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マテリアルドライブ~元生産職が行く英雄種蒔き旅~  作者: ユーリアル
第一章

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008.「ベテラン無双、ただし格下に限る-3」

 

「……帰ればよかったかな」


 坑道探検の後半は俺の後悔で始まった。足元には物言わぬ躯、何のという必要もないほどの数だ。そう、ゴブリンはまだまだいたのだった。


 命を奪っているという感覚が自分を痛めつけるよりも早く、角を曲がっては遭遇し、小道があれば不意打ちが来る。移動した先にまた出てくる。一体何匹いるのか、こんな状況であの子達以外にも誰か入っていたらただじゃ済まない。


(街じゃここの話はほとんど聞かなかった。もしもゴブリンが前からなら、もっと話があるはず。ということはごく最近?)


 数値上はダメージは無いが、疲労と思われるものが蓄積されていく中、1つ1つ、状況を整理しながら息を整え、落ち着きを取り戻そうとする。やはり暗いというのはそれだけで厳しい。


(まず、取り付かれないこと。これからだ)


 想像してみて欲しい。恐らくはダメージは受けないとわかっていても、何匹もの何かに胸元までよじ登られる感覚を。いくら仮想現実だとわかっていても襲い来る嫌悪感。ゲームでも、そういったギミック、トラップの類は色々なゲームで存在していた。場合により年齢制限が入っていたような記憶がある。


 ましてや、今は現実と思わざるを得ない状況下である。怖いからと強制終了はできないのだ。


(恐怖を忘れるな、恐怖に麻痺するな! 恐怖は……隣人だ)


 かつて出会った、尊敬するMDプレイヤーの1人は強敵との戦いでのコツについてそう語っていた。どこかで聞いたことがあるから有名な話なんだろう。


「動きは単純。しっかりとフェイントを混ぜ、一撃必殺!」


 口に出して、動きを確認しながら一撃一撃を落ち着いてぶち込んでいく。数をこなすうちに、大体返り血がひどい部位なども体が覚えてきたようだ。段々と、リアルだが自分の糧となる存在、そう思える部分も出て来た。


『ギヒィッ!!』


 浅く入ったゴブリンの1匹が、武器の効果である電撃の追加攻撃を受けて痙攣する。その姿にいくつもの感情を交えながら、しっかりと止めを刺す。慈悲というよりも、うめき声は聞いていて良い気分になれるものではないからだ。


 ある程度、群れを倒したところでその体をあさり、硬貨を持っていないかとか、倒した証明になりそうなものを探す。当然のことながらゴブリンですなんて名札をつけているわけでもなく、余り気持ちのいいものではないが、その耳を切り取って別のタブに放り込んでいくことにした。


 アイテムボックスに入るということは、耳という部位がただの身体的部位ではなく、アイテムと扱われているということになる。ゲームだと、【ゴブリン討伐数 4/20】みたいな表記だったから、特にアイテムは無かったのが痛い所だ。


 多分、これで合ってるとは思う。色んなゲームでも、使い道のない部分が討伐証明だったりするしな。牙や毛皮が有効そうな、アイテム名になっていたような奴らはその部位がアイテム化出来そうだ。


(チームに分かれて探索でもしてるのか?)


 先ほどから、まとまった群れと、そうでない少数とのランダムな襲撃となっている。これだけ暴れているのだから、いっぺんに押し寄せてきてもおかしくないのだが。


「ま、そのほうがありがたいけどね」


 自己突っ込みをした上で、更なる探索を続ける。



(ライティングの時間は2時間に設定した。明滅を始めているからもうすぐかけ直しか)


「ライティン…グ!?」


 高ステータスの体は何かが空気を切り裂いてくる音を見事にとらえた。とっさの回避。耳元を何かが高速で通り過ぎ、岩壁に当たる。耳に届くのは笑い声、そして現れる影……ゴブリンか。


 暗闇で何かが光ったと思ったら物陰からの弓矢。動き的に俺以外を警戒している様子は無い。ゴブリン達には、何かしらで動きのわかる方法があるのかもしれない。続く襲撃は先ほどまでとは様子が違い、なんだか戦術を感じる。さらにこいつらはさっきまでより体格が一回り大きいようだ。エリートゴブリンといったところか?


