第五十一話 勇者と魔神と無の騎士4
「おいおい、マジかよ・・・」
ロストは冷や汗を流しながら顔が引き攣っているのを感じる。
「召喚は成功だ。これが僕の相棒、アジ・ダハーカさ」
「なんてこった」
ロストがいつ振り返っても思う過去最強の敵、アジ・ダハーカ。ロスト自身鍛錬を絶やさなかったし、成長もしているのも兵器の数もありロストの強さはあの時とは比較にならない程の強さを誇っている。しかし今召喚されたアジ・ダハーカはロストが戦ったときよりどう考えても強い。
「これが全盛期だったってことかよ」
「ん?君は知ってるのかい?この僕が誇る最凶の邪龍を」
「まあ、一応な」
「なら話は早いね。この邪龍の強さを君は知ってるんだろう?」
「当然だ」
「ふふふ、この邪龍の殺気を浴びて気絶しない人なんて君が初めてだ。今までこの邪龍を見た者は半分も出していない殺気に当てられただけで気を失っていたからね」
「俺は寧ろ俺以外にこの邪龍の殺気を浴びてピンピンしてるやつがいるなら見てみたいものだ」
「それもそうか、ならそろそろ始めようか」
「来るならこい!」
「ォォォォォン・・・」
最凶の邪龍の咆哮が開始を告げる鐘の音色となった。
「なめるなよ!!」
ロストはまず邪龍から反対方向に全力でバックする。
「おいおい、まだ一撃も当ててないし当てられてないのに逃げるのかい?」
「幾千もの魔獣や魔物を相手に磨き上げた戦い方ってのを見せてやる!」
ロストは全力で駆け出し目的の物を探し回る。その間にも邪龍は迫ってくる。
「くそ、デカすぎるだろう!」
「ははは、鬼ごっこかい?」
「お前は戦わないのかよ!」
「僕はこの龍を使役するのに手一杯でね。この邪龍は当然のように使役出来るような代物じゃ、ないんでね!速攻で片を付けさせてもらうことにするよ」
ロストは必死に暗闇の森を駆け巡る。
「見つけた」
「ォォォォォ」
アジ・ダハーカの唸り声が聞こえた瞬間ロストは二つのリボルバーの銃口を右側に向ける。
バンッ!バンッ!
「まあ気休めにはなるか?」
ロストはアジ・ダハーカの強さを忘れていない。この最凶の邪龍の恐怖をよく知る者だ。故にこの程度ではかすり傷一つ負わせられないことは重々承知している。そのためこの射撃の目的は傷つけることではなく
ビシュ!
アジ・ダハーカが仕掛けてくる尻尾の薙ぎ払いを逸らす事だった。
「一応初めての相手じゃないんだ、これくらいは分かる」
ロストは薙ぎ払われた尻尾を射撃で逸らし、自分の身を地面スレスレまで下げつつ走行をやめずに駆け抜ける。そして走りながらリボルバーをしまう。そのまま探していた目標へ突撃する。
「合格だ」
ロストは自分が探していた巨木にスピードを一切緩めず足をかけ、そのまま巨木を駆け上がる。ロストは巨木を駆け上がりながら一つの兵器を取り出す。
「ォォォォ」
「そのまま咆哮を上げてろ蛇め」
そのまま巨木の頂上付近の枝に飛び乗る。そして取り出したライフルを構える。
「MagicPenetrationRifle Drei、起動」
『了解しました、MagicPenetrationRifle Drei 起動します』
かつてロストの左腕を奪い取った兵器を構える。このライフルは元々ゴーレムが使っていたものだが、ゴーレムが使っていた時の面影はあまりない。何故ならこのライフルはエルが施した魔改造のオンパレード仕様になっている。一度ロストが試した時はあまりの威力に軽く呆けたものだ。
「照準補助、起動」
『了解しました、照準は主の操作をメインとします』
ロストが構えたライフルのオキューラーレンズには標的の姿がありありと浮かぶ。
「標的補足」
『標的補足完了。発射手順シークエンスに入ります・・・・・準備完了。対象に向け引き金を引いてください』
指示通りロストは引き金を引く。
ギュオオオオオ!!
