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誰にも媚びない孤高のS級ヒロインが、最近なぜか俺にだけ優しいのだが ~ドS級美少女の瑛理子先輩は、俺が好きすぎてデレを隠し切れない~  作者: みなもと十華@3/25二作同時発売
第2章 瑛理子先輩は俺にだけ優しい

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第42話 めちゃくちゃ重い女

「はぁああぁ……どうしよう……」


 月曜日。登校した俺は、机に突っ伏して頭を抱えていた。


「まさか……あんなことに……」


 今でも脳裏に焼き付いている。鮮烈で濃厚な、真美さんとのキスが。

 色々と思いを暴露され、いまだに頭が混乱状態だ。

 清純でお淑やかな真美さんが、実はドS女王様だったなんて……。


「いやいやいや! 待て、問題はそこじゃない」


 真美さんの性癖が問題じゃないんだ。俺は、たとえ真美さんが変態お姉さんでも受け入れる覚悟があるぞ。

 問題なのは、俺とキスをしたことだよ。しかも濃厚な大人のキスを。


「あれは何だったんだぁああ!」


 一人で苦悶している俺に、長瀬が近寄ってきた。


「おいおい、今日は一段と悩んでるみたいだな。また先輩女子絡みか?」

「ちちち、ちげーよ」


 反論しようとしたけど、思い切り動揺してしまった。


「何だよ、また万里小路先輩とイチャイチャしちゃったんじゃねーのか」

「し、してねーよ!」

「怪しいな。体育祭でもイチャイチャしてたって噂だぜ」


 長瀬が言うように、俺が瑛理子先輩に告白しとか、真美さんと一緒に弁当を食べていたとか、様々な噂が広がっている。


「あれは忘れてくれ。借り物競争で告白したけど、振られて足で踏まれたとかいう噂だろ」

「ブファ! ふっ、ふふっ」


 長瀬が吹き出しやがった。なに嬉しそうにしてるんだよ。


「ははっ、あははっ、わ、わりい。つい面白くてな。告白したとか、身を挺して助けたとか、良い感じの噂だったのによ。後から、怒った万里小路先輩にお前が顔を踏まれてたって噂が出てきて、やっぱり振られたのかよってオチになって。ふっ、ふふっ」


 まだ笑ってやがる。

 まあ、踏まれた噂は、振られたって話と、ご褒美って話があるけど。


「それで、万里小路先輩じゃなかったら、何の話なんだよ」

「何でもねえよ……」


 そうは言ったものの、この悩みを解決したい。

 長瀬に聞いてみるか?

 待て待て、あんなの話せねえよ!

 そうだ! 知り合いの話ってことにすれば問題ないよな!


「これは知り合いの話なんだけどよ」

「ほう、恋愛相談か?」


 長瀬が乗ってきた。


「その知り合いの男なんだけどさ、偶然ある女性……仮にAさんとしよう。Aさんとキスをしちゃったらしくてよ」

「ほうほう」


 長瀬は興味深そうな顔で聞いている。

 俺の作戦は成功だ。


「でも、それを知った別の女性……Bさんが激怒して」

「なるほど」

「怒ったBさんは、その男性にキスをしたんだよ」

「そりゃ嫉妬だろ」


 長瀬の回答に、俺の頭に血が上った。


「それは違うって! 真美さんは幼馴染なんだ。瑛理子先輩に嫉妬してキスするはずがないだろ。ずっと過保護に俺を見守ってただけだし。どういう意味なのか分からねえって」


 ふと長瀬を見ると、奴の顔はニマニマと緩み切っていた。


「ほう、ついにお前、万里小路先輩と望月先輩にキスしちまったのか」

「なっ! 何でそれを!」

「お前、自分で名前出してただろ。知り合いの話じゃなかったのかよ」


 し、ししし、しまったぁああああああ!

 作戦は失敗したぁああああ!


「くそぉ、まさかの自爆かよ。俺としたことが」

「まあ武士の情けだ。他の奴には秘密にしといてやるよ」

「ありがてえ。さすが新選組局長」

「近藤じゃねえよ、長曽祢虎徹ながそねこてつだよ!」


 自分で長曽祢虎徹って言っちゃってるじゃねえか。

 ホントは虎徹ネタを喜んでたんだろ。


「長瀬、お前はどう思う? 真美さんは何を考えているんだろ……」

「だから嫉妬だって」


 長瀬の話が嫉妬から離れない。

 聞いただけ無駄だったか。


「あああ、俺は真美さんとどうしたら良いんだ。もう気まずくて顔を合わせられないぞ」

「告白すれば解決じゃね?」

「こ、こここ、告白ぅ!」


 ビックリして声が裏返ってしまった。

 俺が真美さんに告白なんて……。


「そんなの無理に決まっ…………」


 真美さんに告白する想像から、悲しそうな表情の瑛理子先輩を思い浮かべてしまった。

 あの超美人なのに、不器用で対人関係がダメダメな人を。


 何でだろう。あの人を見ていると、俺が何とかしてあげたいとか、俺が傍についていないとって思ってしまう。

 ドSで塩対応で性格がキツく見えるけど、本当は真面目で優しくて、たまに周囲が見えなくなってしまう可愛い先輩。

 この想いが何なのか、もう俺にも分からなくなってきた。


「やっぱり、こりゃ重症だな。大崎のそれは、恋の病ってやつだろ」


 長瀬が一人で納得している。

 恋の病いだと?