「ファストブレイク! ついでに盾生成-大盾(クリエイトシールド)!」


 俺から見れば、無防備に襲い掛かってた先頭の1匹を突き刺し、絶命するのを確認しながら、大き目の盾を生み出して淵をがっちりと掴んで構える。ちなみに、かなり薄くした。本来の分厚さだとこれからの行動が出来ないのだ。


「どんな飛び方をするかは投げてからのお楽しみ! いっけぇえ!」


 MD的にはそれなり、という数値だった腕力に任せて、水切り石の要領で横向きに投げつける。腕力特化のタイプが本気で、きちんと作られた大盾を投げた時には森がひどいことになった記憶のある行為だが、俺ぐらいだとこの程度が限度だ。


 空気を切る音を従え、正面の何匹かをあっさりと分断し、岩壁にぶつかることで甲高い音を立てながら周囲を巻き込んでいく。


「……次は止めよう。自分のほうに来たらなんとも出来ないな、これ」


 自分には跳ね返ってこなかった幸運を強く思うほどの、後に残る惨劇。半端に両断された1匹や、まだ生きているが足だけ切れてしまった奴だとかが残ってしまっている。前の壁盾も大盾も、盾としては微妙な作りをしたのですぐに光となって消えていった。後に残るのは何かに刻まれた姿のみ。


(凶器の無い完全犯罪!……でもないか)


 放っておいてもどうしようもないので、ゴブリン達にそのまま襲い掛かり、壊滅させる。どちらが正義というわけではないが、悪人の所業に思えて仕方が無い状況である。



「武器、変えるか」


 いくら振るっても、ぬぐっても、なにやら赤黒い気がする。


 このまま使い続けて、いきなり血まみれの剣、とか名前が変わっても嫌なので別の剣、確か混乱効果のある特殊効果のついた一振りを選ぶ。混乱には精神的なものと、毒物的なものとがあったはずだが、これは後者だ。


 鉱脈探知マテリアルサーチの結果によれば、後1分もすれば一番反応のあった場所のはずだ。と、前方に自分のライティング以外のほのかな明かりが見える。まっすぐ進まず、その途中にあるわき道のようだ。


 待ち構えていたのか、わらわらとそこから湧き出る集団。中には色違いの1匹がいることが確認できた。

こちらを指差して何事か指示を叫んでいる。


「そうは……させないっ」


 敢えて前方に駆け出し、相手の陣形が整わないうちに色違いに接近、振りぬく。残念ながら、身をよじった色違いの片腕を少し切り裂いただけだが、俺の勝ちだ。そのまま暗闇だった奥へと駆け抜け、振り返るとぽかんとした様子の色違いが、奇声を上げて周囲に襲い掛かるところだった。目に入るものが全て敵と思っているのだろうか、必死の形相だ。


「悪いが、これも勝つ為ってことで」


 MDであったなら、色々批判を受けそうな戦い方が続くが、ここでは文句を言うプレイヤーもいない。せっかくの混乱効果が発動する者は少ないまま、ゴブリンを惨殺していく。やや狭い場所に殺到してくるゴブリンたち。頭、首、肩、腰、腹と思いつく限りの急所へと斬撃を決め、近寄ってくる相手を確実にしとめていく。


(肉の感触がっ! 終わったら川で水浴びでもするぞ! 絶対だ!)


 ひどい匂いだが呼吸をしないわけにもいかない。涙も混じり、吐きそうになるのを必死にこらえて相手を続けていく。人間に近い姿のモンスターの肉を切り裂く感覚というのも、慣れてはいけなさそうな感覚だった。


「つっ!」


 腰のあたりに走る痛み。見れば、脇から襲ってきた1匹の剣が俺の太ももに刺さっている。ぬめるような光を放つ刀身が半ばまで食い込んでいる……ように見えた。実際には切っ先は押し込まれたが俺の防御を貫通したとは言えない。プラスチックのフォークでぐりぐりと押された程度にしか感じない。


