第二十二話 前菜
今回はすごく読みづらくなっていると思われます、ご注意ください。
「グギャアアァァァ」
「ふぅ・・・」
ロストは目の前の魔獣を狩り終え一息をつく。ロストが今いる階層は、青色熊、毒蛇、大蜘蛛の3匹を狩った場所から5階は上がった位置に今はいる。ここまでの敵は目新しい魔獣は特に出ず、このダンジョンに入る前の森で戦った魔獣達や大蜘蛛や熊の亜種などしか出てこなかった。亜種とはいえこれといった新しい技を使ってきた訳でもなく簡単に倒すことが出来ていた。そして今ロストはこのダンジョンに入ったときのような大きな扉の前にいた。
「また大きな扉だな、しかも何か書いてある。なになに・・・前菜?」
ロストはあまり意味が分からずとにかく潜ることにした。
「行ってみるか・・・」
ロストが大扉に手をかけると特に力を加えていないのに大扉が勝手に開いていく。
「どんな仕掛けだよ・・・」
ロストは勝手に開いた大扉に疑問を抱きながらも歩を進める。
「暗いな」
部屋に入った瞬間に抱いた第一印象がそれだった。そのためすぐに目に神力を回し夜目を強化しようとしたがその行為は無駄に終わる。
ボッ!
いきなりこのフロアの左右に付いていた無数の燭台が一気に火をつけた。
「おっと・・・これはまた・・・!!」
「・・・・・・・・・」
ロストは部屋の奥にいた大きな物体に気付くと一瞬で警戒心を引き上げる。
「・・・・・・・」
「・・・?」
いつまでも動かずにただその場に蹲っている物体に疑問を抱きながらその物体に警戒しながら近づく。
「・・・・・・・」
「・・・・・」
お互いに無音だが距離はどんどん縮まっていく。
「・・・・」
「・・・これ動かないのか?」
そう思いながらも近づく。そして距離が5m程度を切った瞬間だった。
ズドンッ!!
「カハッ!?」
いきなり正体不明の衝撃が襲いかかりロストは吹き飛ばされる、吹き飛ばされながらも自分を吹き飛ばしたのは何かを確かめる。
「何だ・・・あれ?」
「このフロアに熱源を感知しました・・・個体番号0099名称ゴーレム、殲滅行動に入ります」
「ハァ!?」
どうやら自分を吹き飛ばしたのはあの蹲っていた物体と何とか把握したロスト。しかしロストはあんな魔獣を見たことも聞いたこともなかった。
「何だあれ・・・生きてるのかよ」
「熱源、存在を確認。熱源の正体感知を優先・・・・識別完了。体温、形、の存在を確認。魔力・・・正体不明。熱源を人間と断定。殲滅を開始します」
ジャキッ!
「は?」
「殲滅行動番号01、銃火器による攻撃行動を開始します」
ロストはあの物体が何をしたのかは分からなかったがこちらに向けられた無数の穴が空いている物体に猛烈な寒気がした瞬間自分の勘に従い、一気に今いた場所を飛び退く。そしてその瞬間・・・
ダララララララララッ!!!
「はぁ!?何だあれ!?」
ロストが今いた場所に打ち込まれた無数の銃弾。ロストは今いた場所が一瞬で蜂の巣のような状態になった事にも驚愕したが、何より今の攻撃手段に一番驚愕した。
「何をしたんだ、あいつ。今のを見た感じ魔法よりも発動が早く威力も見た感じ間違いなく当たれば死ぬだろう・・・」
一瞬で頭を冷静にし、現状把握に務める。しかしゴーレムも黙ってはいない。
「生存を確認。・・・殲滅失敗、別手段による攻撃手段に移行」
「今度は何だよ!?」
ゴーレムは今ロストに向けていた武装を一瞬で外した瞬間次は別の何かをロストに向ける。
「相手は相当に素早さがあると想定。広範囲攻撃を可能とする火炎放射器に武装を変更」
瞬間ゴーレムがロストへ向けた火炎放射器が灼熱の炎を放つ。
「うわわわ!?次は火炎攻撃か、用意周到だな!!」
ロストは火炎放射器から炎が放たれた瞬間水の膜を形成する。
「くっ・・・神力を相当注ぎ込んでるのにそれすら蒸発されるかよ。こりゃ相当高い火力誇ってるな。あの武器類何か奪えないかな」
自身が攻撃されているというのに少し呑気に相手の武装を奪えるという事に考えを巡らせられる人間は間違いなく少数だろう。
「・・・魔法の行使を確認。対魔法兵器を使用します」
「え?」
「|MagicPenetrationRifle(魔法を穿つ魔銃)を用意」
ズズズズズッ
ゴーレムの腕の下から徐々に徐々に形成されていく巨大な銃器。
「あれはヤバそうだな・・・」
ロストはゴーレムの腕の下から形成されてゆく巨大な武器に脳内が特大の警鐘を鳴らす。本能が言っているのだ、あれにだけは決して当たってはいけないと。
「MPR、準備完了。照準を開始します」
