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誰にも媚びない孤高のS級ヒロインが、最近なぜか俺にだけ優しいのだが ~ドS級美少女の瑛理子先輩は、俺が好きすぎてデレを隠し切れない~  作者: みなもと十華@書籍&コミック発売中
第2章 瑛理子先輩は俺にだけ優しい

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49/53

第49話 執筆の時間です

 別荘に戻った俺たちは、屋根付きデッキで夕食の準備をしていた。

 と言っても、キャベツとタマネギとピーマンを切っているだけだが。肉と一緒に焼いたり、焼きそばに入れるだけだ。


 ダンッ!

「きゃ! 涙で目が霞むわ!」


 野菜を切るだけなのに、何故か猟奇的な女が一人。言わずと知れた瑛理子先輩である。

 タマネギの成分が目に染みるのか、涙目で包丁を振り回している。まるでホラー映画のシリアルキラーみたいだ。


「瑛理子先輩、普段シリアル食べててもキラーしちゃダメですよ。危ないので包丁を下ろしてください」


 それとなく注意してみたけど、瑛理子先輩は口をとがらせて不満顔だ。


「もうっ、遊んでないわよ! タマネギを切っていたの」

「野菜を切るのに、予備動作や振りかざす必要はないですよ」


 瑛理子先輩ときたら、包丁を振り上げて「えい!」と気合を入れたり、変な動きが多いのだ。

 知れば知るほどポンコツぶりが目につく面白い女子だったりする。やっぱり残念美人かな。


「くぅ……大崎君、私のことをバカだと思ってるでしょ」

「思ってないですよ。ポンコツだとは思ってますけど」

「ほらぁ、やっぱり!」


 瑛理子先輩が、グイッと肩を寄せてきた。


「もうっ! もうもうっ! 大崎君の前で、かっこわるいところばかり。料理もまともにできないなんて、恥ばかりかいちゃってるわ!」

「落ち着いてください、瑛理子先輩!」


 俺は暴れる瑛理子先輩の手首を掴んだ。このまま瑛理子先輩に包丁を持たせると、事態がミステリーものになりそうだから。

 熱海別荘何とか事件簿みたいに。


「瑛理子先輩は、そのままで良いと思いますよ。見た目は完璧美人なのに、意外とポンコツなところとか。ギャップが可愛いと思います」

「うくぅ~♡」


 真っ赤な顔で押し黙ってしまった瑛理子先輩。やっぱり可愛い。


「ったく、見せつけてくれるっスね」

「くっそ瑛理子め、油断も隙もない。天然か!」

「お前らー、イチャイチャすんなー」


 二人だけの世界に入っていたところ、雅先輩とメアリー先輩と操ちゃんが、思い切りジト目で俺たちを見ていた。


「い、イチャイチャしてないわ! 料理をしていたの! 誤解しないでよね!」


 そしてツンデレヒロインみたいなセリフを吐く瑛理子先輩。やっぱりアニメキャラみたいだ。


「ほら、後は俺がやりますから、瑛理子先輩は座っててください」

「もうっ! 私だって料理くらいできるわよ。お、お弁当とか……」


 勢いよく言い放った瑛理子先輩だが、語尾がゴニョゴニョと小さくなった。お弁当を作ってくれたのは一回きりで、あれから料理していないのだろう。


「はぁ、瑛理子先輩を見ていると将来が心配になります。この人、ちゃんと生活できるのかって」

「ちょっとぉ! 私だって自立した女よ。料理は……ダメだけど」

「もう誰かが世話しなきゃって思います」

「大崎君が世話しなさいよ。大崎君が料理担当決定ね。一生よ」


 くっ、この人……自分が超恥ずかしいことを言ってる自覚はあるのだろうか?

 一生って、それ結婚したいってことだよな。


「「「ぐぬぬぬぬぬぬ」」」


 案の定、皆が凄い表情で俺たちを見つめている。『お前ら、いい加減にしろ』って感じに。



 ◆ ◇ ◆



 夕食後は、お待ちかねの執筆タイムだ。むしろこれがメインである。

 文芸部の合宿なのに、海で遊んだりバーベキューしたり、ちょっと陽キャっぽいイベントをしてしまった。執筆には経験は大事だというけど。


 カタカタカタカタ――――


 落ち着いたインテリアの部屋に、瑛理子先輩のタイプ音が響く。

 別荘のリビングは広く、中央に大きなテーブルが鎮座していた。その周囲には、ソファや椅子が並ぶ。

 こんなに広いにもかかわらず、何故か瑛理子先輩が俺に寄り添っているのだが……。


「あの、瑛理子先輩。近くないですか?」

「そ、そうかしら」


 とぼけているのか、瑛理子先輩は目を合わせようとしない。

 明らかに距離が近い。さっきから瑛理子先輩の黒髪が、俺の首筋に当たってくすぐったいのだが。


「やっぱり近いですよね? 椅子がたくさんあるのに、何で俺と同じ椅子に座ってるんですか?」

「う、うるさいわね。この位置が落ち着くのよ。大崎君とくっついていると執筆が捗るのよ」


 そうなのか?

