第47話 瑛理子先輩が壊れた!
「はぁ♡ はぁ♡ はぁ♡ はぁ♡」
何とか日焼け止めを塗り終えたのだが、瑛理子先輩がぐったりしてしまった。息も絶え絶えだ。
「あの、瑛理子先輩?」
「むぅ!」
声をかけてみたら、瑛理子先輩が恨めしそうな目でジトッと睨んできた。
「ちょ、ちょっと、大崎君! 何なのよ! 手つきがいやらしいわ!」
「ええっ、普通に塗っただけなのに」
「もうっ! そうやって私をからかうのね! えっち♡」
そんな可愛い顔で『えっち♡』とか言われましても。
「俺だって、瑛理子先輩の綺麗な肌に触れてドキドキしてたのに」
「ふ、ふーん♡ ドキドキしてたんだ。ふーん♡」
「だから瑛理子先輩は、もっと自分の可愛さに気づくべきです」
「ほらぁ! また可愛いって言ったぁ♡」
何だろう。最近ますます瑛理子先輩が壊れ気味だ。可愛いという言葉で毎回おかしくなるような?
「と、とにかく、瑛理子先輩は自分の可愛さを自覚して、大胆な行動は控えてください」
「もうっ♡ もうっ♡ だから可愛い禁止ぃ♡」
可愛い禁止と言われましても。
そもそも瑛理子先輩が可愛い仕草を禁止すべきでは?
「もうぉおおっ♡ 怒ったわよ! 大崎君ったら、私をからかってばかりいて! 覚悟しなさい! 今度は私が塗ってあげるわ!」
そう言って瑛理子先輩は俺を強引に寝かせると、何か限界っぽい顔で迫ってきた。
「せ、先輩?」
「そうね♡ 大崎君には足で塗ってあげるわ♡」
「なっ! 瑛理子先輩の美脚で……だと」
「何で嬉しそうなのよぉ!」
しまった、思い切り顔に出ていたか!
「ほら、こうよ、こう!」
瑛理子先輩は俺の背中に日焼け止めクリームを落とすと、その上に美しいおみ足を乗せてきた。
グチュ! ズリュリュリュ!
「うぎゃあぁああっ! これはヤバいって!」
「ほらぁ♡ ほらほらぁ♡ どうかしら?」
久しぶりにくらった瑛理子先輩のドS女王様プレイに、俺の理性が崩壊寸前だ。
少しだけザラザラした足裏の感触が、めちゃくちゃ気持ち良くて昇天しそうになる。こんなの耐えられない。
「あははっ♡ やっぱりこれよね♡ ゾクゾクしちゃう♡ 大崎君って、やっぱり素質あるわ♡ これからは毎日踏んであげるから感謝しなさい♡」
「わぁああああ! もう勘弁してくれぇええ!」
背中を踏まれるのがこんなに気持ち良いなんて。ヤバい、クセになりそうだ。
俺に変なフェチを植え付けないでくれぇええ!
「もうっ♡ このくらいで許してあげるわ♡ これに懲りたら、私にエッチなからかいは控えることね♡」
ドSプレイで満足したのか、はたまた急に恥ずかしくなったのか、瑛理子先輩は日焼け止めをしまうと、メアリー先輩たちの泳いでいる海に走って行ってしまった。
「くっ、とんでもない目に遭ったぞ。俺を変態の道に引き込むんじゃねえ……」
レジャーシートから起き上がると、もの凄い眼光で俺を睨んでいる視線に気づいた。
しまった、操ちゃんの存在を忘れていた。
「おい、大崎」
「は、はい……何でしょうか、先生」
先生の前でエッチなことをしてしまった。
これは説教パターンか?
「わ、私にも……日焼け止めを塗ってくれないか?」
「は?」
説教じゃなくお願いだった。
「そ、その、何だ。私も生徒に体を触られたくてだな……」
「何を言ってるんですか。事案になりますよ」
「ち、違う! おお、大崎に、て、手を出すとかじゃなくてだな。純粋に日焼け止めを……」
操ちゃんがしどろもどろだ。
この先生ヤバいかもしれない。
「うがぁああっ! 私だけおあずけする気か? 目の前で生徒がイチャイチャするのを見せつけられて、もうムラムラが限界なんだぞ! この天然ご主人様め!」
あ、やっぱりアウトっぽい。
操ちゃんが、水着の紐をズラして迫ってきた。
「えっと、俺も泳いできますね。先生は一人焦らしプレイでもしててください」
「おいこらぁ! お前、とんでもない男だな!」
俺は危険レベルになっている操ちゃんを残し、先輩たちの泳ぐ海へと走った。
◆ ◇ ◆
「確かこの辺りで泳いでいたはずだけど……」
海に入ってはみたものの、先輩たちの姿が見えない。何処に行ってしまったのやら。
「潮で流されたのだろうか?」
俺が横を向いた時だった。
ザバアッ!
