01=空虚に届く手
「“魔王”ラナリア・ファイユーム!今日こそは我が王国下に(嫁に)してくれる!(してやんよ)」
堂々と本音混じり(まるだし)の声が上がる。
ルビーの光る白銀のソードを前に構え、ひとり谷の入り口“ラシャ高原”に立つのは、“レウネスカ王国”第一王子、ティアオルト・リバー・レウネスカ。
金髪碧眼の容姿は申し分なく、白馬にでも乗せたらさぞ絵になるだろう。
あー白馬いた。
対して王子、ティアオルトの視線の先には、ブライトターコイズ(明るい青緑)の長髪と、リリーピンク(薄桃色)のキレイな瞳の美少女、“魔王”ことラナリア・ファイユームが悠然と立っていた。
ならば王子はさしずめ“勇者”といったところか?
高原の風にその艶やかな髪をなびかせながら、ラナリアも声を上げる。
「どの口が言っているのかしら?よくも毎回めげずに来るわねっ!」
容姿と同様に、まだ幼さを残す強気な声。
それを聞いて、ティアオルトはにやりと笑う。
「来てくれて嬉しいんだ!?嬉しいんだな!!」
「断じて違う!!」
「照れるなよ〜可愛いから☆」
「…っ!!」
途端に顔を朱に染めるラナリア。実はこうゆうのに弱い。
「悲しいな…君と戦わなければならないなんて…」
「いやいや、あんたが勝手にこうやって決闘申し込んでくるだけでしょ」
「ラナリア…君がおとなしく王国下に入って(嫁になって)くれたら、無用な争いは起きないのに…」
「だから!女王である私がそんなことする訳ないでしょ!?何回言えばわかるの!?バカなの!?学習能力ないの!?私達は何にも属さないし、支配されない!」
「(やや傷付いた)…だったら、実力行使しかないね!」
「…やってみろっての!」
不敵に微笑む両者。いや、片っぽはやましい感情入ってるかんじだけど。
一瞬の静寂の後、先に動いたのはティアオルトだった。
ソードを振り上げ、目にも止まらぬ速さで向かってくる。
だがラナリアはひらりとそれを避け、返す刀でティアオルトの両手を背後から魔法で縛った。
「うがっ!?」
「瞬転ね、上達したじゃない。だけどまだまだよ」
悪戯っぽく笑うラナリアは、どこか楽しそうだ。
「ラナリアも詠唱破棄とはやるな」
「あら、当然」
「俺と戦う為に日々努力しているのが感じられるよ」
「このまま放置して帰ってほしいの?」
「放置プレイは俺まだ未経験だから少し興味───」
「死ね」
口も縛ってやろうかと魔法を使おうとすると、不意に背後を取られた。
「っ!?」
「ざーんねんっ!」
ラナリアの背後に回って首に手を回しているのは、ティアオルトだった。
ラナリアの眼前のティアオルトが、幻だったように掻き消える。
そして本物は、すごく笑顔で言った。
「実は影移も修得したんだよな」
「…やるじゃない」
「まだ一回が限度だけど。」
「そんな手の内を明かしちゃ───きゃっ!?」
不意にびくっとラナリアが固まる。
「おぉ!この間より2センチ大きくなってる!そろそろサイズの変えど───」
殴る。
魔力が思いっきり纏われたままの状態で。
地平線の彼方まで。
「ごぺぱっ(訳:本望)!」
「どこ触ってんのよ!バカ王子!変態王子!!」
顔を真っ赤にして叫ぶラナリアに、その美形変態王子はぐっと親指を立ててみせた。
もちろん、真っ白に輝く歯と、爽やかな王子スマイル付きで。
音声なしなら王国中がメロメロだぜ?的な。
「大丈夫、ラナリアにはまだ成長の可能性がある」
「うるさいっ!気にしてるんだからぁっ!!」
そうまた叫んで控えめな胸を押さえる。
褒めたつもりなんだけどなぁ、とティアオルトは胸中で呟いた。
「もう帰る!さよなら!」
くるりと踵を返し、谷に向かって帰っていくラナリア。
怒ってる怒ってる〜
そこでティアオルトはにこやかに言った。
「また明日な!」
「もう二度と行くもんかっ!!」
振り返りもせず、そう吐き捨てるラナリア。移動魔法を使わないところが可愛い。
素直じゃない随分可憐な“魔王”だと思いながら、ティアオルトはラナリアの背を見送る。
しかしその時、突如空間に緊張が走った。
これからひび割れていくような───
「っ!!?」
信じたくない光景だった。
ラシャ高原に数個点在する“神木”と呼ばれ、強大な魔力を有するが謎に包まれている巨木が、太い幹から折れている。
それが、ラナリアに向かって今にも倒れそうだった。
あいつに向かって“神木”が倒れる?というかそれ以前に何故あの“神木”が倒れる?
「ラナリアッ!!」
走りだす。
手を伸ばす。
声を張り上げる。
全力で。
まだ自分の身に何が起こっているか、わかっていない彼女に。
届け、頼むから。
「ラナリア───ッ!!」
そうして呼ばれた“魔王”は只の女の子で。
無邪気に“勇者”に振り返る。
「───」
彼女が何かを口にする。
少し呆れ顔でも可愛い笑顔を浮かべて、高原に佇む。
「早く逃げ───」
ドオォォオオォンッッッ───…
「───!」
手は、空虚を手に入れる。
そして大地は巨木を受け止めた。
その断面から、木に宿っていた膨大な魔力が、拡散していく。
「ラナ…リ…ア───」
魔力にあてられたティアオルトの意識が溶けてゆく。
視界はもう彼女を映さない。
「守る…って…約…そ…───」
空虚がティアオルトを満たす。
そして、彼の意識は風に潰えた。
まずはヒーロー&ヒロインの登場と簡単な紹介です。
髪の色はガチで狙ってません。
気付いたらそう書いてました\(^O^)/
お読みくださり(敬語??)ありがとうございました。
よろしければ、引き続きお付き合い下さい。




