第五十二話 勇者と魔神と無の騎士5
祝・1周年
今回短めです
ロストは地を駆け続ける。まだ辺り一帯には邪龍の咆哮が木霊している。
「何も、倒す策が一つもないわけじゃない」
ロストは体を低くして邪龍に向かう。
「まずは出来ることからだ」
「ォォォォォォォォ」
邪龍はロストの位置を完全に把握し自分の体を噛み千切る。そして邪龍は自分の体の鱗一枚一枚から魔獣を次々と生み出し解き放つ。
「ッ、自分の意思で作り出せるのか」
邪龍から放たれた魔獣は獣型が中心の構成をしていた。
「ォォォォン」
「懐かしい遠吠えだ」
ロストはずっと昔、自分を落とした獣を思い出す。
「だが、邪魔だ!」
ロストは前方から迫ってきた狼型の魔獣を撃たずに狼を飛び越える。当然魔獣はこれだけではなく後方には様々な魔獣が待機している。その群に躊躇なく突撃する。
「ルァァァァ!!」
数々の魔物は自ら飛び込んできた獲物に我先にと飛びかかる。
「除け」
ロストがそう呟いた瞬間我先にと飛びかかってきた魔獣達は爆散した。
「雑魚が」
ロストは二つの銃の排莢を行い神速でリロードを行う。
「ォォォォォォ」
邪龍は消し去られた魔獣達の穴を埋めるように次々と自分の体から魔獣を生み出す。
「次々とまあレパートリーの豊富なことだ、狼、熊、蛇。よくもまあ出るわ出るわ」
「ルゥゥゥゥ」
辺り一帯にはまだまだ魔獣が伏せている。
「やっぱ大本を叩かなきゃ沸き続けるか」
ロストはこちらに魔獣を送り続けている蛇を視認する。
「ちっ、根本から魔獣が増え続けるって訳か。なら根本から魔獣を消し続けてやる」
ロストは邪龍に向かい駆け出す。道中に何体もの魔獣が神速で駆けるロストに襲い掛かる。しかし襲い掛かってくる悉くの魔獣をロストは2つの武器で消し飛ばす。
「ォォォォォ」
邪龍はロストがそう簡単にやられないと悟り、放つ魔獣の数と質を共に跳ね上げる。
「チィ!早くしなきゃ数を増やし続けるだけか!!」
ロストは速度を更に上げる。そして見上げる程の長さの巨体に到達する。
「巨体だけに自分の体に登られれば鈍いか。丁度いい」
ロストは首の生えている根本から邪龍の頭目がけて駆け昇る。しかし、ただ駆け昇っているだけではなかった。
「よっ、と」
ロストは道具袋から一つの巨大な瓶のようなものを取り出す。そしてそれを脇に抱え、瓶の蓋を抜く。瓶の中からは真っ黒な液体が瓶から溢れだす。
「行くぜ」
ロストは巨体を駆け上がる。当然瓶からは液体が尾を引いて零れていっている。
「ォォォ」
邪龍は自分の背中に何か零されていると感じたのか小さく身動ぎする。そして自分の背中の上を駆ける獲物に対し魔獣を自分の背中から生み出しロストに向かわせる。
「おっと、素直に撒かせてはくれないか」
しかしロストは駆け上がる速度を一切緩めようとせず飛びかかってきた魔獣の頭を飛び越える。
「まだまだぁ!」
遂にロストは邪龍の首元まで到達し、瓶を放り投げる。
「召喚の媒介はお前の鱗、肉体なんだろ。ならその全てを燃やし尽くして灰にすれば、魔物を生み出す事も出来ないだろ?」
道具袋から火炎放射器を取り出す。
「全て、燃え尽きろ」
ボウッ
「ゥォォォォォン」
「悲鳴を上げているのか、蛇野郎。お前の生み出す魔獣ごと燃やし尽くしてやる!」
「ォォォォ」
蛇の体からは灼熱の炎が吹き上がる。
『ギャォォォォォォゥ』
蛇の体から生み出されていた数々の魔獣も炎に巻き込まれ、火達磨になり悶え死ぬ。
「ォォォォ!!」
邪龍は背中に火が走りのたうち回り、遂に倒れる。
「1匹」
最後まで読んでくださってありがとうございます。
いやぁ、早いものですね。今日でこの作品を投稿し始めて1年です。相当遅々としたペースでの投稿になっていますが続けていられるのは読者の皆様のおかげです。本当にいつも読んでくださってありがとうございますm(__)m これからも当作品にお付き合いいただければ幸いです。