3 ノヴァルト
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―――ノヴァルト・アーク・リアザイア―――
執務室で書類仕事をしていたが、手を止め静まり返った室内を見渡す。
紅茶が冷めきっているが、夜も遅くこの時間働いている使用人も少ない。
終わったら熱い風呂に入ろうと決め再び仕事にもどる。
国王である父ノイガルトがまだまだ現役でいてくれるので、30という貴族ならばすでに子供が何人かいる年齢になっても結婚もせず婚約者すら選ばず、公務さえこなせば好きにさせてもらっている。
さすがに王妃である母エイベルからはそろそろ婚約者くらい選んではどうかと顔を合わせる度に言われている。
王族と血縁を結びたい貴族や、近づいてくる女性はこれまでにたくさんいた。
もちろん弟たちにもだ。
ひどい時は兄弟3人同時期に声をかける女性もいた。
そんなこともあり、どうにもその気になれない。
もしかしたら独身のまま老いていくのかもしれない。
その場合、世継は2人いる弟たちの子供から選んでもいいと思っている。
国王の座も弟たちどちらかが継いでもいいと思っている。
次男のノクトは28才で、兄の私から見ても良くできた弟だ。
母譲りの真っ直ぐな銀髪に碧眼で整った顔をしている。
身長も185cmと高いため、一見冷たい印象を与えてしまうが、動物好きで、やや負けず嫌いの気はあるが優しく素直なヤツだ。
剣の腕は私も敵わない程で、この国一番と言っていい。
明日の朝、魔獣の被害にあっている領へ討伐隊を組み出発するようだ。
末の弟のノシュカトは25才と若いが賢く思慮深い。
身長は180cmで、少し癖のあるフワフワの銀髪に、父譲りのアンバー色の瞳で整った顔をしている。
恥ずかしがり屋で柔らかい印象だが芯があり意外と厳しい意見もはっきりと言うので、優しそうと思い近づいて泣いて帰る令嬢が後を絶たない。
特に植物に関して博識で、夢中になると周りが見えなくなってしまうところもあるが、素晴らしい功績をあげている。
近々、森の奥にある山に調査に向かうらしい。
2人とも婚約者はいない。
私に気を遣ってくれている訳ではないらしいからどうやら3兄弟似た者同士のようだ。
王族というと王位継承権をめぐって争いがある国もあると聞くが、私達家族は仲が良い。
誰が国王になろうと全力で支える。
というより家族全員で国王だと考えている。
だからそれぞれの仕事量も、年齢関係なく中々の多さだ。一通りの仕事は皆できるので、国王が誰に変わろうとやることは変わらない。
この考えは家族の中だけのものなので、そうとは知らず無駄な画策をして不穏な動きを見せる貴族は排除している。
執務室で最後の書類に目を通し、サインをしてようやく今日の仕事が終わった。
―――外の木がざわめいた。
何となく外が気になりバルコニーに出た。
瞬間、女神が落ちてきた。
月明かりの夜
闇よりも深く艶めく長い黒髪
見たこともない服を着て
光の粒を纏い
目があった
瞬間微笑み
可愛らしく小さく手を振り
真っ逆さまに落ちていった
あまりの事に、驚くことしかできなかった。
急いで手すりから身をのりだし下を見ると光りが一瞬強くなり、消えた。
すぐに下へ降りて辺りを見回したが誰もいなかった。
ただ、髪留めのようなものが1つ落ちていた。
見たことがないデザインだった。
それが余計に彼女のものだと確信させた。
見つけた。
辺りには甘い花の残り香。
彼女は確かに存在する。
見つけるぞ。
もう一度会いたい 話がしたい
そして
確かめなければ。




