良いですね」

 クライドはベティの肩に、自分が羽織っていたマントを掛けた。

 ベティはクライドの香りに包まれて、頬が赤くなるのを感じた。


「クライド様が寒くなってしまいますわ」

 ベティがマントをはずそうとすると、クライドが優しくベティの肩に手を置いた。

「私なら大丈夫ですよ」

 二人が話していると、フローレス家のドアが開いた。


「ベティ様、クライド様、お帰りなさいませ。劇は楽しめましたか?」

「ロージー、とても楽しかったですわ! ロージーも一緒だったら良かったのに」

 ベティは両手を握りしめて、目を輝かせながら言った。

「ゆっくり楽しめましたよ。ありがとう、ロージーさん」

 クライドはロージーからショールを受け取った。そして、ベティの肩からマントを外しショールを掛け直した。


「それでは、今日はもう遅いのでこの辺で失礼致します」

 クライドはベティとロージーにそう言うと馬車に戻っていった。

「素敵な夜をありがとうございました、クライド様」

 ベティは馬車に向かって手を振っている。


 馬車が見えなくなった頃、ロージーは言った。

「ベティ様、お屋敷へ入りませんか? もうずいぶん冷えていますよ」

「そうですわね」

 ベティとロージーは屋敷に入っていった。


「ただいま戻りました」

「お帰りなさい、ベティ。もう遅いから早く着替えておやすみなさいな」

 母親の言葉にベティは首を振った。

「とても感動的な劇でしたのよ。まだ眠れそうにありませんわ」


 母親は頷くと、ベティに言った。

「それでは、着替えたらココアでも飲んで落ち着いたら眠ると良いわ」

「そうしますわ」

「それじゃ、着替えを手伝って、その後ココアを作ってきますね」

 ロージーはベティの部屋までついていった。


「とても楽しい劇でしたけど、ロージーにはまだ早いかもしれませんわね」

「どういう意味ですか?」

「大人向けのラブロマンスの部分がありましたから」

 そう言ってベティは、ほうっと息をついた。


「それでは、ココアを作って参ります」

「ありがとう、ロージー」

 ロージーが部屋を出てから、ベティは部屋の隅の毛糸の山を探り始めた。

「今日のお礼に、クライド様にマフラーを編んで差し上げましょう!」


 ベティは一人呟きながら毛糸の山から、クライドの瞳と同じ深い青色の毛糸を選び出した。「この色なら、きっとクライド様に似合いますわ。喜んで下さるかしら?」

 ベティは同じ色の毛糸を3つ机の上に並べた。

「明日の朝から編めば、二、三日で編み上がりますわ、きっと」

 ベティがニコニコとして机にのせた毛糸を見ていると、ドアをノックする音がした。


「ベティ様、ココアが入りました」

「ありがとう、ロージー。今日は遅くまでお疲れ様。もうおやすみなさい」

「はい、ロージー様。おやすみなさいませ」

 ロージーはココアの置かれたトレーをテーブルに置こうとして、毛糸に気付いた。


「これは?」

「明日から、マフラーを編もうと思っておりますの」

「そうですか」

 ロージーは毛糸を横へ並べ直し、ココアをテーブルに置くとベティの部屋を出て行った。


「そうですわ。ロージーにも茶色いマフラーを編んであげましょう。喜んでくれるかしら?」

 ベティはココアを飲みながらマフラーの柄を考えた。

 ココアが空になったのでベッドに入って目を閉じる。

「今日は素敵な日でしたわ」

 ベティはクライドと見た劇を思い出し、なかなか寝付けなかった。

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