第七十五話 帰還
「・・・・」
ロストは一つの城を見上げていた。見上げると同時にとある感慨に耽っていた。今から約十年前には歯向かうことを許されず、何かをすることすら出来なかった。それが今はどうだ、世界に敵う者なしとまで言われた各家をたった一人で潰して回った。今度はこちらが相手に歯向かうことを許さなかった。
「そんな家が世界一・・・・ハッ、滑稽だな」
今は既に骸骨を模した面は剥がれてしまっている。まだ予備は残っているがこの家では付けたくはなかった。
「・・・・壊し尽す」
バコォン!!
正門を蹴りでこじ開ける。
「キャァァァ!」
響き渡る悲鳴。既に国に侵入者が入ってきているという情報は回ってきているのだろう。
「当主様をお呼びしろ!」
「誰か助けてええ!」
悲鳴と怒号が広間に飛び交う。
「静まれ!!」
その中に一つの怒号が響いた。
「これはこれは・・・」
ロストは懐かしそうな声を上げる。
「よくも我が城を、許さんぞ」
上階から飛び降りてきたのはかつての兄妹達。かつて自分を追い出した者達だった。
「お久しぶりです・・・・」
「久しぶりだと?」
降りてきたかつての兄妹の四人。
兄のノア、姉のリア、弟のルノ、妹のルチ。忘れようとも忘れられない記憶。どれだけ痛めつけられたか、苦しかったか。
「覚えていませんか?かつて貴方たちが傷つけ、追い出した弟を!!」
バサッ!
上に来ていたコートとシャツを脱ぎ捨て上半身を四人に見せるように露出させる。
「貴様・・・・」
四人の目が見開かれていく。
「お久しぶりです、戻ってまいりました。貴方方を殺すために」
「生きていたか、クズ」
一瞬の驚きを現した後すぐに侮蔑の色に目が染まる。
「お前・・・・」
「生きてたのね」
「汚らわしい・・・・」
他の三人も三者三様の言葉を吐きながら目の色は全員同じだった。
「まあ、いい。すぐに殺してやる」
「殺す?俺を?く・・・・くくく・・・・はは、あははははははは!!」
ロストは笑う。下手な道化を見るように。
「何を笑っている」
四人の殺気が放たれる。
「殺せるのかよ?」
瞬時に兄であるノアの背後に回り込み銃口でノアの頭を思いっきり殴りつけて地面に叩き付けた。
「がっ!?」
「ほら、殺せるのなら殺せよ」
背中を踏みつけ動けないようにする。
「お前!」
「兄様を離しなさい!」
弟のルノと妹のルチも飛びかかってくる。感情を荒げてただ突進して来てるだけのように見せかけて腕には見えないように小さく、しかし確実に人を殺せる水の槍を展開していた。
「お前らは一応俺の弟達だからな、少し早めに移動させてやるよ」
ヒュオッ!バキィ!
「うっ!」
「カハッ!
瞬時にロストは二人に蹴りを腹部に叩き込み壁まで吹き飛ばす。
バンッ!バンッ!バンッ!バンッ!
銃声が四度鳴り響く。
『ギャァ!?』
壁叩き付けられただけでなくルノとノアの両腕の手のひらに二つの銃弾が撃ちこまれた。
「そら、磔の完成だ」
そのまま残りの二人も睨み付ける。
「貴様らも磔だ」
「クズが、粋がるなよ!!」
ノアの体内に膨大な魔力が練り込まれる。
「押し潰す!」
「させるわけないだろう、馬鹿か?」
バンッ!
ロストは魔力を感知した瞬間銃弾を腹部に向け放ち魔法を展開させなかった。
「そっちもだ」
更に続けて姉のリアの腹部にも撃ちこむ。
ヒュオッ、ガコッ!
二人を蹴り付け更に壁に叩き付ける。
「おっと、落ちないように縫い付けないといけないな?」
手のひらに銃口を押し付け、引き金を引く。
バツンッ!
「ギャァァ!!」
「面白味にかける悲鳴を上げるなよ・・・」
更に姉の手のひらにも銃口を押し付け引き金を左右で一度ずつ退く。
バツンッ!
「ランスロット家四兄妹の十字架だ」
「き、貴様・・・・」
「そう簡単に死ねると思うなよ?お前らの当主がやられる所を特等席で見せつけてやる」
そのままロストは振り返る。
「なぁ、お父様?」
そこにはかつての父親、レウス・ランスロットが佇んでいた。
「・・・・」
「おいおい、何とか言ってくれよ」
「クズにかける言葉なぞない」
「ハッ、ならばあんたはそのクズに殺されるというだけだ」
「思い上がるなよ!」
腰に差した剣を引き抜き襲い掛かってくる。
「また昔同じように地面に這いつくばらせてくれる!」
「テメェを這いつくばらせてやる!」
二人は互いに武器をぶつけ合う。
「お前に捨てられてから貴様らを忘れたことは無かったぞ!!」
「チッ、死に損ないめが!」
バンッ!
互いに武器をぶつけ合う最中、躊躇いもなく発砲する。
パシャッ!
「水の障壁か!」
「ふん!」
レウスは常に対魔法、対物理になる水の障壁を張っている。
「貰った!」
「させるか!」
障壁に銃弾を防がれ一瞬驚きを見せたロストはその隙を見抜いたレウスが剣を振り抜く。
バンッ!