 いやいやいや、おかしいだろ!


「よし、あたしも」


 さっきからこっちを気にしていたメアリー先輩が、腰を上げて近づいてきた。


 ドスッ! グイグイグイ!


 無理やり俺の椅子に座ったメアリー先輩は、デカいケツで割り込んできた。


「ちょっと、メアリー先輩、狭いです。この椅子は二人用ですよ」

「ほらほら、こうすれば三人座れるだろ」


 座れるとか言われても……。メアリー先輩のデカケツで半分以上占領されているのだが。


「しかしデカいケツだな。ヒップがメートルの大台に……」

「ほう、俊のやつめ、恐れを知らないらしいな」


 俺が口を滑らせてしまい、メアリー先輩の威圧感が急上昇だ。

 さすがにデカケツがメートルじゃ怒るよな。


「す、すみません……」

「まあ、メートルの大台なんだけどね」

「なっ!」


 ガチに1メートル超えてたのか! デカすぎだろ!

 元から大迫力だけど、水泳で鍛えた大殿筋だいでんきんなのか? くっ、あんなので踏まれたら一溜りもないぞ!


「ぬへへぇ♡ 俊、尻で踏んでやろうか?」

「あんたはエスパーか!?」


 心を読まれていた。


「大崎君! 集中できていないようね!」


 今度は反対側から瑛理子先輩が威圧感急上昇だ。

 何だこの女王様に挟まれる展開は。


「へいへい、ドS女子に挟まれて執筆すれば良いんですよね」


 もうこのまま書くことにした。癖つよ先輩を動かすの不可能だ。



 しばらく室内にはタイピングの音だけが響いていた。

 こうして皆で一緒に執筆するのは不思議な感覚だ。

 ふと顔を上げると、対面の席で雅先輩が素早くスマホを操作している。スマホで執筆も慣れたものだ。

 横を向くと、メアリー先輩もスマホで何やら書いていた。名前だけ貸している兼部なのに、意外と真面目に活動しているようだ。


「メアリー先輩、どんな感じですか」

「ぬへへ、読んでみるかい?」


 声をかけたら、メアリー先輩はスマホ画面を見せてきた。


「どれどれ――」

【超ケツ闘術、大殿振動発破! 超ケツの怒りだババンバーン! 揺るがぬ勇気だドドンドーン! 受けよ、未知のケツ波動!】

「――って」


 むちゃくちゃ個性的な文章だった。


「ほらほら、ここから盛り上がるんだよ」

「えっと――」

【『俺は絶対に諦めないぞ! 宇宙そらに無限のケツある限り!』『くくっ、愚かな、運命は五万八千年の昔から決まっておるのだ!』『俺は滅びゆく運命など認めない! 母なる太陽! 恵のケツ輪! 大地に芽吹くは命の煌めき!』】


 何だろう、一周回って凄い気がしてきた。


「どうだいどうだい?」


 目をキラッキラに輝かせながら、メアリー先輩は俺に迫る。


「い、良いと思いますよ。独特の感性ですね」

「だよね! 何か楽しくなってきてさ」


 メアリー先輩が小説の楽しさに目覚めた。これは良い傾向か。


「瑛理子先輩はどうですか?」


 反対側に目を向けると、新作を書いている瑛理子先輩と視線が合った。


「ど、どうかしら? コンテスト用にラブコメを書いてみたのよ」

「へえ、いつも官能小説の瑛理子先輩がラブコメですか」


 パソコンの画面い目をやると、それは甘く切ない恋物語だった。

 幼い頃に会ったことのある主人公とヒロインが、高校で再会する物語だ。しかも、ヒロインは過去を覚えているのに、主人公の男は知らないすれ違いもの。


「おお、これ面白いですね。じれじれしながらも、このヒロインの一途さが伝わってきます。でも、この鈍感主人公ムカつきますよね」


 俺が感想を述べると、瑛理子先輩は得意げに笑う。


「でしょ。ヒロインがこんなに想いを寄せているのに、この鈍感男ときたら腹が立つんだから」

「ははっ、ぶっ飛ばしたくなりますよね」

「自分のことは分かってないのに、ラブコメだと気づくのね。鈍感大崎君」

「ん?」


 何故か瑛理子先輩に鈍感扱いされた。



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