7 ノクト
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出発して王都を抜けるとのどかな風景が広がる。
広い畑には様々な作物や薬草が植えられ、果樹園には瑞々しい果物が成る。
俺はこの景色が好きだ。王都の賑やかな雰囲気も好きだがこちらは心が落ち着く。
やがてその景色もまばらになり、遠くに森が見えてくる。
森に近づくと入り口周辺はまだ明るく、可愛らしい小動物が警戒しながらもこちらの様子を伺っている。
そんな姿を横目にこちらも警戒は怠らない。
今のところ魔獣の気配はない。
被害を訴えているのはこの森を抜けた領地だ。
森の真ん中辺りに湖があり、その向こう側に魔獣がいる可能性が高い。
さらに森の奥へ進む前に、馬を休ませるため休憩をとる。
俺達もパンと干し肉をつまみ、軽く腹ごしらえをする。
再び森の奥へ向かう。
木々が生い茂り薄暗くなっていく。
小動物がいなくなり小型の魔獣が出てくる。
(可哀想に……お前達の無念は俺が晴らしてやる)
だから今は…………
剣を振るう。
魔獣化した動物を斬るとボロボロと崩れ黒い粉となり消えていく。
何故かはわからないがそうなる。
2度目の死は何も残らないのだろうか。
最後の一瞬だけでも苦しみから解き放つことが出来ているのだろうか。
こんなことが続くと段々と気分も暗くなっていく。
動物達を魔獣化させた奴らをどうしてやろうかと考える。
そろそろ中間地点の湖へ向かうため脇道へ進む。
湖に近づくにつれて再び魔獣は減っていく。
予定通り湖から少し離れた場所に野営をするため、テントを張る。
夕飯は食事当番がしっかりしたものを作ってくれるようだ。
野営地に15名の兵を残し、残りは暗くなる前に周囲の安全確認と湖の様子を見に行く。
安全なようならついでに水浴びも済ませよう。
湖は、相変わらず美しかった。
薄暗い森の中、日の光を反射して輝く湖。
底が見えるほど綺麗な水で動物達も水を飲んだり水浴びをしたりしている。
その美しさと微笑ましい姿はみているだけで癒される。
交代で兵達にも水浴びをさせる予定だ。
周囲の安全を確認し、ひとまず俺と近衛兵の6名が見張りに立ち、今いる騎士団兵10名に水浴びをしてもらう事にする。
森の中にはパプルという白っぽい葉が所々に生えている。
それを水に濡らし揉み込むと段々と泡立ってくる。
石鹸の材料にも使われているが街で売られているもののように色や香りがついているわけではない。
湖や自然の中でなんの影響もなく使える天然の石鹸だ。
湖近くにも生えているのでそれぞれ使う分だけ摘み、水浴びに向かう。
交代で、俺と近衛兵が同じようにパプルを摘み湖へ向かう。
土埃を洗い流してからパプルを泡立てる。
頭から身体から全て洗い流し、湖へ入る。
ひんやりとして気持ちがいい。
ゆっくり泳ぎたいところだが、待っている兵もいるので手早く身体を拭き野営地へ戻る。
ちょうどテントも張り終わり少し早いが夕飯も出来上がったところだった。
夕飯は、厚めの肉を焼いたものと具だくさんの野菜スープにパンにチーズだ。
野営にしては贅沢かもしれないが、これからの事を思うとしっかりと食べて欲しい。
夕食は野営地に残った兵が先に取り、我々は後から食べた。
食後の後片付けは近衛兵5名が引き受け、水浴びをしていない兵15名と見張り役の兵10名が湖へ向かう。
日が暮れはじめ辺りはうっすら暗くなってきている。
戻るときは暗くなっているだろうからランプも持っていかせた。
私は2ヵ所に起こした火の番と、周囲の警戒をする。
森の中では比較的安全な場所だが、魔獣ではなくとも野生の動物の行動は読めないので注意が必要だ。
日が落ち辺りが暗くなる頃、兵達は戻ってきた。
皆リフレッシュできたようで表情が柔らかい。
ここからは交代で見張りをたてて休む。
これまで湖の周囲1キロ以内に魔獣が現れた事はない。
報告によると、ここから10キロ程先で大型の魔獣が目撃されている。
報告書と照らし合わせ騎士団長のオリバーと再度確認を行い、見張りの割り当ても決める。
見張りは5名2時間ずつで行い早朝の出発とする。
近衛兵は私と行動を共にするので、ここは6名となる。
まずは私達が見張りに立ち、他の兵を休ませる。
皆が寝静まり辺り静かになると薪がはぜる音と夜行性の動物たちの鳴き声や動き回る音が聞こえてくる。
何事もなく見張りを交代し、我々もやすむことにする。
俺は日が昇る前に起き、1人湖へ向かう。
見張りの者達には湖に行く事と誰も付いてこないよう伝えておく。
俺の強さは知っているから黙って行かせてくれる。
たまには一人になりたい。
ランプを片手にもちろん帯剣もして、再び湖へ向かう。
月明かりのなか輝く湖はやはり美しく、夜の静けさの中ではより神秘的に見えた。
夜行性の動物たちの気配を感じる中、素振りを暫くして汗をかく。
服を全て脱ぎ湖に入り泳ぐ。
冷たくて気持ちがいい。
湖に浮かび星空を仰ぐ。
しばらく泳ぎ満足した俺は身体を拭き下履きとズボンを履く。
何となく名残惜しく、上半身裸のままぼんやりと湖を眺めていると、湖のちょうど真ん中あたりに光の粒が降り注いでいることに気がつく。
どこからかと不思議に思い少し上を見ると―――――――




