1、ナンバーワンの先輩
(今日こそナンバーワンの座をもらうわ)
レイアが剣をネストに振り下ろすと、ガツンと音がした。ネストが剣で受けとめる。レイアがネストの剣を払うと、あっさり天高くくるくると舞い上がり、剣が地面に突き刺さった。レイアは全然手応えを感じなかった。
「もう! 先輩また手を抜きましたね!」
「どうせお前のほうが強いんだから、もういいだろう」
「そんなことないです。先輩のほうが剣技は上でしょう!」
ここは城の第二部隊の訓練場。隊員たちが魔法や剣の訓練をしていた。ことは数分前に遡る。
レイアは緑色の目に、赤ピンクの長い髪をポニーテールにしている。紺色の隊服を着て訓練場に走ってくると、先輩のネストに声をかけた。
「おかっぱ先ぱーい! 私と勝負してください!」
ネストは振り返った。ネストはダークグレーのおかっぱ頭で、黄色の目をしている。レイアの一つ上の十八歳。第二部隊には十五歳のときからいて、若手のリーダーだ。ネストは目を細めて返事をした。
「ネストだ。お前、先輩に失礼だぞ」
「すみません。名前忘れちゃって」
(こいつならありえる。呪文を覚えられなくて、魔法学園を留年したって話だからな)
ネストは呆れた。レイアは両手をグーにして訴えた。
「それより私と勝負してください。私、若手のナンバーワンになりたいんです」
「なんだそれは?」
「父は一番でないと城の兵士として認めないと言うんです。だからネスト先輩をやっちゃわないといけないんです」
「なんか語弊があるぞ……」
レイアは父と仲が悪い。レイアは男爵令嬢だ。父はレイアを魔法学園に行かせたくなかったが、母の遺言で仕方なく通わせた。
だが、レイアは魔法学園の塔を破壊したことで、学園を退学になった。学園側も魔力量が半端ないレイアを手放すのは惜しかったが、他の生徒の身の安全を優先した。
レイアはその足で第二部隊に入隊したのだった。
「このままだと隊を辞めさせられて、政略結婚させられます! 両親は政略結婚で仲が悪かったから、私は恋愛結婚がしたいんです!」
「ああ、そう」(父親は辞めさせたいんだろうな。こういう時、平民で良かったなと思う。貴族は大変だよな)
そしてネストは勝負を受け、今に至る。
「そろそろ俺は見回りの時間だ」
第二部隊は魔剣士の隊でモンスター退治が担当だ。モンスターは通常、森の中や自然が多い場所に生息しているが、この国では街中にも頻繁にモンスター出るので、見回りが欠かせないのだ。
モンスターが多い原因は、この国には光魔法が存在せず、光の加護がないからだと言われている。
第一部隊は騎士、第三部隊は魔法使いで構成されている。第二部隊は騎士でもなく、魔法使いでもない。魔法が少し使える剣士のため、寄せ集めと揶揄されていた。
だが、モンスター退治では、騎士だと身を守るすべがなく、魔法使いだと魔力がモンスターに吸収されてしまうので危険だ。
第二部隊の魔法は自分を守るために使うので、モンスター退治には魔剣士がちょうど良いのだ。
レイアは魔力制御を副隊長に習った。副隊長のジルは平民だが魔法学園の出身だ。ネストも隊に入ってからジルに魔法を習った。
勝負にレイアは不満だったが、見回りがあるので仕方がない。
「じゃあ、またお願いします」
「分かったよ……」
ネストはレイアに背を向けて、歩き出した。剣技が上でも、魔法ではレイアには到底敵わない。
(ここはなんとかして、レイアが納得する方法で負けるしかないだろう……)
やれやれとネストはため息をついた。
レイアが隊の面接に来たとき、隊長も副隊長も戦力になると喜んでいた。
(だがこいつは、魔力量の他にもとんでもない爆弾を抱えていた。それは隊の存続も危うい)




