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有無の騎士  作者: 七咲衣
魔神の微睡みは幾ばくか
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第四十七話 悠久の時を超えて

ロストはクロエが消えた後も暫くその場に留まっていた。


「そろそろいいかな?」

「エル」


ロストはエルの方に向き直る。


「お前は、こうなることを知ってたのか?」

「こうなるって?」

「クロエが消失することかい?勿論知ってたさ」

「何故・・・」


ロストはエルに問いただす。


「何故教えてくれなかった!教えてくれれば」

「対策のしようがあった?無理だよ。どっちにしろクロエは時間がなかった。消えるのは時間の問題だったんだ。それに原因は君では取り除けないものだった」

「ッ!!」


ロストは手のひらを血が出るほど強く握りしめていた。


「でも今の君なら別だ」

「何?」


ロストは血相を変えてエルに詰め寄る。


「どういうことだ!?クロエを、クロエを助けられるのか!?」

「出来る。というより今の君にしか出来ない」

「どうやって」

「概念魔法。クロエから引き継いだだろう?あれを使う。使い方は引き渡された時に同時に流れ着いているはずだ。自分の深奥に意識を集中してみるといい。自然と使い方が頭の中に浮かんでくるはずだ」


ロストは自分の意識を集中させる。深海に潜るかのように意識を沈め続ける。


「・・・」


まだ足りない。もっと奥深くまで意識を沈める。まだ底は見えない、まだ浅い。到達点は更に奥底に。ゆっくり、しかし確実に沈んでいく。


「っ」


ロストは自分の深奥に微かにクロエの残滓を捉えた。


「見つけた」

「いいかい?概念魔法の使い方はクロエの残滓を辿れば分かるだろう。でも注意してほしい、クロエから引き継いだとはいえ概念魔法というのは個人個人で効果が変質する。クロエの概念魔法と君の概念魔法は違うだろう、それをしっかりと覚えておくように」

「ああ」

「完全に捉えたらあとはそれを自分の中に留めるイメージだ」

「くっ」

「落ち着いて。概念魔法の特徴は既に君の形に変化してきているはずだ」

「ふぅ・・・」

「いい感じだ。もう少し・・・」


ロストは自分の中で湖底をイメージする。一切の波紋も広がらない、静謐な湖底。


「形を捉えるのなら、形をまずは把握しなきゃいけないな。俺が出来る形で概念魔法を、描く」


ロストは一度深呼吸を行い自分の意識の中に湖を形成する。


「【止水】」


ロストは自分の中に湖形成し、自分の中の湖が描いた波紋を自分の概念魔法の形として捉える。


「なるほど、【止水】に至った時、どこかで見たことがあると思ったら自分自身だったわけだ。そりゃ当然見覚えくらいあるわな。やっと合点がいった」


【止水】を発動させながらロストは苦笑交じりで呟く。


「とにかくこれで形は捉えた、あとはこれをモノにするだけだ」


ロストの内面の湖底に映された形は大きな懐中時計だった。


「時計、時間、時、未来、現在、過去・・・」


ロストは思いを馳せる。これから生きる未来へ、今生きている現在に、そして今の自分を形作った過去へ。


「会得」


そしてロストが思い描いた時計が時間を刻み始めた。


「覚えたかい?」

「ああ。俺の概念魔法も理解できた」

「それはよかった。それで、君はこれからやることは決まってるのかい?」

「当然だ」

「どうするんだい?」

「クロエを助けに行く」

「クロエを?でも彼女は消えてしまったじゃないか。彼女を助ける方法なんて・・・」

「俺の概念魔法で、だ」

「君の概念魔法で?」


ロストはクロエが眠っていた装置に歩を進める。


「俺の概念魔法は時間に干渉する魔法だ。この魔法があれば時間を遡る事だってできるだろう」

「時間に干渉、ねえ。それはまた随分と大それた魔法だこと」

「笑ってもいいさ。でも俺は」

「笑わないよ」

「え?」

「愛した女の子のために時間さえ超えて助けに行く、格好いいじゃないか。それにそういう事が出来る手段を持っているのならやるべきじゃないかな。それに失敗してもやらなくて失敗するよりはずっとマシだと僕は思ってる。何も出来ず、何も知らないままに愛した子に逝かれるのは結構くるからね」


そう言ってエルは苦笑した。


「そんな好きな女の子のために頑張る君にプレゼントだ」

「何?」


エルはそう言って懐から随分と古ぼけた紙をロストに手渡した。


「これは、手紙?」

「そう。読んでみなよ」

「ああ」


ロストは言われた通りに古ぼけた手紙をなんとか読み進めていきやがて顔を驚愕に染め、続いて苦笑に変わった。


「エル、お前最初から知っていたな?」

「さて、何のことやら・・・僕は頼まれた手紙を渡しただけだからね」

「ったく・・・」


そしてロストはため息を一つ吐いて決意を決めた顔をした。


「じゃ、行ってくる」

「ああ。クロエとしっかり帰ってきなよ」

「任せとけ」


そう言ってロストは足を踏み鳴らす。


「【創造クリエイ】」


そうして出来た門を潜りロストはこの時間軸から消失した。


最後まで読んでくださってありがとうございます。

次回からロストはまた奮闘することになりますので楽しみにしてくだされば幸いと思っています。

活動報告にて少々読者の皆様にお目通しをお願いしたい項目を載せておくのでご拝見よろしくお願いします。

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