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有無の騎士  作者: 七咲衣
我の為に鐘は為る
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第七十四話 火の粉舞い、風が暴れ、雷鳴轟く戦場

「侵入者?」


大国アヴァロンの王城、即ちアーサー家の城のとある部屋でセレナ・アーサーは報告を受けていた。


「はい、セレナ様。アヴァロン内に相当な腕前を持つ侵入者が現れたらしく、十二魔騎士に出撃命令が出ています」

「それはランスロット家の、命令かしら?」

「はい」


セレナは部屋の隅に置いていた鎧と聖剣エクス・カリバーを背負う。


「行かれるのですか?」

「ええ。他の仲間達や国の民達を危険にさらす訳にはいかないわ」

「我々民達を思っていただき幸せです」

「王たるもの、常に臣下と国の民を思うものよ」


そしてセレナは扉を開け玄関に向かう。


「よう」


玄関に背中を預けよりかかっている者が一人。


「っ、ルーク・・・」

「お前も出てくれるのか」

「当然でしょ。侵入者のせいで国民や仲間を犠牲者にするわけにはいかないわ」

「もう既に七つの家は確実に潰されてるぞ」

「っ・・・」

「そう機嫌を悪くするなよ。弱い奴に十二魔騎士を名乗る資格はないんだぜ?お前もよく知ってるだろ?」

「やめて!!」


セレナは血を吐くように叫ぶ。


「貴方がそれを言うの?」

俺だから・・・・言うんだよ」

「くっ・・・」

「まあいい、行くぞ。今はモルドレット家とトリスタン家とガウェイン家、リリィ、アルス、レオンの三人が直ぐに向かうだろうよ」

「三人も・・・」

「そうまでしなきゃ止められ程の奴なんだよ」

「そこまで・・・」

「まあいい、あの三人なら俺達ランスロット家、アーサー家に次ぐ実力者たちだ。流石にこれで仕留められなきゃ俺らが出張るしかない。まあ俺達は侵入者の死体の確認が主だろうけど」

「行くわよ」

「ふん」











「そろそろ王手チェックを掛けさせてもらうか」


ロストはアヴァロンの王城を遠く見据える。


「それは」

「こちらの」

「セリフです」


地に紅蓮の炎が這い、暴風が吹き荒れ、雷鳴が鳴り響いた。


「お?」


ロストは瞬時に場を飛び退き三つの魔法を避ける。


「これはこれは、十二魔騎士の中でも随分と選りすぐりの三家が出てきてくれたな」

「確実にお前を倒させてもらうぞ」

「はっ、やってみろ!」

「言われなくてもさせてもらうわ!」


リリィの蛇腹剣が複雑な軌道を織り成しロストに迫る。


「咆えろ、金剛杵ヴァジュラ!」

「へぇ!」


碧の雷が蛇腹剣に纏い蛇のようにロストに迫る。


「確かに複雑な軌道だが、まだまだ甘い!」


バンッ!


蛇腹剣を正確に撃ち抜き軌道を逸らし攻撃を避けていく。


「くっ!」

「遅え!」


バンッ!バンッ!


リリィの振るう蛇腹剣は音の波のように軌道を変えロストへ襲い掛かるがロストはその悉くを簡単に避けあまつさえ蛇腹剣の空白地帯を正確に見抜き針に糸を通すように射撃を行いリリィ自身を正確に狙って撃ちこんでくる。


「冗談でしょ!?」

「冗談じゃこんな芸当出来ないだろ」


次から次へと弾丸はリリィへと向かう。


「くっ!」


蛇腹剣は鞭のようにしなり相手を捉える武器だがその実引き戻しに時間が掛かる。勿論リリィはその事を十分承知しており引き戻しの鍛錬を最も多く行ってきていた。その甲斐あってか一秒掛からずに蛇腹剣を元の剣の長さに引き戻せるようにはなっている。


それでもタイムラグは出てしまう。無論普通の相手ならば問題にする事なく相手を殺せるだろう。しかし自分と同等、もしくはそれ以上の相手が出てきてしまった場合それは決定的な隙となる。今自分が相手にしているのは間違いなくその相手ということをリリィは既に悟っていた。


「ほら、そうやって空白が空くから狙われる」


バンッ!バンッ!


一切の躊躇いを見せずロストは撃ち抜く。


「させない!」


ガキィン!


「俺のことも忘れてもらっちゃ困るな」

「レオン・ガウェイン・・・」

「俺の事知ってたのか?」


レオンの両手には朱く輝く二振りの双剣が握られていた。


「ああ、まあな」


ロストはレオンを睨む。


「大丈夫か?リリィ」

「ええ、ありがとう」

「それはよかった。しかし、随分と俺はあちらさんに嫌われているようだ」

「何をしたんだ?レオン」

「いや、俺は何もしてないはずなんだが・・・」

「くくく、レオンは相変わらず面白いな」


アルスは親友のレオンを面白そうに見学する。


「アルス、お前も戦えよ」

「へいへい」


アルスはずっと握っていた槍を構え間合いを測るように相手を睨み付ける。


「アルス・トリスタンまでもが参戦か。だがまずはレオン、貴様からだ」

「俺が何かしたのか?」

「俺には・・・まあ過去に色々やられてるけど、一番は俺の親友に酷いことをしたから、だな」

「親友?」

「お前には知る由もないさ」


そう言ってロストは銃口をレオンに向ける。


「直ぐに殺す」

「そう簡単に死にたくはないがね」


二人は同時に動き出した。ロストはアインとツヴァイをレオンに向け構える。レオンは双剣の片方を前に突き出しもう片方の剣を後ろに構える。


「ふっ」


二人同時に動く。互いに洗練された動きで一切の無駄を失くしていた。


ガキィン!