 そうだよ、俺は真美さんも瑛理子先輩も、どっちも好きなんだよ。

 でも、相手の気持ちが分からないから悩んでるんだろ。



 ◆ ◇ ◆



「夏休みの合宿は、七月二十七日からでどうかしら? ねえ、聞いてる?」


 放課後の部室、瑛理子先輩が話をしていたのだが、考え事をしていた俺は聞き逃してしまった。


「えっ? すみません、聞いてませんでした」

「この生意気後輩、ほんとダメダメだしぃ」


 聞き返した俺に、雅先輩がダメ出しをした。


「うっ、確かに……。ダメダメだな」

「あ、あんたがそんなだと調子狂っちゃうんですけどぉ。何なのよぉ」


 雅先輩にまで気を使わせてしまった。


「夏合宿の話をしていたのよ。大崎君、どうしちゃったのよ?」


 瑛理子先輩が俺の顔を覗き込んできた。

 透き通るように綺麗な瞳が、俺を真っ直ぐに見つめる。そして、柔らかそうなピンク色のくちびる。

 思わずドキリとさせられ、俺は目を逸らしてしまった。


「す、すみません。考え事をしていて」

「そう。何か悩みがあるのかしら?」

「い、いえ……」


 気まずくて瑛理子先輩と目を合わせられない。

 まるで浮気をしてしまったような気持ちだ。付き合っていないのに。


「怪しいわね。今、目が泳いだわよ」

「うっ」


 どうする? ここは瑛理子先輩に女心を聞いてみるとか?

 待て待て待て! 長瀬の時みたいにバレるとマズい。もっと例え話を捻らないとダメか。

 そ、そうだ! 知り合いの話じゃなく、アニメの話にしよう。それだ!


「瑛理子先輩、これは好きなアニメの話なのですが」

「どうしたのかしら、急に」


 瑛理子先輩が面食らった顔をしている。

 だがもう突き進むしかない。


「ラブコメ作品で、主人公とA子が付き合っていたとします」

「唐突ね」

「しかし主人公は、A子がいながらB子とエッチなことをしてしまい」

寝取られ(NTR)系かしら?」


 瑛理子先輩の顔に、困惑の色が浮かぶ。


「さて、それを知ったA子は、主人公をどうしたでしょうか?」

「極刑一択ね」


 まさかの死刑宣告だった!


「じょ、冗談よ。創作の話だったかしら」


 そう言って瑛理子先輩は髪をいじる。


「官能小説やNTR系作品なら定番の展開ね。好きな人には受けそうだけど。でも、恋愛系やラブコメなら、修羅場まっしぐらよ」

「で、ですよね」


 やはり修羅場か。アニメだったら、主人公が刺されて『このコーナーは諸事情により、映像が差し替えになりました』とテロップが流れそうだ。


「まあ修羅場展開が好きな読者もいるわね。でも……」


 瑛理子先輩は続ける。


「これが現実だったら許さないわ」

「えっ」


 ゾクゾクゾク!

 瑛理子先輩からドSオーラが湧き出てきた。


「裏切った大崎君は、地獄を見ることになるわね」

「やっぱり鮮血エンド! てか、何で俺っ!」


 怖っ! 瑛理子先輩、超怖い!


「ふふっ♡ 何か心当たりでもあるのかしら?」


 口元に笑みを浮かべた瑛理子先輩が、俺をジッと見つめる。

 やめてくれ、真美さんとの件を勘繰られているみたいで怖いのだが。


「え、瑛理子先輩、す、ストップ」


 後ろめたい俺は、自然と後ずさる。


「もう、そんなに怖がらなくても良いじゃない」

「瑛理子先輩って、重そうな女っスよね」


 雅先輩の余計な一言で、瑛理子先輩の動きが止まった。


「え、えっと……私って、そんなに重そうに見えるかしら?」

「めちゃくちゃ重そうっスよ。重い女日本代表っス」

「ううっ」


 めちゃくちゃ重い女の瑛理子先輩がヘコんだ。


「そ、そんなに重くないはずよ。そりゃ、付き合う人は全てを投げうって欲しいし、好きな人とは二十四時間一緒にいたいし、終わるときは一緒に死んでほしいけど」

「めちゃくちゃ重い!」

「めちゃくちゃ重いっス!」


 俺と雅先輩の声が重なった。

 やっぱり瑛理子先輩は想像どおりだった。


「だから冗談よ。本気にしないで」


 そう弁解する瑛理子先輩だが、やっぱり重い女な気がする。もし付き合ったら、激重感情になりそうだ。


 あれっ? これ詰んでないか?

 狂気ヤンデレっぽい真美さんと、めちゃくちゃ重い瑛理子先輩に挟まれて。どっちに転んでも鮮血エンドでは?

 付き合ってないけど。



 そんなこんなで、俺の問題は何も解決しないまま、夏休みに入るのだった。



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