ロストが持つライフルから異音が鳴り響き一つの極光が飛び出す。極光はそのまま邪龍の顔一直線に向かう。
「ォォォォォォォォ!!!!!」
遠くから、地響きすら伴う咆哮が鳴り響いた。
「やはり、巨体故に避けきれなかったか。流石に光を失うのは辛いだろ?」
ロストが巨体に上った理由は簡単で自分の攻撃が顔に当てられる位置まで登ることだった。そして一点突破の火力を以てして目を潰す。
「もう一つの目も潰す」
ロストは再びライフルを構え直しボルトを引く。ガコンッと相当に重いものが落ちたような音が出る。ロストの使用するこのライフルは、弾丸自体も異常である。打ち終わった後の空薬莢ですら成人男性二人の腕分の太さ、長さはある。
「標的補足」
『標的補足完了。発射手順シークエンスに入ります・・・・・準備完了。対象に向け引き金を引いてください』
ギュオオオオオ!!
「ォォォォォォォォ!!!!」
再び地響きを伴う咆哮が鳴り響いた。そして遂に怒りを爆発させたのか邪龍は自分の目を消し飛ばした張本人のいる場所へ暴れながら突進してくる。
「遂にキれたな」
ロストはライフルをしまいながら巨木から飛び降りて邪龍の突進線上から逃れる。しかし邪龍は相当な巨体なため線上から逃れるだけでも相当な距離を移動する。
「いよっと、さてここから本番か」
駆け出しながらいつも通りのリボルバー二挺を取り出し駆け出す。
「しかし、どういうことだ。俺が相手にしたあいつは頭が3つあったはず、何故今は一つしかない・・・」
疑問を持ったままとりあえず駆けるロスト。
「ォォォォォォォォ」
アジ・ダハーカはそのまま巨木に遂に激突する。
「あーあ、折角の狙撃ポイントが潰された。まあいいか。また探せばいい」
「ォォォォ」
アジ・ダハーカは自分の光を奪った張本人を探し続ける。しかし、光を失くした今の状態で見えるのは暗闇のみ。
「とりあえずこれで立ち回れるか」
そう言った瞬間だった。
ヒュオ
何の前触れもなくロストの体は吹き飛ばされた。
「カハッ」
「オオオオオ」
そのまま吹き飛ばされ続け幾本もの木をへし折ってようやく止まる。
「な、何で」
何故自分の位置が分かったのか。その疑問の声をロストはすぐに知ることになった。
「シャー・・・」
「くそ、匂いか!!」
アジ・ダハーカは蛇のように舌を出しロストの匂いを感知し、尻尾を振るったのである。
「ちっ!」
ロストは一つ舌打ちし、全力で後退する。
「匂いか、忘れていた。それにあの精度、目と遜色が無いレベルだ!」
後退しながらも射撃を繰り返す。
バンッバンッ!!
ロストは高速の射撃で合計12発の銃弾を寸分違わず同じ個所に叩き付けた。
そして叩き付けた箇所から何匹もの蛇が這い出てきた。
「くそ、魔獣召喚まで完備かよ!?」
『シャーッ』
一斉に蛇が這い出してきて襲い掛かってくる。
バキッ
「何の音だ!?」
バキバキバキッ
奇妙な異音が響き渡る。まるで木を無理矢理割るような音である。ふとロストがアジ・ダハーカの方へ目を向ける。
『ォォォォォ』
アジ・ダハーカは首の半ばから裂け、首が3つに増えていた。
一つの首は目を閉じ舌を頻りに出している。
一つの首は紫色の瞳を自分が生み出した蛇を視認し、瞳を動かす。
最後の首は自分の瞳を潰した獲物を逃すまいと怨嗟の咆哮を張り上げる。
「感知、魔獣担当、攻撃か、万能な蛇め・・・」
思わずロストは悪態をつく。
「勝機は薄い、か」
しかしロストの瞳は一切諦めてはいない。ロストは虎視眈々と動き始める。
最凶の邪龍を狩るために。
最後まで読んでくださってありがとうございます。
今回は相当久しぶりにあの龍がご登場です。この龍は本来のアジ・ダハーカではありません、作者の適当な設定が少し組み込まれていることをご了承ください。
結構な強敵出てきましたが、果たしてロストは狩れるのか、ご期待ください。
ついでに適当な読み切り、執筆開始。短編初めて書きますが頑張ります。
タイトルは『魔王と書いてひきこもりと読む』 気が向いたら短編で検索してみてくださいね!




