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有無の騎士  作者: 七咲衣
鴉の巣窟
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第六十八話 答え

「そうか、そんなことが・・・大変だったんだな、ロスト」

「ああ、俺もこの施設がそんな施設だったとは、意外だったよ。ああ、そうだ」


ロストは腰に付けた道具袋から一つの武器を取り出した。それはロストの復讐への最初の一歩の矛。


「このボウガン、凄く助かった。ありがとう」

「これは・・・まだ持っていてくれたのか」

「ああ。当たり前だろ、これのお蔭で今の俺がいるようなものだ。ありがとう」

「ふふっ」


ナナが笑ったところで一つの声が広場に響いた。


「おやおや、随分と懐かしい顔がいるじゃないか」

「あんたは・・・」


広場には黒いローブで全身を覆い部屋の暗闇を切り取ったかのような者が現れる。


「久しぶりだね?ロスト君」

「ああ、随分と懐かしい気配だ。師匠とお呼びしましょうか?」

「はっはっは、まさかあの時の話を覚えていてくれるなんてねぇ」

「8年は過ぎちまったが、生きたぞ」

「確かにね。さて・・・どこまで強くなったのか」


そう言った途端ローブの男が霞のように掻き消えた。


「見せてもら」


バコンッ!


「随分と遅い攻撃だな」


ロストは掻き消えたローブの男が瞬時に自分の足元に這いつくばるようにして移動して来ていたのを肉眼で捉えていた。足元から迫るナイフを目で見て軌道を確認し、その軌道を蹴りで変え、更に腕を踏みつけ攻撃そのものを封じた。


「ははは、随分と強くなったみたいだね」

「ま、化物みたいに強くならなきゃ生き残れなかったわけだからな」

「それはそれは、随分と大変な思いをしたんだろうね。それと」

「何だ?」

「いい加減足を退けてくれると嬉しいんだが」

「ああ、悪い」


そしてロストが足を退けた途端更に刃物が首元に向けて迫る。しかしロストは再び首元に迫ってきた白刃を瞬時に取り出した銃で撃ち壊す。


「随分と手癖が悪いんだな?」

「これまで防がれちゃうのか」

「その程度で死んでたら俺は命がいくつあっても足りないさ」

「うん、十分実力がありそうだ」

「よく分からないんだが・・・まあこれ以上何かしてくるのなら」


その瞬間ロストの全身から信じられない程の殺気が溢れ出た。


「本気で潰すぞ?」

「っ」


黒ローブの男はこれまでいくつもの修羅場をくぐり抜けてきた自信があった。今まで命の危機も何度も乗り越えてきた自信があった。故に実力にもそれなりの自信があった。しかしロストから発せられた殺気は黒ローブの男の想像を超えていた。黒ローブの男は今更ながらに気づいた。自分が手を出した存在あいてがどんな者かを。


「は、ははは・・・随分と強く、なったようだ。分かったよ、もう何もしないよ」

「そうしてくれると助かる」

「助かるの僕のはずなんだがね」


そう言ってローブの男は立ち上がる。


「とにかくこれで我ら第0院の集められた子供達が揃った訳だ」

「第0院だと?何だそれは」

「そうだ、ロスト君には説明していなかったか・・・我々がどのような集まりなのかを」


ギギギ


広場の扉が再び開かれる。


「は~、久々に暴れられたな。十二魔騎士の連中も中々やるなぁ」

「お、帰ってきたね」


扉からは第0院のメンバーでもある八人が入ってくる。


「あっ」

「ん・・・よう、久しぶり?」


他のメンバー達が続々と広場に入ってくる。そして入ってきたメンバー全員がロストに視線を向ける。


「本当に久しぶりだなー!10年振りか?」

「えーっと、お前は・・・」

「ああ、10年前に少し会ったっきりだったな。それに相当大変な思いをしてそうだし、忘れてるか。トールだよ」

「あ、ああ・・・」


既にこの時点でかつての第0院の子供達は全員集まっていた。


「で、ロスト。この10年、何があったんだよ」


トールが全員の疑問をロストにぶつける。


「説明しなきゃダメか?」

「当り前だ。仲間だろ?」

「仲間、ねぇ」


椅子に座り足を組みながらロストは嘆息する。


「なんだよ」

「悪いが俺はお前達と行動を共にするつもりはない。俺は俺の野望のために行動をしているだけだ。ここに来たのもナナへ義理を感じたから顔を見せに来ただけだ」

「野望ってなんだよ」

「十二魔騎士全員の虐殺だ」

「虐殺って、何で」

「俺の全てを奪った奴らだからだ」

「ロスト、お前・・・何者だよ」

「説明する義理はない」


そして席を立ち広場の扉へ向かう。


「ロスト、待てよ!」

「なんだよ」

「お前一人で十二魔騎士全員を相手取る気か?」

「当然だ」

「そんなこと出来る訳」

「出来る」

「っ」

「お前達がどう思うかは知らないし、どうするかも知らない。だが出来る、そのために這い上がってきたんだから」

「這い上がってきた?」

「ふん」


鼻を鳴らし扉へ向かっていく。


「もういいわ、トール。彼には力尽くで私達の手伝いをしてもらいましょう」


アルテミスは扉に向かっていたロストに向け瞬時に矢を番え放つ。放たれた矢は見事にロストの頬に一つの傷を付けた。


「・・・何のつもりだ?」

「その矢で分からない?ここにいなさい。私達と行動を共にしてもらうわ。嫌だというのなら無理矢理にでも従ってもらうわ」


更に続けて矢が放たれた。


バンッ!


「えっ?」


バツンッ!ギャリギャリ!キィン!


