5、先輩との真剣勝負
後日の第二部隊訓練場。
「レイア、今日はモンスター無しで真剣勝負だ」
「いいですよ。やっぱり本気じゃなかったんですね」
「……ああ。でも、俺が勝ったらお前は第二部隊を辞めるんだ。いいな。そうでなければ、勝負しない」
「え!? ……分かりました。やります」
進退がかかったことでレイアは嫌な顔をしたが、勝負を受けた。隊員たちもネストの提案に驚いた。でも、口を挟む者はいなかった。
ネストは剣先を下から上に回して構えた。レイアはいつもと同じで右手を前に出した。掌は前に向けている。攻撃魔法の構えだ。レイアは静かに呪文を唱え始めた。
「我に集え闇の力よ。我の糧となり、破壊をもたらせ……」
レイアの周りに黒い煙が現れた。
(! これは闇魔法!)
ネストは呪文を聞いて驚愕した。他の者は気がついていない。隊員のほとんどは簡単な攻撃魔法と防御魔法を部隊でしか習っていないので、魔法には詳しくない。
(闇魔法は破壊魔法なので、禁止されている。呪いなどの簡単なものもあるが、闇の精霊がいないため、自分の魔力だけを使うので魔力消費が激しい。こいつなら自分の魔力でできるかもしれないが……)
闇魔法を研究する組織があり、他人の魔力を生贄に使っている。国はその組織を闇魔法結社と呼び、第三部隊が取り締りをしていた。
レイアの詠唱は続いていた。煙は順番に固まって黒い炎となり、レイアの周りに複数浮かんでいる。
(魔力を闇魔法に変換しているんだ)
ネストは他の隊員に気づかれないように小さい声を出した。
「おい、闇魔法は禁止されてるんだぞ。それに呪文を覚えられなかったんじゃないのか!?」
「闇魔法には、闇魔法で対抗せねばならぬのです!」
「!」
レイアの目がカッと怪しく光った。——レイアが子供の頃、母親が命を落としたのは、闇魔法結社が生贄にさらおうとしたレイアをかばったからだった。レイアの母親も魔法使いだった。
ネストはその事件のことを隊長から聞いて知っていた。
(そのことを言っているんだ。レイアは本当は魔法学園を卒業したら、第三部隊に入るつもりだったんだろう……。でも、攻撃魔法しか使えないポンコツだから、魔法学園を卒業しても第三部隊に入るのは無理だろう。どのみち第二部隊に入ったかもしれないな……)
この国は光魔法がない代わりか、魔力を持った人間がたくさんいるので、第三部隊に入れるのは魔法学園を卒業したエリートだけだ。第一部隊には女性隊員はいないが、第三部隊には複数いた。
「お前はどうやって闇魔法を学んだんだ」
「闇魔法書は闇市で売られているから、簡単に手に入るんですよ」
闇魔法結社が闇魔法を推進するために闇市で売っているのだ。もちろん関連品を所持するのもダメだ。
(こいつ、自分の興味のあることにしか関心がないんだな。これでヤバい案件がもう一つ増えた……。このまま勝負を続けてしまうと被害が出るだろう)
ネストはレイアに勝つのを諦めて、剣を下ろした。
「勝負は止めだ!」
「どうしてです!」
「俺が真剣勝負すれば、お前は城を破壊するだろう」
「! 働く場所が無くなります!」
レイアは正気に戻った。
「先に俺の心配をしろ」
「……先輩は大丈夫だと思います」
「間があったぞ。——そうだな、俺は自分の身を守るので精一杯だ。周りはどうなるか分からない」
レイアは魔法を止めて、両手を前で合わせてシュンとした。
「安全な方法を考えます」
「最初からそうしろ! お前との勝負は当分なしだ! それまで俺がナンバーワンで、お前がナンバーツーだ! いいな!」(職務上は俺がリーダーだからな)
「はい……」
ネストはビシッと指を差してレイアに言ったが、これでレイアを追い出すことができなくなってしまった。
(こいつが闇魔法を使うことを隊長に報告しないといけない。隊長もまた頭が痛いだろうな……)
は~とため息をつきながら、ネストは指令室へ向かった。




