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フォーグレンの神官  作者: ありま氷炎
第3章 北の異変
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フォーグレンの神官43

 街にトランペットの音が鳴り響いた。そして完全武装した騎馬隊、兵士達が城から列をなして街に出てくる。式典にしか演奏をしない楽器隊が、城と街をつなぐ跳ね橋の上で賑やかな楽曲を演奏していた。

 吹奏楽器、打楽器による勇ましい演奏が続き、ラズナンが市民に見えるように城の中から姿を現した。ラズナンの後ろにはデイが控え、その手には三又の鉾が握られている。


「シュイグレンの民たちよ。われは第五十二代シュイグレンの王、ラズナンなり。今より兵をあげ、フォーグレンに攻め入る。世界を一つにし、シュイグレンを世界最強の国にするのだ!」


 ラズナンの言葉に、それまで何事だろうと騒いでいた市民達が一斉に口をつぐんだ。そんな市民達をラズナンは見下ろし、手を挙げた。するとデイが三又の鉾を宙に掲げる。銀色の龍が現れ、上空に高く舞い上がると市民達を脅すように一気に下降した。街に暴風が吹き荒れる。果物や衣服、広場で広げられていた露店のものが空に飛ばされ、大人は子供を、男は女を守るようにその身を庇った。


われに従わぬものはシュイグレンの民ではない。民でないものは水の女神によって処罰が与えられよう」


 ラズナンがそう口にすると、デイの目が奇妙に光った。そして水の龍は市民に向かって白い炎を吐き出す。


「きゃあ!!」


「うわあ!!」

 炎に襲われた数人の男女が悲鳴を上げたかと思うと、その場に凍りついた。そして、上空から飛んできたデイとズウがその氷と化した男女の像を長刀を使い砕く。


われに従うか。民たちよ」


 ラズナンの声が静まり返った広場に響く。


「ラ、ラズナン様、万歳!」


 掠れた声がまずそう聞こえた。そしてその声に続けとばかり、市民達がそう合唱し始めた。

 声は徐々に熱気を帯び、ラズナンは満足そうに微笑んだ。




「なんだって?!ターヤの中に火の神が?!」

「……そうです。こんな事例私も初めてです。大神官様にいち早く知らせる必要があります」


 センは部屋に戻ってきたロセにターヤの状況を話した。火の神官としては、このことを水の神官ロセに話すべきではなかった。しかし、この状況下お互いに協力したほうがよいことはわかっていた。またロセが本当にターヤのことを思っており、知らせおくべきだとセンは判断したからだ。


「ターヤが……。うちの大神官様も大至急にネス様に見せる必要がある。センさん、ターヤを連れてフォーグレンに戻るんだろう?俺も一緒に…!」


「キリカ~!」


 ふいに少年の大きな声が聞こえ、どんどんと扉を叩く音が十歳くらいの少年が玄関にいるのが見えた。


「ロセ!」


 少年は奥から現われたロセの顔を見ると、二人の間を擦り抜け家に入ってきた。


「おう、ミンか!大きくなったな。まだキリカさんと暮らしていたんだな。どうした?何かあったのか?」


 少年――ミンの頬は真っ赤に上気しており、その額からうなじにかけて汗が流れ出ている。髪も服もぐっしょりと濡れ、慌てて走ってきた様子だった。


「ロセ!大変なんだよ!戦争が始まるんだ。シュイグレンがフォーグレンに戦争をしかけるんだ!」

「なんだって?!」


 予想もしないミンの言葉に、ロセを始め一同は驚きの声を上げた。



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