「その武器、見たことないけど遠距離用の武器なんだろう?」

「まあな」

「遠距離から攻撃しなくていいのかい?」

「はっ、絶対に遠距離じゃないといけないって訳でもないからな」

「へぇ!」


ガキィン!


銃口を交差させ剣を止める。リリィとアルスはここで二人の実力が拮抗していると感じた。だがここで二人は大きく勘違いをしていた。確かにレオンのガウェイン家はランスロット家とアーサー家に次ぐ実力のある家である。しかし二人の力の付け方には決定的な違いがあった。


レオンは地道な努力と戦場での戦いで力を磨いた。確かに実力は世界でも有数の部類なのだろう。ある程度の魔獣や魔物にも太刀打ち出来るだろう。しかしそれは飽く迄も人を相手にした場合の実力だ。化物・・を相手に出来るかはまた別の話だ。

ロストは違う、常に自分より実力が上の相手と命を削りながら死闘を演じ続けてきた。レオンとは根本的に戦いの質が違った。


「そんな綺麗な戦い方では俺には勝てない」


義手の右腕の甲が開き閃光がレオンの目に焼き付く。


「ぐぁ!」

「ほら、そうして綺麗な剣技と魔法に集中してるから目を潰される」


そのまま交差していた銃口で剣を下に流し地面に剣を逸らす。更にロストは逸らした剣を踏みつけレオンを動けないようにした。


「さぁ、頭を飛ばしてやる」

「くっ!」


レオンは必死に避けようとするが強烈な閃光を目にしたため縛り付けられたように動けない。


騎士刺しの槍ロンゴミニアド!!」

「っ」


レオンの頭を撃ち抜こうとしていたところに槍の攻撃が割って入った。


「馬鹿野郎!油断するな、レオン!」

「すまない、アルス」

「アルス・トリスタン・・・・」

「レオン、お前は少し下がってろ!リリィ、二人でやるぞ!」

「ええ!」


二人は自分の武器を構え直しロストに対峙する。


「お前達が何人で来ようが、俺には関係ないがな」

「知るか!」


蛇腹剣が上から襲い掛かり槍が下から襲い掛かる。


「上下から攻めれば俺を追い詰められると思ったか?」


ロストは蛇腹剣と槍の速度を的確に理解し判断する。


「槍の方が一手先に俺に届く、か」

「終わりだ!」


槍がロストの喉に向かい飛び出してくる。しかしロストは冷静にその穂先を見つめ瞬時に腕をに向け銃の引き金を引いた。


バンッ!ガキィ!


「上に?」


上にあった蛇腹剣の腹に弾丸が当たり、軌道が逸れる。


「だが槍は避けられん!」


槍は一切速度が下がっておらずそのまま喉元に向かっている。ロストは既に胸元に差し掛かっていた槍に向かい顔をに突き出した。


「何!?」

「面の使い方としては違うかもしれないが、一応そこそこ固い物で出来てる面だ、防具としても役立つ」


面に一つの亀裂が走る。そのまま右手をアレスの目の前に突き出し銃口を額に当てる。


「くっ!!」

「間に合うものか」


バンッ!


「アルス!!」


レオンは目の前で親友の頭が撃ち抜かれた瞬間を目撃する。


「まず一人」

「よくもアルスを!!」


リリィが蛇腹剣に纏わせていた雷が激しさを増す。


「おいおい、熱くなるなよ」

「黙れ!」


リリィが蛇腹剣をロストに向け放つ。上下左右、逃げ場のないように振るう。


「そら、感情を暴れさせるから攻撃思考になりすぎて隙間を作る」


バンッ!


容赦なく隙間に銃弾を通しリリィを狙う。


「くっ!」


弾丸を避けようと体を動かし、体を動かしたせいで蛇腹剣の軌道も変わる。


「リリィ、避けろ!」

「ここだ」


バンッ!


レオンの声が響いた時には既に遅く、リリィの頭は撃ち抜かれていた。


「残りはお前だけだぞ、レオン」

「貴様・・・」


ピシッ・・・


更に面の亀裂が広がり、面は剥がれ落ちた。


「ああ、割れちまった」

「お前は・・・」

「よう、レオン」

「ルーク、なのか?」

「捨てた・・・いや、奪われた名前で呼ぶなよ。まあいい、お前も死んでもらうぞ」


そのまま銃をレオンに向けるがレオンも双剣を抜く。


「お前だけは・・・」

「殺すか?不可能だ」

「やってみなきゃ分からないさ」


言葉こそ少ないがレオンは全身から殺気を漲らせている。


「来い」

「うおお!」


双剣には炎が渦巻き地面にも炎が蔓延る。


「せあ!」

「遅い遅い」


レオンは全力を使い剣を振り続けるが全てが当たらない。銃口で逸らされ、弾丸で弾かれ、避けられる。


「ハァ!」


炎を纏った双剣を交差させ、一気に振り上げる。しかしその瞬間レオンは今度こそ驚愕することになる。


「所詮ガウェイン家もこの程度か」


交差させて振り上げた剣をロストは足に水魔法を展開させ双剣の交差点を踏みつけ剣を地面に突き刺した。しかしレオンは諦めず剣から瞬時に手を離し、炎魔法を放つ・・・・はずだった。


詰みチェックメイトだ」


レオンはここで理解した。自分たちが相手にしたのは化物だったのだと。決して触れてはならなかった存在だったのだ。


バンッ!


十二魔騎士の中でも三本の指に入る実力ある家が今壊された。





「あと二家・・・・」


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