振りかぶられていた剣に自分の義手を当て剣の腹に義手に仕組んだ銃を発砲し、弾く。
「くっ」
「死ね!」
レウスの剣を弾き空けた空間に無理矢理銃を持った腕を捻じ込む。
「消し飛べ!」
「おのれ!」
バツンッ!
肉を断つような音がなる。
「腕を押し込みやがったか」
レウスは咄嗟に左腕を押し込み、顔を守っていた。
「貴様如きに左腕を持っていかれるとは思わなかったぞ」
「俺はここまでお前が生き残るとは思ってもいなかった」
二人は睨み合う。
「一つだけ聞かせろ」
「ああ?」
「貴様、それだけの力をどうやって手に入れた?」
「お前らを殺す事だけを考えていたらここまでの力を付けていた」
「言わないなら吐かせるまでだ」
レウスの剣を振るう速度が増していく。
「我が手に水の祝福を・・・・」
更にレウスの手には水の膜が現れる。
「窒息死させてやる」
「頭を吹き飛ばしてやるよ」
水の膜は生物のように動きロストの顔を飲み込もうとする。
バンッ!バババンッ!
ロストも自分の銃で弾丸をばら撒く。
「貴様のその武器、所詮弓の延長線上の武器だろう?直線状にいなければ何も問題なぞない」
レウスがロストの銃口を睨み付け考えを述べる。
「恐らくその武器に番えられる矢に当たる物の数は六発まで、その武器が二つなら合わせて十二の矢が圧倒的な速度で迫ってくる」
レウスが首を少し曲げ弾丸を全て見切り一発も被弾することなく避け切った。
「・・・・」
「全ての矢を避けてしまえば弓なんて物はただの木の棒だ。所詮十二魔騎士と言ってもランスロット家以外の実力なぞたかが知れてる。ここまで貴様が倒してきた奴らはその弓を避けることが出来なかったんだろう?所詮その程度の実力の奴らだ。我がランスロット家は文字通り格が違うんだよ」
そのまま左手の剣と右手の水が襲い掛かってきていた。
「ならお前はその程度の奴ってことだな」
ガキィン!
「ガフッ!」
最初に撃ちだした弾丸が壁にめり込み止まっていたが更に撃ちだした弾丸がそれに当たり角度が変わった弾丸が後ろからレウスを穿った。
「即死は避けてるさ、そう簡単に殺しちゃ面白くないからな」
倒れかかったレウスの頭をロストは踏みつける。
「なあ、どうだよ?クズって見下して貶してた奴に踏みつけられて蔑まれるのは?なあ、教えてくれよ・・・・なあ・・・おい・・・・」
そのまま足を上げて再び思いっきり振り下ろす。
「どうなんだよ!!」
「き、貴様・・・・」
「何とか言えよ、なあ!?」
ガスッ、ガスッ!
「許さん、許さんぞ・・・・必ず殺してや」
「黙れよ」
ガスッ、ボキィ!
レウスを踏みつける右足に更に力を込めて肋骨をへし折った。
バンッ!バンッ!
銃でレウスの四肢を撃ち抜き動けなくする。
「母さんにも、こういう処刑をしたのか?」
バンッ!バンッ!
更に四肢に鉛玉を撃ちこむ。
「あの・・・・悪魔の、女か」
「黙れ!!自分の勝手な言い分で殺した奴が何を言っている!」
ロストが激昂しこの世の物とは思えない殺気が撒き散らされる。
「何故母さんを殺す必要があった!!」
ロストは叫ぶ。かつての悔いを吐き出すように。
「我等十二魔騎士の家は力が全てだ。力がない奴を生かしておくわけがないだろう」
「たかがそんな理由で!!」
「貴様のような無能を産んだのだ、穢らわしい女だったよ」
「ッ!」
「所詮貴様は穢れた女から生まれた不良ひ」
バンッ!
「ハァ・・・・ハァ・・・・」
レウスの頭が撃ち抜かれる。我慢の限界だった、耐えきれなかった。
「まあいい、どのみちこの家ももう終わりだ。十二魔騎士はたった一人に踏みにじられるんだよ」
銃を磔にしていた兄妹に向ける。
「これで終わりだ、ランスロット家」
「や、やめてくれ!」
「助けて!」
「殺さないで!」
兄妹達が騒ぎ始める。死にたくない、助けてくれ、と喚きだす。
バンッ!バンッ!バンッ!バンッ!
四つの銃声が鳴り響き全員の額に弾丸の穴が空く。
「ハァ・・・・ハァ・・・・」
息を整え目を閉じ天井を向く。
「やりきった、殺してやったぞ!」
そのまま腹を抱えて感情の赴くままに笑い続ける。
「はははは・・・・ハァ・・・・ハァ・・・・」
そのまま息を整え床に倒れ込んでいる死体を眺める。
「・・・・クソッ」
そのまま正門を抜ける。
「復讐は・・・・生ったんだよ・・・・なのに何故・・・・」
そのまま腰の袋から再び骸骨の面を取り出し顔に付ける。
「まだ残っているな、潰す・・・・」
再びロストは歩き出す、残りの復讐を成す為に。




