123 女性の立場
自分達より、ずっと年下の令嬢に責任を取らせようなどとは思ってもいない。
だが、ユークリッドが戦地に行った為に滞っている書類が決裁することができる。
名ばかりの印でいいのだ。
王も、宰相が用意した書類に印を押すだけのことも多かった。
だが、宰相室の補佐官の中には反感を持つ者もいる。それが自分達と違う意見を出した時には、貴重な意見だと言う者もいるが、存在が大きくなることに苛立つ者もいる。
「女性は政治にかかわるべきでない。未来の王妃だとしても、歴代の王妃は国政にかかわっていない」
この国で女性の立場は、内向きで家を支える存在だ。
平民は貴族がなにをしようが逆らえない存在である、というのと同じぐらい浸透している。
他国に留学して他国の情勢を知っているエルフレッドや、ユークリッドならば時代錯誤と一喝するのだろうが、戦地にいてここにはいない。
「ヴィスタル侯子も、気の強い令嬢が婚約者をもっと指導するべきだろう」
アルチュールをも貶す同僚を、アルチュールは鼻で笑う。
「彼女達のいう事が最も過ぎて、自分の能無しを隠すために貶すとは哀れをとおりこして惨めだな」
「バカにするな!」
反論された補佐官が、アルチュールを殴りにかかったが、身体を逸らされて前につんのめる。
「能無しだけでなく、腕力もないときた」
アルチュールが口角をあげてあざ笑うと、宰相が止めに入る。
「ヴィスタル補佐官、やり過ぎだ。君も、女性蔑視も甚だしい。
彼女達は十分に才覚がある」
補佐官が申し訳ない、と宰相はナーディアとイレーヌに謝る。
イレーヌはクスッと笑うと、補佐官に言った。
「内輪もめは良くありませんわ。
貴方も兄にバカにされても、見返してやる気持ちがあれば、私程度には成れましてよ」
ナーディアはイレーヌに抱きついた。
「イレーヌ、カッコいいわよ」
「クソッ!」
反論された補佐官は大きな足音をたてて、部屋を出て行った。
「女性に手をあげるのは恥ずべきことだ、と分かっていたようで安心したよ」
アルチュールに対して殴りにかかったような事をせずに、部屋を出て行った補佐官が消えた扉を見ながら、宰相が溜息をついた。
「元々、僕に劣等感があったやつだから、女性にまで劣るとは認めたくなかったのでしょう」
アルチュールは、さらに毒を吐く。
宰相も他の補佐官も慣れているのか、アルチュールに反応しない。
「イレーヌ嬢、ナーディア嬢、気にしないで欲しい。
古い考えの者もいるのだ。ご令嬢達の意見は、なるほどと思うことも多い」
イレーヌとナーディアをフォローするように声がかかる。
「さぁ、続きだ」
宰相の声で、皆が持ち場に着く。
ナーディアとイレーヌは目配せをして、書類の続きを読み始めた。
読んでくださり、ありがとうございました。
古い慣習を壊すためにも、ナーディアとイレーヌは頑張らないといけないのです。