広場に異様な音が響き渡る。音が鳴り終わった時、かつての子供達で立っていられた者は一人としていなかった。ロストが今行った事を認識で来た者は存在しない。瞬時に取り出したアイン、ツヴァイの2丁を取り出し銃撃を行う。最初の射撃でまずは飛んできた矢を迎撃する。最初の弾丸から間髪入れずに第二、第三の弾丸と次々に撃ち放つ。撃ちだされた弾丸は意思を持つようにトール達の元へと向かっていく。トール達の立っている場所は当然ながら同じ場所ではないため通常の射線では全員の元へ行くことは当然ながら不可能。しかし弾丸の雨は互いを助け合うように弾丸は別の弾丸にぶつかり角度を変える。角度が変わり射線は変わる。角度が変わった弾丸は全てトール達の首筋を掠らせる。


「分かったか?お前達はいつでも俺の気分次第で殺せる、ということだ。分かったらこれ以上俺の邪魔をしないでくれ」


そのまま広場の扉に手をかけ扉が開いていく。


「じゃあな。お前達の事と施設の事は大方ナナから話は聞いている。俺が十二魔騎士全員を殺しつくした後、支配を変わるなり国を滅ぼすなり好きにしろ」


そう言ってロストは扉の奥に消えていった。






「あ、おかえり~、ロスト」

「待たせたな、クロエ」


砦の正門で待っていたクロエはロストの腕に抱き着いた。


「何してたの~?」

「ま、少し話をな」


ロストは先程のナナとの会話を思い出す。




「俺の過去話をする前にこの施設が一体何の施設だったのか、教えてもらっていいか?」

「ああ、そうか。お前には話してなかったか」


そう言ってナナは一つ指を鳴らす。指を鳴らした後広場の中央にある卵の台座が開いていく。


「これは、鳥か?」

「カラスだ」

「カラス?俺の知ってる造形と随分と違うんだな」

「ああ。これは私達の神なのだ」

「神?」

「私達第0院の実態は鴉の教団、つまり宗教団体なのだよ」

「宗教団体だと?」

「ああ。台座におられる鴉、ヤタ様を信仰している」


台座の上の石像の鴉は翼が四枚ずつ左右に伸び八枚の翼を広げている。眼は左右だけでなく額にも一つの眼が存在していた。額の眼は特殊な宝石を使用しているのか深紅に光る。


「ロスト、お前は10年前私が助けてやったのを覚えているか?」

「ああ、よく覚えてる。満身創痍で死にそうだった俺をあんたが助けてくれたんだよな」

「その通り。その時にお前の全身の傷を私が治してやったんだ。その時に使った癒す炎なんだが、あれは不死鳥の炎なんだよ」

「不死鳥の炎だって?」

「そう。死んでも転生し、巡り巡って蘇生する炎を司る鳥だ。だが真に炎を司る鳥は我らが神である八咫烏様なのだ」

「八咫烏?」

「そう、どんな炎よりも紅く、どんな炎でもの鳥の灼熱には敵わない、太陽の炎を取り扱うのだ」

「そいつは随分と強そうな事だ・・・が、悪いが俺はそんな鳥を信仰するつもりはない」


ナナはその言葉を聞き無言で目を瞑る。


「・・・理由を教えてくれるか?」

「単純だ。そんなのに縛られて俺の復讐の邪魔をされたくないからだ」

「ぷっ・・・」

「ん?」

「あははは!やはり面白いな、お前は」

「そうか?」

「ああ。一応この宗教は十二魔騎士と同等で戦える戦力を揃えている、と言っても考えは変わらないか?」

「当然だ。俺は一人で十二魔騎士を潰せる。同等の連中と一緒にするなよ。それより、あいつ等はどんな奴なんだ?どこからあそこまで強い人間を集めた」

「ああ、彼らはアヴァロンが滅ぼした国、村の子供達だったんだよ。十二魔騎士の戦争の被害に合った子供達だ」

「なるほど、それであの国に察知されずに集められたのか」

「そういうことだ」


ナナは笑う。


「お前は往くか?自分の道を」

「俺の生きる道は十二魔騎士の怨嗟の声で満員だ。これ以上入るのは俺の愛した女一人だけだ」

「そうか・・・では、聞かせてもらおうか。お前がそこまで強くなれた理由を」

「ま、そんな面白い話でもないがな・・・」


そうしてロストは語り始める。




「・・・さて、行くか」

「うん・・・そうだね」


そしてクロエとロストは荒野の奥を見据える。そして二人は歩を進める。


チチチ・・・


「うん?」


歩き始めた所で一匹の鳥がロストの元へと飛んでくる。


「チチチ」

「鳥か?」


ロストの腕に鳥が止まる。その鳥の足に一枚の紙が縛り付けてある。ロストは鳥の足に付いていた紙を取り書いてある事を読む。


「く・・・くくくく・・・」

「ロスト」

「く・・・ふっふふふ・・・ははは!ははははははは!!」


紙に書いてあった情報をロストは読み、読み終わった途端笑いだす。


「ははは!ダメだ!笑いが止められない!!」

「どうしたの?」

「ふふっ、ああ・・・悪い・・・」

「ロスト?」

「クロエ、お前は俺の事が・・・好きか?」

「うん」

「どこまでも、想ってくれるか?」

「当り前よ」

「そうか・・・俺も、永遠に愛してる」

「どうしたの?」

「俺の考え、お前には話しておくよ」


そしてロストは語る。自分の復讐の筋書きを。

最後まで読んでくださってありがとうございます。

次回から最終章でもある復讐編に入ります。復讐編は毎日投稿をするべく書き貯めを行おうと思っているので次回の投稿は期間が長くなることをご了承ください。

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