仕組みのトビラ 2
「魔法は魔力を使って起こる出来事よ。そして、魔法の元になる魔力は私達の願いが集まってできるのが当たり前になっているけれど、魔力が一体なんなのかは誰にもわからないの」
そう言って優しく笑って答えるジルアにユーリの顔は明るくなる。
「だったら、お母さんの考えだと願えば僕でも使えるの?」
「いいえ、あくまで力が生まれるだけよ。使えるかは頑張るところよ」と首を振りユーリの魔力と魔法に対するとらえ方を否定し、理由を述べた。
「魔の力だから魔力。一般的に魔力って呼ばれているの、魔法はそんなロウを使ってできる行動の一つなの、でも、さっきの私の言葉を思い出して、ロウは願いの集まりって、でもね。願いを叶える為にはとるべきことがあるでしょ?」
「願いを叶える行動を起こすこと?」
「そう! ユーリは賢いわね。叶える行動とは『詠唱』することよ。願いは口に出さなければ叶わないように魔法も同じ、じゃ、ここからは難しいから魔法を交えながら説明するわね。今から使う魔法は火をおこす魔法よ」
文字を書くように空中で指先を走らせ、魔法が発動する法則に乗っ取って動かすと指先を追って翠色の線が生まれる。線は淡い蛍火のような光を放ち儚げに宙に残る。法則を知らないユーリには落書きととれるだろが、落書きとは違い鮮明で煌びやかだ。
「この線はビット、ロウで作られる魔法の元ね。ビットを使って書いた模様をスクリプト。これで魔法を使う準備が出来たわ。後は詠唱を口にするだけよ。詠唱しないかぎり発動しないから安心してね……」
すぅっと空気を吸い、心を落ち着かせジルアは唱える。
ジルアの力量では心を落ち着かせることは不要なのだが自分の子共に初めて見せる魔法だと
「微弱な生命の欠片 集まり 一つに『トーチ』」
ぼんっと音を立て赤く揺らめく灯火がユーリとジルアの間に発生する。
大きな音に驚きつつもユーリは灯火に目を輝かせた。
眼前の火に熱はあるのだろうが熱くはなく熱気が伝わってこないだけではなく、甘い香りまで振りまいている。
不思議と片づけるには勿体ない。
「詠唱は本来もっと短くできるけど詠唱の長さは成功率や精度、威力とかが変わってくるから侮ってはいけないわよ。わかった?」
「ま、無詠唱なんて例外もあるけどね」と付け加えたが食い入って見ているユーリには何回も首を縦に振ることのみが返答となった。教えたことが入っているかいないのか曖昧なところでもあるが、まだ子共だとジルアは内心微笑ましい光景の一つだと受け入れた。
「よろしい。では、まずビットから。体中の温かいものを指先に集めるようにするの。指先がお湯に漬かっているイメージね」
人差し指の先に意識を集中させると結果はすぐに出る。
指先に光が溜まったかと思えば消えるのを繰り返し時間とともに蛍の発光に似た翠色は熱がない冷光は美しく儚げであった。
ユーリは先ほどのジルアが魔法を発動させた工程を真似て灯火を産む魔法『トーチ』の発動を成功させた。灯火はジルアが発動したものと比べると荒く揺らぎ火力は二段階ほど強い。
ジルアが弱火ならばユーリは囂々と燃えさかる強火にあたる。
「そうそう、ユーリは上手ね。もう火を消していいわ。初めてで発動まで出来るなんて貴方にはロウを扱う者としての才能があるのかもしれないわね」
「ほんと!」
「えぇ、元アルビオンの上級白色聖職者である私が言うのだから間違いはないわよ」
自身満々に言うジルアをユーリは信じるほか無かった。肩書きがあるから信じたのでは無く母が自分を認めてくれるその点で、子共の自信と向上心は右肩上がりになるのだろう。
「でも、その前にユーリにはお勉強が必要ね」
ジルアの一言でユーリの右肩上がりの向上心は少しだけ下がったのは言うまでもなかった。




