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夏休みは妖怪と  作者: 森尾
僕と妖怪と田舎
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1話

初投稿となります、よろしくお願いします。



僕の名前は染井(そめい) (まこと)


高校一年生、どこにでもいるようなごくごく平凡な人間だ。


僕は今、首都から遠く離れた田舎を走る電車に揺られている。

乗客は僕以外に見当たらず、車内には路線を走る規則的な音だけが響く。

車窓からは夕暮れ時の茜色に染められた田畑が目に入り、辺り一面は深い山に囲まれていた。

都会に住んでいるのならばまず見ることは無いであろう現実離れした景色の中に僕一人しかいない状況は、まるで違う世界に迷い込んだかのような気がして不思議と寂しさが込み上げてくる。


なぜ僕がこんな所にいるのかというと、簡単に言えば母さんの実家への帰省だ。

両親は僕が幼い頃に離婚しており僕は母方に引き取られた。

母さんは仕事が忙しいため家を開けることが多く一緒に食事をしたのはもういつのことだったか曖昧だ。

そして今回、僕が通っている高校の夏休みと母さんの長期出張とが重なって、首都から遠く離れた祖母の家に行く事となった。


事の発端に想いを馳せながら外の景色を眺めていると、間も無く目的地に到着することを報せるアナウンスが流れる。



ーーまもなく黄昏坂、黄昏坂ですーー


ーーお降りの際はお忘れ物の無いようお気をつけくださいーー




衣服や勉強道具そして必要最低限の生活用品が入ったリュックを背負い、無人の改札を抜ける。駅の入り口には錆びついた看板が吊るされていて、そこには黄昏坂(たそがれざか)と書かれていた。


駅を出ると田んぼに挟まれた道がどこまでも続いているのが見える、聞こえてくるのは草むらで鳴く虫の声と砂利道を歩く音だけ。

都会の大人達は田舎を"何も無い所"とよく言うけれど、僕は少しだけ違うと思う。

どこか懐かしさを感じさせられる夕焼け空。

辺り一帯を囲む深い山は眺めていると不安な気持ちになる一方、ほんのわずかな期待も湧き上がってくる。


本当に何も無いならこんな気持ちにはならないと思う、言葉に出来ないだけで田舎にはきっと"不思議な何か"があるんだ。

……なんて事を考えつつ、僕は母さんに渡された手書きの地図を頼りに進んでいった。









ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー










……あれから一時間は歩いたと思う


母さん直筆の地図にはひたすら一本道が書かれている。いやまあ確かに間違ってはいない……間違ってはいないのだが。

どこか懐かしさを感じさせられる夕焼け空は、ずっと見てると瞼の裏に焼き付いて僕のドライアイを加速させた。

辺り一帯を囲む深い山はいくら進んでも変わり映えすることなく、ある程度見慣れるとただの退屈な風景になった。不安も期待もどこかへ行った。


不思議な何かって何だよ……

何も無いから言葉に出来ないだけだった、何かあればこんな気持ちにならないだろう。


心の中で一時間前の発言を撤回していると何処からか動物の鳴き声がした、不安げに響くその声は助けを求めているように聞こえる。どうやら森の奥の方からしているようだ、案外近いのかもしれない。


気になった僕はそちらへと進み辺りを探る。

すると、猪を捕まえるための物であろう檻の中に一匹の若い狐がいた。その狐はこちらに気付くと檻の隅に身を寄せ怯えだす。どうやら罠に掛かってしまい出られなくなっているみたいだ。


(勝手に獲物を逃したら猟師さんに怒られるよね……

でも猪ならともかく狐を食べるだなんて聞いた事ないし、大丈夫、かな? )


そう自身に言い聞かせた僕は檻を開ける、するとこちらをビクビクと警戒しながらも出てきた。

いつから閉じ込められていたのか分からないが長く続いた空腹と恐怖のせいで狐の足はふらついている、きっとこのままでは持たないだろうと思いリュックを漁った。


野生の動物にエサをやってはいけないというのはよく聞くし、駄目な理由も分かってるつもりだった、悪い事とは理解してる。

しかしテレビに映る物とは違い、実際に弱った姿を目の前にすると我慢できなかった。


「ほら、これ食べなよ 」


ちょっとした罪悪感を抱きながらも菓子の包みを開け目の前に差し出す、どこのコンビニでも売っているありきたりな物だ。最初は恐る恐るといった感じで匂いを嗅いでいたが空腹に耐えられなかったのだろう、狐は夢中で食べ始めた。


「それじゃあ僕そろそろ行くね」


そう言い残し、来た道へと戻る


(そういえば狐を生で見るのは初めてだ、以外と近くにいるんだな…… )


僕は目的地を目指し、暗くなり始めた道を歩きだした。






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