 嫌な笑みを浮かべるそのゴブリンの表情が驚きへと変わる。


「残念。予想済みだっ!」


 効果を発揮した防具たちに視線をやりながら、ゴブリンの胸元にロングソードを迷わず突き出す。 体に降りかかる返り血に顔をしかめながら、太ももに刺さった剣を抜き、適当に投げつけた。不幸な1匹に命中し、すぐに顔色が黒くなっていく。結構な猛毒のようだ。防具で防げてよかったと思おう。


「さあ、終わらせようか!」


 実際の剣術なんかを学ぶ必要はあるかもしれない戦闘内容に反省点を自覚しつつも、終わりへ向けて声を荒げる。




「もう……いないか?」


 何度目かもわからない静寂。今度こそ終わりのようだ。警戒をしながら飛び込んだのは小部屋、とは呼べないかなりの広さの部屋だった。元々はここが発掘の終点だったんだろうか? 


 壁は元より、周囲に様々なものが散乱している。光を受けて輝く貴金属のようなものから、ガラクタまで。元が鉱山だったことを示すようにツルハシのようなものまで。

 と、ライティングの灯りが不意に動き、ランタンのような何かに吸い寄せられていく。


(? なんだあれ……)


 中に油が入っているわけでもなく、まさかガス灯というわけでもない、光を放つ透明な何かで出来た箱。一番近いのはホタルなんかの柔らかな光だ。


「見えないけど、なんかいる……ような?」


 箱の素材もタダのガラスではなさそうだ。曇りガラスのように見えるそれも、少し指先が触れたところでその冷たさに驚いた。いや、これは冷たいというよりも……吸われた?


 マジックアイテムだとしても、それらしい感じとは少し違う。何より、他のアイテムたちみたいに精霊らしきものは浮かび上がってこない。金属である剣であったり、鉱石なんかからはそれっぽいのが見えるので、これは何か特殊な物なのだろう。蓋もあるが……さて?


 鬼が出るか何が出るかとおどおどしつつも蓋を開けると、光が飛び出してくる。それはふわりと空中に舞い、しばらく俺の周囲を漂っていたかと思うと、岩壁に飛び込んでいった。後には自分のライティングの光のみ。


「これ、何かのマジックアイテムか? まあ、後で良いか」


(早く、帰ろう……疲れた)


 意識したことで一気に襲い掛かってきた疲労に抗いながら、それっぽいものをどんどんとアイテムボックスに放り込み、片付けていく。当然のことながら、根こそぎである。










「外だぁぁぁあーー!!」


 とりあえず叫ぶ。近くにいた小動物が驚いて逃げていくのが気配でわかるけど心で謝るほかない。ダンジョン、とは言いがたいが、何かに潜るのは久しぶりだった。ゲームでは大体は、素材ポイントで確保! アイテムで脱出!だったからだ。


 広さを満喫した後、周囲を確認すれば太陽はまだ夕方前。今のうちに川へGOである。地図を見ながら川のある方向へとダッシュダッシュ。陽光に照らされたエルブンチェインは、まあ敢えて言うまい。川を視界に捉え、後のことは考えず、飛び込む。


「冷てっ!」


 叫んだ後で、川の汚れに驚く。明らかに俺を境に色が変わってしまった。気のせいか、水もにおうような気がする。


「うわちゃぁー、魚よ、すまん」


 少し動くだけでどこからか汚れがにじみ出る。それだけゴブリンを倒し、命を奪ったということだろう。しばらくして、体も冷えてきたので岸に上がるが……乾かす暇はなさそうだな。


「あー……よっしゃ、帰るか」


 乾かすことを忘れていた自分のマヌケ具合に少し苦笑しつつ、武具達をアイテムボックスに戻し、換えの服を出して大自然の中で手早く着替える。放り込んだアイテムボックスのアイテム達はステータス上、生乾きの衣服、みたいな感じになっているが仕方が無い。


 兄妹からの依頼品は外に出したままで、その達成感を胸に、俺はグランモールへと帰還して行った。





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完結済み:宝石娘(幼)達と行く異世界チートライフ!~聖剣を少女に挿し込むのが最終手段です~:https://ncode.syosetu.com/n1254dp/

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