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誰にも媚びない孤高のS級ヒロインが、最近なぜか俺にだけ優しいのだが ~ドS級美少女の瑛理子先輩は、俺が好きすぎてデレを隠し切れない~  作者: みなもと十華@書籍&コミック発売中
第2章 瑛理子先輩は俺にだけ優しい

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第59話 斯くして、ドS魔王お姉さんが誕生した

 目の前に立っているのは真美さんだった。浴衣姿で、困ったような顔をして髪をかき上げている。

 清楚な柄の浴衣姿なのに、大きな胸と肉感的な腰つきが妙に色っぽい。


「あ、あの、真美さん……」


 突然の事態に、俺は言葉が出てこない。

 凛が真美さんと一緒に行くと聞いていたはずなのに。


「俊くん……久しぶりだね」


 真美さんは、そう言って戸惑いの表情を浮かべた。


「あ、あの、真美さん……」

「偶然、偶然なの。凛ちゃんとお祭りに行こうってなってね」

「はい」


 だよな。やっぱり偶然だよな。


「ご、ごめんなさい。偶然じゃないの」

「えっ、ええっ?」


 真美さんが前言を翻した。

 俺はビックリして顔を上げる。


「ホントはね、遠くから見てるだけにしようって思ってたの。でも、歩いている俊くんを見たら、どうしても声をかけたくなって……」


 俯《うつむ》いて、ポツリポツリと話し続ける真美さん。その姿は今にも壊れてしまいそうで……。

 どうしよう、俺がハッキリしないからだよな。

 俺のせいで真美さんが……。


「あの、俺は……乙女心とかに疎《うと》くて、真美さんを困らせてばかりで……」

「違うよ」


 真美さんは俺の口に人差し指を当てた。


「俊くんは何も悪くないよ。私が勝手に好きになっただけ」

「でも、俺が鈍感だから真面目な真美さんに……」

「俊くんって、私のこと誤解してるよね」


 ん? どういうこと?


「でも、真美さんは清楚で真面目で」

「ふふっ、全然違うよ」


 真美さんはハイライトの消えたような目で、俺にグイッと迫った。


「俊くんって純粋だよね。全部偶然じゃないの」


 真美さんは、一度だけ躊躇《ためら》ってから口を開く。


「もう本当のことを言うね。俊くんのスマホには、位置情報共有とSNS監視アプリが入ってるの」

「ん!?」

「俊くんの位置は、私のスマホで特定できるの」

「えっ……」

「それにね、私が作ったお菓子。あれ、私の汗とか色々混ぜ込んであるんだよ♡」


 真美さんの衝撃告白を受けて、俺は体が痺れたかのように動けない。


 そんなバカな。真美さんは、いつも優しく朗らかで、天使のようなお姉さんで……。

 今までの真美さんの行動が、全て計算されていただなんて考えられない。


 何度も偶然会ったのは、全てストーキングしていたのか? いつものスイーツには、真美さんの汗が入っていたのか? もしかして、腋パイとか尻餅は冗談じゃなくて……?


「あ、あの…………」


 あまりの衝撃的事実に、俺は喉が張り付いたかのように声が出てこない。


「どう? 俊くん、びっくりした?」

「えっと……あの……エッ……」


 ゾクゾクゾクゾクゾクゾク!


 恐怖と背徳感で声が出ない。魔性のGカップ(推定)ドS女王様の恐怖により。

 真美さんから、強烈なドSオーラが溢れ出る。魔王のように恐ろしいのに、何か神々しさまで漂わせて。


 真美さん、たまにドSっぽくなると思っていたけど、本当にドSだったなんて。

 しかも……ストーカー属性とヤンデレ属性を追加したような。属性つけ過ぎだろ。


「どう、俊くん? 私のこと嫌いになったかな?」

「そ、そんな……真美さんが……」

「んぐぅうう~っ♡ そんな表情をされると私ぃ♡」


 俺の顔を覗き込んだ真美さんが、ヘンテコな声を上げた。

 その顔は妙に艶っぽい。


「俊くん♡ もしかして興奮してる?」

「し、してません」

「そうかな? 調教してあげようか?」

「だ、ダメです。真美さんとは幼馴染のお友達で」

「幼な妻のおマゾ達?」

「言ってません!」


 マズい、マズい、マズい! つい変な反応をしてしまった。真美さんの目が爛々(らんらん)としているのだが。

 俺は選択肢を間違えたのか?