ゴーレムは火炎放射器の攻撃をやめて腰だめのような体制に入った。この隙を逃すロストではない。
「よしっ!今なら!」
ロストは火炎放射器の攻撃が止んだ瞬間にあの射撃を阻止しようと攻撃に移ろうとする。あの武装の先を切り落とそうと腕に風の刃を形成し、一気にゴーレムへ駆け出す。もちろん今までの攻撃からゴーレムの武装の特徴を把握しているロストはジグザグに走って向かう。
「終わりだ!」
ゴーレムの元に一秒足らずでたどり着いたロストはゴーレムが構えたライフルを切断する事に成功する。
「よし!」
ロストはゴーレムのライフル切り落とした。これで一旦距離を取ろうと後ろに下ろうとした。その瞬間ロストは全身にこれまでにないほどの寒気と本能が最大限の警鐘を鳴らした。
「距離、3m未満。MPR必中距離、|絶対に仕留められる距離です」
「!?」
ロストが気がついた時にはもう遅かった。ゴーレムはもう片方の腕にもライフルを展開していたようで既に照準も済ませてある状態の銃口がロストの眉間を狙っていた。
「うおおおおおお!!」
そこからロストにはスローモーションの世界だった。自分の目の前にある銃口にロストは魔法で攻撃する暇もないと判断し、銃口を逸らす事に全力を注ぐ。そして確かに銃口を自分の眉間から逸らす事には成功した、しかし完全に逸らすまではいかずに左腕に照準が向いた。
バァン!!
「っ!!!!」
ロストの左腕の肘から下が吹き飛んだ。
「人間の生存を確認・・・先程の射撃で腕を欠損した模様、追撃を開始します。次弾装填・・・・・完了。第二射に入ります」
「あぐううううぅぅぅ」
ロストは腕が吹き飛ばされた痛みですぐには動けなくなっていた。
しかし今のロストの体は人間の物ではなくなっているため自然治癒力も尋常ではない、そのため左腕の傷口からは白煙を上げながら止血されていく。
「照準開始・・・・・完了。第二射」
「ハァ・・・ハァ・・・っ!」
ロストは照準されているのに気付きその場から転がる。
「発射」
バンッ!!
「・・・外した模様。第三射、用意」
「ぐぅ!」
ゴーレムは最初切り飛ばされたライフルを自己修復したらしく、もう片方のライフルでロストに照準を付けていた。
「照準開始・・・完了。発射」
バンッ!
「アアア!!」
ロストは地面に手を付け厚さ100mmはある岩壁を土魔法により3つ生成する。
「ハァ・・・ハァ・・・」
ロストは岩壁を少しでも時間稼ぎにと制作したが壁の向こうではゴーレムの無慈悲な声が聞こえてくる。
「土魔法による障壁を確認・・・問題なし。照準をそのままに射撃します」
バンッ!バキッ!
「くそっ!どんな威力してるんだ!」
ロストは持ち前の危機感知能力で弾丸が迫ってきていると確信し一気に右方向へ体ごと飛び出す。
「目標再確認、腕の欠損による移動速度の低下を確認。MPRによる攻撃より確実性の高い対人戦用の攻撃方法へ移行します」
バシュッ!
ゴーレムは今まで着けていたライフルを地面に落とし体中の装甲すらも外し始めた。ゴーレムのゴツい格好はどこへ行ったのか、さっきまで4m程の大きさはあったのだが今出てきたのはロストと大差ない大きさをした人型が出てきた。
「次は何だ・・・」
「リボルバー、ナイフによる攻撃行動を開始します」
バンッ!バンッ!バンッ!
「っ!」
ロストは今までの攻撃方法を元に自分に向けられた銃口から弾道を予測しどちらか意識する間もなく横に飛んだ。
「計算通りの行動です」
「ッ!」
ゴーレムは冷静にロストの避ける方向を計算し先回りし、ナイフを構えていた。ロストは未だ空中に浮いているため避ける動作もできない。ロストは察した、このナイフは確実に自分に当たると。
その時ロストは生まれてから今までの事がフラッシュバックしていた。
(これが走馬灯ってやつか・・・生まれて5歳までは愛情を注がれて、6歳になり適性検査を行われて無能と分かる。無能と分かった瞬間周りの人の態度が変化した。皆が俺のことを忌子といい暴力を振るってきた、皆が俺を蔑んだ目で見てきた。兄妹や同期の奴らには謂れのない批難を浴びた。そして最終的には実の父親に捨てられた・・・だから僕はどうした?だから俺は力を欲した。)
(なんのために?)
(俺を馬鹿にし俺を散々死にそうな目に合わせ挙句の果に最愛の母を殺したランスロット家の奴ら、そしてその根源たる12魔騎士に報いを受けさせるためだ!一人残らず処刑してやる!!なのに今何をしている?無様に腕を飛ばされただけじゃなく自分の目標を果たせなくなるんだぞ?このままジッとしているのか?)
