第四十六話 託されたもの
辺りが金色に照らし輝いていた夕暮れ時、一人の青年が一人の少女に抱き着かれていた。
「ロスト~♡」
「うおっと・・・どうしたんだよ、クロエ。それといきなり抱き着くな。もし銃が暴発でもしたら大変だろ」
「大丈夫だよ~。そういう運命だから」
「本当かよ・・・」
「私の魔法だよ」
「へ~・・ってクロエ、魔法使えたのか・・・」
「うん。まあ属性もないんだけど」
「属性もない魔法なんてあったかなあ」
「私が持ってるじゃない」
「あ、そっか」
「うふふ。それよりご飯出来てるわよ。食べましょ」
「おう」
ロストとクロエはそのまま家に戻ろうとする。
「痛っ・・・」
「クロエ、どうした?」
「ううん、なんでもないよ。あはは・・・はは・・」
「?」
「さあ、そんなこといいから!いいから!」
「お、おう」
そのままグイグイとクロエに押されて住処向かう。それでも微かに感じた違和感が針のように胸に刺さっていた。
そしてロストの予想を裏付けるように事は起きた。
「ロスト・・・」
「うん?どうした?クロエ、顔色悪いけど・・・」
「ごめん、ロスト・・・時間・・・無くなっちゃったみたい」
「え?」
クロエはそう告げた途端椅子から崩れ落ちた。
「な!?おい、クロエ!?クロエ!!」
「・・・・・」
クロエは死人のように顔を白くしてぐったりとしていた。
「ああ、遂に時間が来たのか」
「エル!?」
「これは元々決まってたことでね。クロエも分かってたことだ」
「何、どういう事だ!クロエはそんなこと一言も言ってなかっただろ!」
「そりゃね。君に心配をかけまいと気丈に振る舞ってたから」
エルはこんな状況でもひたすらに冷静だった。
「何でエルはそんなに冷静なんだよ!」
「・・・」
「何とか言えよ!」
ロストはエルの胸倉を掴みあげる。
「まさか、お前達はこれを仕組んでたのか!?こうやって俺の慌てふためく様でも見たかったのか!?アア!?」
「違う」
「何が違うんだよ!?」
「これは元々決まってたことだ」
「元々!?どういう意味だよ!クロエが消える予定でもあったのかよ!」
「違うよ。彼女は最初から危険な状態だったのさ。むしろここまでよく持ったって褒めるべきだ」
「よく持ったって・・・お前、クロエを侮辱してるのか!?もしそうなら」
ロストの手が一瞬霞む。そしてロストの腕には一つの拳銃が握られていた。
「この世から消えると思え」
「・・・・・」
エルはただ無言を貫いた。その後すぐに苦笑し一言呟いた。
「それは無理だな。だって僕達はとっくに死んでるから」
「僕達?それに、死んでるってどういうことだよ」
「死んでるさ。前に僕の過去、話しただろう?あそこまで前の話なんだ。そりゃ僕は流石に死んでるよ。正直言うとね、この僕は仮初の体なんだ」
「仮初・・・」
「それより来なよ。今から真実を見せるから」
「な、クロエはどうする!?放っておくのか!?」
「ロスト君、もう一度クロエの方を見てごらん」
「え?」
そしてロストがクロエが倒れていた方を向いた。そこには何も存在していなかった。
「な!?クロエは!?」
「だから付いてきなって。真実を見せるから」
「・・・」
ロストは不満そうにしつつも付いて行くしかなくエルの後ろに付き添っていった。
「これは・・・」
ロストがエルの後に付いて行った先で見たものは一つの巨大な装置だった。そしてその巨大な装置の中には一人の少女が眠っていた。
「クロエ、どうして」
「これが本当のクロエだからさ」
「本当のクロエって、だって今まで普通に話してたし、さっきだって一緒に飯を食べてたじゃないか」
「ああ。確かに一緒にご飯も食べてたし、話もした。彼女にも勿論今までの記憶だってある。しかしそれは本体ではなかった」
「じゃあどうやって」
「魔法」
「魔法?」
「そう、クロエの魔法だ。彼女の魔法は特別でねこの世界に一つしかない魔法なんだ。それに誰も勝てないほどその魔法は強い」
「どんな魔法、なんだ」
「概念魔法」
「概念魔法・・・それって」
「そう、おとぎ話に出てくる魔神の魔法さ」
更に問いただそうとロストが話そうとした時、装置の中の少女から声が放たれた。
「ロスト?」
「ッ!クロエ!!」
「やっと、本当に会えたね。ロスト」
「大丈夫なのか!?」
「うん。でもあんまり時間、ないかも」
クロエは装置の中でも苦しげに笑う。
「エル、お願い。扉、開けて」
「分かった」
エルが装置の端にあるスイッチを押して扉を開ける。
「ロスト、こっち来て」
「クロエ」
ロストは呼ばれるままにクロエの元へ辿り着く。
「ねえ、ロスト」
「うん?」
「もうあんまり時間がないから少ししかお話出来ないけど、いい?」
「ああ」
「私ね、昔魔神なんて言われてたんだ。最初は大きな国のお姫様として生まれたんだ」
「へえ」
「それでね、ある日突然特別な魔法をいきなり使えるようになったの。そしたらね?いきなり魔神なんて言われて国を追われたの。その時かなぁ、逃げてた時に一人の青年が私を助けてくれたの。本当に絶体絶命だったからあの時は本当に嬉しかった」
「・・・」
「ロスト、手を出して」
「ん」
「ふふっ、温かい。とっても安心出来る・・・」
「そうか?」
「そうだよ。ロスト、一つ聞いてもいい?」
「ああ。勿論」
既にロストは気づていた。このクロエ本体も、長くないと。
「ロスト、ここに来て楽しかった?」
「・・・ああ」
「そう、よかった。それと、これをロストにプレゼントするよ」
「・・・っ」
「私の魔法。よかったら、受け取って」
「確かに受け取った」
「ありがとう」
「・・・ああ」
そしてクロエは足先から消失し始めた。
「エル・・・」
「ああ」
そしてエルは一つ頷きクロエは完全に消滅した。
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