「俊くんって、やっぱりそうだったんだね。なぁんだ、清楚系が好きだと思って猫かぶってたのに。隠す必要なかったよね」

「あ、あの、真美さん?」

「これからは容赦なく調教しちゃおうかな? 今は私のこと好きじゃなくても、調教して骨抜きにして、私を好きにさせれば良いんだよね♡」


 真美さんが魔王のように見える。妖艶で背徳的で、凄まじいラスボス感だ。

 ああ、聖女だと思っていたヒロインが、実は魔王だったなんて。


「俊くん♡ 一度は諦めようとしたの。迷惑ばかり掛けちゃいけないって。でも、俊くんが私に調教されるのなら別だよね」

「ちょ、ちょっと待って!」

「待てないよ。俊くんを徹底的に躾けて、私の命令に絶対服従するようにすれば、まだチャンスはあるんじゃないのかな?」


 待て待て待て! 真美さんは、昔から優しいお姉さんだよな。ドSだろうと魔王だろうと、俺にとって優しいお姉さんなのは変わらない。

 ちゃんと断らないと。

 でも、真美さんに調教されたら断れる自信がない。


「待ってください! 俺はまだ誰と付き合うとか考えていません……」

「しょうがないよね。俊くんが付き合ってくれないんだから。もう調教しかないんだよ♡」

「調教は勘弁してください!」


 真美さんが俺に迫り、浴衣から零れそうなGカップ(推定)が弾み暴れる。

 とんでもない破壊力だ。


「俊くん♡ 本性を知られちゃったから止まれないよ。私のこと嫌いになっちゃった? もう調教しかないの♡」

「お、落ち着いて、真美さん!」

「ちょっと待ちなさい!」


 俺と真美さんが揉み合っているところに、冷徹な美声が響いた。


「トイレに行った俊君が戻らないから来てみれば、またあなたなの、望月さん」


 そこには瑛理子先輩が立っていた。俺を探しにきたのか。

 その後ろにはメアリー先輩もいる。


「望月さん、ストーカー行為はやめてって言ったわよね」


 ビシッと言い放つ瑛理子先輩に、真美さんは視線だけを向ける。


「万里小路さん……邪魔しないで。もう猫をかぶるのはやめたの。これから俊くんを調教するんだから」

「ちょ、調教なんかさせないわよ! って、やっと本性を出したのね……」


 真美さんが本性を出したことで、瑛理子先輩も戸惑いを隠せない。


「あーあ、ずっと隠してたのにな。俊くんにバレちゃった。もう嫌われちゃったかな。でも、しょうがないよね」

「ふふっ」


 瑛理子先輩が笑みを浮かべ、真美さんが気色ばんだ。


「ちょっと、なに笑ってるのよ」

「あはは、そっちの方が望月さんらしくて好きよ」

「えっ?」

「今まではあざとくて苦手だったけど、今のあなたの方が望月さんらしいわ」

「そ、そうかしら」


 真美さんが頬を染めた。

 今までずっとギスギスしていた二人なのに、ドS的友情でも芽生えたのだろうか。


「最近は落ち込んでいて張り合いがなかったけど、やっと私のライバルらしくなったわね」

「ライバルなのは認めるんだ」

「ええ」

「じゃあ、万里小路さんも告白しちゃえば?」

「そ、それは……」


 急に瑛理子先輩の様子がおかしくなった。


「ほら、ちょうど俊くんもいるんだし」

「ちょっと待ちなさいよ。まだタイミングってのが」

「あーあ、ホントこの人ってムカつく。告白する勇気もないくせに――んんっ~!」


 瑛理子先輩の手が真美さんを口を塞ぎ、喋らせまいとしている。急に仲良しみたいなのだが。


「えっと、瑛理子先輩、何やってるんですか?」

「何でもない! 何でもないのよ!」

「俊く~ん、この女はやめた方がいいよ。何か地雷っぽいし」

「望月さんは黙ってて!」


 やっぱり瑛理子先輩と真美さんが仲良しっぽい。


「真美ぃ~! どこ行ったのよぉ~!」


 この修羅場に、凛まで現れた。

 人混みで酔ったのか、フラフラしている。弱っている姉ちゃんは新鮮で可愛らしい。


「真美ぃ、急に走り出してどうしたのよ……って、何で万里小路さんと黒森さんが!?」


 この場に学園の女王様が全員集合していることで、凛は目を白黒させている。


「凛ちゃん」


 真美さんは、凛のところに駆け寄った。


「凛ちゃん、私ね、俊くんに本性を打ち明けちゃった」

「そ、そうなんだ……」

「どうしよう。もう前のようには戻れないのかな」

「真美……」


 凛は真美さんを抱きしめた。

 俺は……真美さんはどんな真美さんでも真美さんで。昔から何も変わらないはずなんだ……。


「真美さん、猫かぶっていようが本性を出そうが、俺の中では真美さんは優しいお姉さんです」


 俺は本音をぶつけてみた。今まで優しかった真美さんが嘘だとは思えない。

 やっぱり真美さんは優しくて清純なお姉さんだ。


「俊くん……ありがとう……こんな私に優しくしてくれて」

「こんななんて言わないでください。真美さんは素晴らしいお姉さんですよ」

「じゃ、じゃあ、もっと本性を出しちゃうね♡ ○○○白玉あんみつとか」


 ん!? 今、変なワードが聞こえた気がするけど。気のせいだよな? 誰か気のせいだと言ってくれ。


「うーん、つまり瑛理子と真美が仲直りしたのかい?」


 メアリー先輩が俺の隣に来た。さり気なく俺の肩に腕を回している。


「そうみたいですね」

「つまり俊を調教する女王様が増えたってことか」

「ギクッ!」


 そ、そういうことになるのか?


「もちろんあたしも容赦しないけどさ」

「メアリー先輩は、もう少し遠慮してください」

「断る! 俊に振られてムカついてるから、これからはビシバシ調教してやるぞ」


 やっぱり俺は選択肢を間違えたのだろうか?

 誠実にしているはずなのに、どんどん皆がドSになってるのだが。



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