「・・・・・んな」
自然ロストの体から声が発されていた。
「俺の処刑の邪魔をすんなあああぁぁぁ!!!」
体から爆発的な神力が湧き出る。しかしロストに向かってきていたナイフは止まらない。
「舐めるな!!」
ロストは一瞬で自分の目の前にあるナイフに魔法を発動させる。
「“紫電”!!」
「!!」
ロストは雷系統の魔法を選択したのは偶然にも近い。一番発動が早く相手に当たった瞬間体に回るのが一番早いのが雷魔法である。
結果的にこれがロストの命運を分けた。
「膨大な電力により回路の不調を確認、バックアップ回路起動」
ゴーレムの回路がショートしたのだ。動きが止まる。
「こいつには雷魔法が有効ってことか・・・いいぜ、やってやる」
「バックアップ回路起動完了。目標再確認、このフロアの熱源を排除します」
すぐに立て直したのかゴーレムの動きにキレが戻る。
「再びリボルバーとナイフの追撃を開始します」
「雷刀!」
右手に雷の剣を形成する。雷の剣を形成するのは初めてだったのだがうまくいったためロストは顔に笑を浮かべる。
「こいよ・・・すぐに沈黙ささえてやる」
「目標位置補足。追撃開始」
バンッ!バンッ!
「ハァ!」
ロストは再び地面より3枚の土壁を形成し身を隠す。
(どうやらあのリボルバーってのはこの壁を貫く程の威力はないらしいな・・・)
しかしロストは次の瞬間驚異の技術を見ることになる。
「障害物を確認、撃ち抜きます」
バンッ!バンッ!バンッ!バンッ!バンッ!バンッ!
「あぐっ!」
「被弾を確認」
なんとゴーレムは土壁の全く同じ箇所を6発の弾丸で寸分の狂いなく撃ち抜いたのだ。そのため壁の後ろ側にいたロストは弾丸を予測する事すら出来ず横腹を1つの弾丸が貫く。
「くっ、横腹だから助かったと言えば助かったが・・・」
「相手被害、小」
ロストはここでどうしたものかと考える。相手は今現在ロストが出せる土壁は3枚。しかしその3枚を生成しようとも相手はそれを貫いてくる。
「やべぇな。いくら自然治癒力が高いって言っても頭を吹き飛ばされたり心臓を貫かれれば終わりだろうな」
相手が放ってくるのは不可視の攻撃、しかしここを切り抜けなければ自分に未来はない。
「考えろ・・・考えるんだ、ロスト。奴は雷に弱いっていう有効な情報も俺の腕一本っていう代償を払って得た。ならそれを活かせ・・・活かせ・・・」
ただひたすらに考えを巡らせる。生まれてから得た知識を引っくり返す、生まれてからした経験を全て思い出す。
そして思いつく、一つの作戦を。
「俺はこんな所で死ねない、生きて12魔騎士の奴等を肉塊にするまで死んでなるものか。俺は」
「生きて、這い上がって・・・あいつらを殺す!!」
そう言って一気に土壁から飛び出す。
「目標確認」
バンッ!バンッ!バンッ!
当然ゴーレムは弾丸を撃ってくる。それをロストはあえて右腕へ受けた。そして受けながら魔法を一つ唱える。
「っ・・・“水場”」
これは水属性を扱えるものなら誰もが使える初期魔法の内の一つ“水場”、効果は単純に水を地面に放出するだけ。そして地面に水が放出され地面が水浸しになり、そこにロストの被弾した血が幾分か流れ込み水が赤色になる。
「地面に水を確認。問題、特になし」
「終わりだ・・・」
ロストは自分の床下に土魔法で床を少し盛り上げ水が付着していない足場を形成する。そして水に手を着き一つの魔法を唱える。
「“紫電”」
ロストが行った行為は単純、水に電気を流しただけである。しかしロストが放った電気は人間に放つと一瞬で消し炭レベルの代物だ。そんな雷をゴーレムは水を介して直撃した。
「第一バックアップ回路がショートしました。第二バックアップ回路を起動します」
しかしバックアップ回路は一つだけではなかったらしく、第二の回路を起こしたゴーレム。
「それを待ってたぜ、お前が攻撃もしてこずに完璧に静止するこの時を」
そこにいたのはゴーレムの最大火力を持つ武器でありロストの腕を吹き飛ばした魔銃を構えるロストの姿だった。
「吹っ飛べ」
一発の銃声が勝利の音を奏でた。
最後まで読んでくださってありがとうございます。
今回は有無の騎士で一番書くのに時間が掛かっている話だと思います。それに作者が多大な違和感を抱いている箇所が何箇所もあるため、変だな、おかしいな、など違和感を抱いた部分も多々含まれていると思います、申し訳ありませんでした。
次回は9月6日の投稿になります。
応援、感想、アドバイス、お待ちしています。
たくさんの感想ありがとうございます!感想には基本返信を心がけています。感想が作者の励みであり、執筆の原動力になります。感想お待ちしています!