「俊ゲットだぜぇ!」
「うわぁああ!」
突然、海中から出現したデカい金髪美少女に、俺は両脇を抱えられてしまった。
「うわぁ! め、メアリー先輩! ビキニ姿で抱きつかないでください! 胸が! 生肌がぁ!」
「ぬっへへぇ♡ 海は裸の付き合いだろぉ♡ 無礼講で行こうぜぇ♡」
むぎゅ♡ むぎゅ♡ むぎゅ♡
背中に圧倒的な物量感が! これがグレート・アメリカ・ビッグパイか! って、パイだけ日本語だった!
「せ、先輩! もう当たってるってレベルじゃねーぞ!」
「ぬふふぅ♡ もろちん当ててるのさ」
「しかも『もろちん』とか『無礼講』とか、オッサンか!」
前から思っていたけど、メアリー先輩って見た目はアメリカンギャルなのに、中身はオッサンっぽい。
何かうちの姉と似ていて親近感があるぜ。
ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ!
さっきから凄い威圧感がすると思ったら、目の前に瑛理子先輩が立っていた。
「ぐぬぬっ! 大崎君!」
「ひぃいいっ!」
「あなた、やっぱり私をからかってるわね!」
どうしたらそうなるんだ?
俺はメアリー先輩に襲われているだけなのに。
「もうっ! 黒森さんだけズルいわ! 私にも構いなさい!」
プリプリと怒った瑛理子先輩は、俺の正面に抱きついてきた。
「ええっ! えええっ! な、なな、何でぇええ!」
「もう怒ったわよ♡ これでもくらいなさい♡」
瑛理子先輩が壊れた!
ビキニ姿のまま俺に抱きついているのだが!?
メアリー先輩に影響されてドスケベになったのか?
「ちょ、え、瑛理子先輩! 当たってます! 思い切り当たってますから!」
「当ててるのよ♡ どうかしら? 嬉しいでしょ! こうよ、こうっ!」
瑛理子先輩の超絶美しい肢体が、俺の体に絡みつく。吸い付くように滑らかでしっとりした美肌だ。
しかも、後ろに張り付いていたメアリー先輩まで、より体を絡めてきた。
「ぬへっ♡ 瑛理子もやるねぇ。でも俊はあたしのモノだけどね♡」
「ちょっとメアリー先輩! 瑛理子先輩を挑発しないで!」
「もう遅いわよ!」
予想どおり、瑛理子先輩の顔色が変わった。
この人、ほんと単純というかポンコツというか。
「もぉおおおおぉ~! 俊君は私のモノよ! 誰にも渡さないわ!」
瑛理子先輩が大声で主張し始めた。犬なのかモノなのかどっちなんだ。
しかも、いつの間にか『大崎君』から『俊君』になってるし。ちょっと嬉しい。
「相変わらず激しいっスねえ。早く付き合っちゃってくださいっスよ」
横から雅先輩の声がした。
浮き輪に乗ったちびっ子かと思っていたけど、よく見たら雅先輩だったようだ。
「ちょっと、そこの雅先輩! 助けて!」
「ほー、ふむふむ、ちょうどハーレム系を書く参考になるっスね。観察させてもらうっス」
「って、聞いてねえし! このメスガキ先輩がぁ!」
「ガキって言うんじゃないわよ! この生意気後輩!」
聞こえていたようだ。というか『メスガキ』というワードにだけ反応するらしい。
それよりさっきから周囲の視線が痛い。
凄い注目を集めているのだが。
「おい、何だあれ?」
「黒髪お嬢様と金髪ギャルに挟まれてるだと!」
「どっちも凄い美少女だな。スタイルもモデル級じゃねえか」
「くっそ、羨ましい」
「そこ変われよ!」
男たちの噂する声が聞こえる。誰もが俺を羨んでいるようだ。
「ちょっと、二人とも! 見られてるから! 離れろって!」
「ほれほれぇ♡ 俊、あとで一発やっとくぅ?」
ついにメアリー先輩から『一発』発言が出た。
何をやるんだ、何を!
「もおおっ! 一発なんてさせないわよ!」
瑛理子先輩がキレた。
「エッチしたいなら私としなさい!」
「え、えええ、エッチぃ!?」
「絶対に俊君は私意外とエッチさせないから!」
「何で!?」
もう瑛理子先輩が支離滅裂だ。俺とエッチするのか? いやいやいや、それはないだろ。
興奮して我を忘れているだけだ。たぶん。




